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50 強くなりたい その13

 おじいちゃんがドラゴンにまで伸ばしていた波動を解く。


 これで終わりなのか?

 才能が無くって終わりなのか? そんなことでリリザの役に立てるのか?

 まだ、ちょっと気合が足りなくって、痛みの方が勝ってて波動を感じ取れないだけじゃないのか? そうだ。ボクはリリザの力になりたいんだ。


「ま、まだ、やれます! もう一度お願いします!」


「何回やっても同じじゃ」


「そんなの分わからない! 一回で分からなかったら二回、二回で分からなかったら三回! 諦めなければっ、修行は終わらないっ!」


 ボロボロの体を押して立ち上がった。

 まだやれるんだとばかりに立ち上がった。


「よかろう……」


 おじいちゃんが再び波動を練る。


「よろしくお願いします!」


 ◆◆◆


 一回、二回、三回。

 ボクの体は打ち据えられる。先ほどと同じく痛みが思考を奪い、それ以外の事を考えることはできなくなる。


 やがて視界が暗くなっていき、全てが黒く塗りつぶされていく。

 この感覚は知っている。気絶する前の感覚。オーガの集落でも感じたことのある感覚。


「倒れてしもうたか……。修行はここまでのようじゃな」


 遠くからおじいちゃんの声が聞こえてくる。


「リリザも待っておる。素材を取って帰るとするか」


 終わってしまう。せっかくおじいちゃんが修行をつけてくれているのにボクに才能が無いから、ボクが弱いから終わってしまう。


 そんな時だった。自分の体に何か温かなものを感じたのだ。


 今まで感じなかったもの。体の内側にわずかだけど、何か温かなものがある。

 これが、波動?


 そういえば父さんから聞いたことがある。あまりに痛みがひどすぎると脳がその信号を遮断するって。

 つまり今その状態になって、痛みを感じなくなったから波動に気づくことが出来たってこと?


 ボクは内側のそれを優しく包むようなイメージで、それでいて、もっと大きくできないかと試してみる。


「ほう?」


 ふわふわとつかみどころのない感覚。形があるわけでもなく触れるわけでもない。ただそこにあるそれをどうやったらもっと大きくすることが出来るのか。


「どうやら波動の片鱗を感じることが出来たようじゃな。パル、聞こえておるか? ゆっくりでいい。思いっきり殴ってみい。殴る瞬間、手を爆発させるようなイメージでな」


 どうやって立ち上がったのかも覚えていない。

 今ようやくつかんだ感覚、それが消えないように逃さないように、それだけを考えて……ボクは目の前のドラゴンの横っ面に拳をぶつけたのだ。


 ――どうんっっっ!


 何が起こったのか分からなかった。

 目の前のドラゴンの首が爆ぜた。ボクの拳が当たった瞬間に。


「うむ。見事じゃ。今の感覚を忘れるでないぞ。拳の一撃と同時に波動を爆発させて瞬間的に二重の衝撃を与えて物体を破壊する。天狐封神流の基礎の基礎。入門者でもできる技じゃ」


 き、基礎の基礎か……。

 でも出来たんだ! ボクもリリザと同じ!

 入り口に立ったに過ぎないけど、リリザと同じなんだ。


 体内の波動を高めて……それで、こう!


 ボクは気合を入れて地面を殴った。


「…………」


 だけど先ほどと同じような爆発は起こらなかった。


「あれっ? もう一回!」


 再び拳を地面に叩きつけるが……何度試してもだめだった。


「ふむ。やはりそう簡単にはいかんか。疲労の限界の先の先。無意識のうちに無駄な力を省いて最も効率よく動こうとした結果なのやもしれぬ。

 じゃが1回出来たことは間違いない。これからも修練を積むのじゃ。そしていつの日か、ワシと天狐封神流の挨拶を行うことが出来るようになるのを楽しみにしておる」


「はいっ!」


「さて、ボウズの修業はひと段落として……」


 おじいちゃんはチラリとルナドラゴンの残骸を見る。

 大きな巨体は先ほどのボクの攻撃で頭部を失っている。これを本当に自分がやったのか、と感慨にふけっていると、何か忘れているような、という気持ちがわいてくる。


 …………。


「あああ、素材! 頭にある素材! ボクがぶっ飛ばしたっ!」


 そう。ここ、エルフの禁則地に来た目的はリリザの封印の解除の儀式に使うルナドラゴンの 尖付核を取りに来たのだ。

 それをボクは、ボクは!


「おじいちゃん、まさか一匹だけしかいないってことないよね! 次のルナドラゴンを探しに行かないと」


「そうじゃな。ドラゴンには雌雄が存在する。一体だけで繁殖しておるとは考えにくい。きっと他にもおるじゃろう」


「行こう……、リリザが待って――」


「どうやらその必要はなさそうじゃ」


 どういうことかと首をかしげる間も無く、ボクにだって分かるくらいの凶悪な気配を感じた。


 ズシン、ズシンと地面を揺らしながら迫ってくる巨体。

 ここに倒れているルナドラゴンも巨大だったが、その比ではない。

 まるで子供と大人。小人(こびと)族と巨人族。


「でかい……それに……」


 全貌を現した巨大生物。白く輝くような鱗に長い首を持った頭部。誰が見てもルナドラゴンだ。


 その頭部の数(・・・・)を除いたら!


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