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48 強くなりたい その11

「時間が無いから極厳コースでいくぞい」


 修行はおじいちゃんのその言葉から始まった。

 枷の重さはこれまでの倍くらいになり、脚を進ませるのも一苦労。

 だけどそんなことは関係なかった。


「ほれ、パンチパンチ」


 ボクの上に乗っているおじいちゃんからの指導。

 ボクの体が素早く拳を前に突き出す。そして引く。そして再び突き出す。

 その間も下半身は全力疾走している。


 自動で。


「流れるような体捌きを体に覚えさせるんじゃ。ほれ、シュシュシュ」


 覚えさせるも何も、もはやボクの体はついていけていない。

 枷のなすが儘にパンチを撃ち込まされて、脚は動かないのに無理やり右左と進まされる。


「根性見せろ! リリザの役に立ちたいんじゃろ!」


 そ、そうだ! 忘れるな。この辛さもリリザのためを思えば!

 ボクが強くなってリリザに喜んでもらうためだ!


「うおぉぉぉぉぉぉ!」


 パンチ! パンチ! ダッシュ! ダッシュ!


 ――――――

 ――――

 ――


「なんじゃ、情けないのう。オーガってのはその程度なのか?」


 ち、ちが、う……。


 息が上がってしゃべろうにも声が出ない。

 背中からはヒンヤリとした地面の感覚が伝わってくる。

 

 根性を見せたボクだったけど、さすがに体力が尽きて倒れたのだ。 


「まあよかろう。少し休憩にするか」


 た、たすかった……。

 股関節は痛いし右腕も左腕も感覚が無い。


「すぐに回復薬を作ってやろう。待っておれ」


 おじいちゃんはいつもの大袋から何かを取り出してごそごそし始めた。

 疲れがピークのボクはそれ以上何をやっているかをみず、素直に体力の回復のため空の色を見ていた。


「リリザはのう、ええ子なんじゃ」


 そんな中、突然おじいちゃんがリリザの話をし始めた。


「こんな老いぼれを、おじいちゃん、おじいちゃんって呼んで慕ってくれてな。ワシも本当の孫のように思っておる。

 たまに、おじいちゃん疲れたでしょ、肩をもんであげる、って言ってな、ワシの肩をもんでくれるんじゃよ。老体には染みる事じゃ。

 じゃが、すぐに指が痛くなったって言って終わってしまって、今度はワシの方がマッサージをしてあげるんじゃがな。そういう所も含めて可愛い孫なんじゃ」


 あぁー、光景が目に浮かぶようだよ。

 リリザはおじいちゃんに対してもやっぱりリリザなんだね。


「そういえば……おじいちゃんはいつからリリザのおじいちゃんになったの?」


 息を整えたボクは、気になっていた事を聞いてみた。


「そうじゃなあ。一年とちょっと前かのう」


「結構最近なんだね」


「うむ。あの時、ワシら勇者パーティがリリザを救い出したのじゃ。それからリリザは一緒に行動するようになって、才能もあってワシの教えた天狐封神流もすぐに覚えていったのじゃ」


「リリザもこの修行やったの?」


「いや、リリザは見ただけで分かるほどの才能をもっておった。この修行は行わずもっと上級の修業をやったかのう」


「さすがリリザ。すごいな」


「そうじゃ。リリザは凄いんじゃ。だからこそワシもリリザには幸せになって欲しい。勇者の背中ばかりを追わずにな」


 リリザがいつも言ってる勇者様ってやつか。リリザに聞いてもあまり的を射た回答が返ってこないけどおじいちゃんなら。


「その勇者様っていうのはどんな人なの?」


「ん? 勇者か? そうじゃな。一言で言うと勇者としては非の打ち所がない男じゃな。民衆の期待を背負い、先頭に立ち戦い抜く。そういう象徴的な男でな、戦いの才能もあってなかなかの強さなんでワシもそれなりに認めておる。じゃがまあ、それなりにって言うのは理由があってな」


「理由?」


「そうじゃ。あやつはうちのリリザを選ぼうとせんのじゃ!」


「選ばない? どういうこと?」


「先ほども言ったとおり、あやつは勇者としては非の打ち所がない。民衆の人気も高く、もちろん顔も性格もいいから女たちが群がってくる。よりどりみどり状態ってやつなんじゃが、それは理由ではない。あやつには将来を約束し合った女がおるのじゃ」


「結婚の約束をしてる人ってこと? どんな人?」


「同じパーティの聖女じゃ。神リティアンスの教えを広めるリティアンス教、その中でも一番の神聖力の持ち主であり、この国の第三王女。こやつらの仲は国王公認じゃて、民たちからもお似合いじゃと言われて相当祝福されておる。まあ、民たちはリリザの素晴らしさを知らんからそんなことを言っとるんじゃがな」


「うーん。つまりは勇者とその聖女はお互いに好きなんだけど、リリザも勇者が好きってこと?」


「まあそうなるな。ほれ、回復薬が出来たぞ。飲め飲め」


 話はそこまで。

 ボクはめちゃくちゃ苦い味の生ぬるい飲み物を飲まされた。


「ほう。よく飲み干したな。偉いぞ」


「うん……ありがとうおじいちゃん」


 目が回るような感じ。体がほてって、頭がぐるぐる回るような。

 ほら、なんだか獣の鳴き声が聞こえるし、地響きもしてきた。


「って!」


 ボクは跳び起きた。

 疲労と筋肉痛でまったく動けないはずだけど、薬の効能だろうか。


「どうやら探す手間が省けたようじゃのう」


 この鳴き声、この地響き、どうやらボクが疲れて幻聴を聞いているわけじゃないようだ。おじいちゃんにも聞こえているのなら間違いない。


 音のする方向、森の木々の上。

 バキバキと木々を折りながら現れた生き物は木々の高さを優々超える長い首を持ったドラゴンだった。


「こ、こいつがルナドラゴン!」

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