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51 強くなりたい その14

「ひー、ふー、みー、よー、………。多いな……。八本か」


 巨大な体の上にうねうねと蠢く首が8本。


「お父さんに聞いたことがある。ヒドラってやつ!」


「うむ。普通のヒドラは首が5本程度。それにドラゴンではなく劣等種(ワイバーン)の首をしておる。じゃがこれは紛れもなくルナドラゴンの首。ルナドラゴンの変異種じゃ」


 そうこう言っているうちにも、おじいちゃんはボクの体に手を触れて波動を流し込んで回復してくれている。


「パルよ、何本いける?」


 体力を回復させ終わったおじいちゃん。

 山のような相手をにらみつけながらそう言った。


 さすがのおじいちゃんも8本すべてを相手取るのは難儀だということだ。

 それならばボクがやるべきことは――


「1本……いえ、2本ならなんとか!」


 正直なところボクでは1本の相手も難しいだろう。2本なんてもってのほかだ。

 一度倒せたと言っても相手は動かなかった。それにまぐれで技が出ただけだ。

 動いてくる相手、それも2本を同時になんて無謀にもほどがある。

 だけど、だけどだ。リリザのために、こいつを倒して素材を持って帰るんだ!


「よく言うた! 天狐封神流の技を見せてみよ!」


 おじいちゃんだってボクの力は分かっている。

 だからこそ、声を弾ませているのだ。


「我らは天狐封神流が闘士! いくぞっ!」


「はいっ!」


 ◆◆◆


「パル、大丈夫かしら……」


 また無意識のうちに呟いていた。


 目じりに薄っすらと涙を浮かべて部屋を飛び出していったパル。

 それからもう結構な時間が過ぎている。おじいちゃんが後を追って行ってくれたから大丈夫だとは思うけど……。


「パル……」


 口にしてしまうとそうなってしまう。

 よく言われる迷信だけど、暗黒魔術師(アークメイジ)である私にとってはそうではないかもしれない。


 口を閉じよう。

 私は暗黒魔術師(アークメイジ)。光の教団、リティアンス教の聖女のように祝福を与えられる存在ではない。


 私のために、って自分の危険を顧みず飛び出したパル。

 私の封印を解くんだって言って……。


 私にかけられた封印。勇者様によって施されたキツイ封印。私の大好きな人にかけられた封印。


 あの日、暗黒教団から助け出された日に、私は勇者様に一目ぼれをした。この人は私を救い出してくれた王子様。そんな王子様に全てを捧げたいって思った。

 私は自分の名前を名乗っていた。この世界に召喚され、転移者となる前の、日本での名前を。


「はぁ……パル……」


 当時の私はこの世界の事を何も知らなかった。15歳の時だった。急に周りが眩しく光ったかと思えば、いきなり別の場所に移動していたのだ。目の前に大勢の黒い服を着た人がいて、ひれ伏しながら何かを呟いていた。それが異世界召喚だったと知ったのは凄く後の事。

 彼らは暗黒教団と呼ばれていた。すごい悪い神様である暗黒神を復活させるのが目的の宗教団体。私は暗黒神を復活させるための生贄として召喚されたのだ。


 教団に従わせるために、私は服従の効果を持った首輪をはめられて毎日を過ごした。暗黒神の復活には高い暗黒魔力を持った生贄が必要らしく、日々暗黒儀式を行わされ暗黒魔力を高めていった。なまじ私には才能があったのが悪かった。何度も何度もいろんな種類の儀式をくりかえしくりかえしくりかえし。粗末な食事と硬い石の床の部屋で寝ている時以外はずっと儀式。私の脳も思考停止しようというものだ。


 首輪をつけられた辛い日々だったが、彼らの目的は暗黒神の復活であり、それ以外にはほとほと興味は無いようで、私の体に手を付けることが無かったのは幸いだった。

 そんな生活(暗黒生活)は2年ほど続いた。召喚されてからどれくらい経っていたのか数えてもいなかったけど、後からそれを知った。


 光も希望も無いような、そんな暗黒生活から金髪碧眼イケメンの男性が私を助けてくれたのだ。惚れるなというほうが無理というものだろう。


 私はどうしても勇者様について行きたかった。

 幸い私には戦いの才能があった。もちろん暗黒教団で高めさせられた暗黒魔術だ。だから無理を言って勇者様のパーティに入れてもらった。勇者様としても戦力が増えるのは望ましいということで快く引き受けてくれた。

 勇者レオナード、聖女マルガレッテ、拳聖グランドラ。そして暗黒魔術師(アークメイジ)リリザ。この4人パーティで数々の悪党や魔の物を倒していったの。

 リリザっていう名前はグランドラおじいちゃんがつけてくれた。真の名は伏せるものだってみんなが教えてくれたから。


 戦いながらも勇者様への好き好きアピールは忘れない。勇者様とマルガレッテは許嫁(いいなづけ)らしかった。だけどライバルがいるからって諦めるなんてできない。燃え上るような「好き」という思いを放棄する事なんてできない。

 私を見てもらうため、私を好きになってもらうため、押して押して押しまくった。


 大好きな人といられる日々。好きだってささやく日々。とても素敵だった。

 日本にいたときには感じたことのない充実した日々だった。


 そしたらある日言われたの「お前をパーティから追放する」って。

 私が反論する間も無く、強制転移魔法をかけられて、そしてはるか遠くの山の中ってわけ。


「パル……」

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