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47 強くなりたい その10

「ひいおばあちゃん! エルフの60歳は坊やかもしれないけど、人間だとそうじゃないんだよ」


「ふむ。人間の年齢はよくわからぬ。若々しい気が感じられるから、どうしても坊やに見えてしまう。許して欲しい」


「え、ええ。お気をつけいただけるのなら……」


 たぶんまたやられるなって察してるんだろうな。

 あのおじいちゃんが動揺するなんて、とても貴重な一幕だった。


 お茶を済ませて本題に入る。

 ボク達がエルフの里にやってきたのはリリザにかけられた封印を解いてもらうためだ。


 ひいおばあちゃんに何やら儀式めいた部屋に案内され、その部屋の中心でリリザとひいおばあちゃんは向かい合う。


「今から封印とやらの状態を見る。肩の力を抜いて楽にするがいい」


 ふーっと息を吐き出してリラックスして立つリリザ。

 ひいおばあちゃんはリリザの体に手を伸ばすと、人差し指で喉の下あたりに触れ、そこからつつーと指を下へと下ろしていった。


「んっ……」


 ゆっくりと降りる指は胸を超え、腹の辺りで止まり、そしてリリザの体から離れた。


 すると、ぽうっ、ぽうっといくつかの青白く光る靄のようなものがリリザの体の周りに現れた。


「これは?」


「封印の状態だ。かなり強力な封印がかけられておるようじゃ。相当な術者に違いない。それと、このかかり具合は、お主の真なる名で刻まれておるな」


「真なる名?」


 ボクはオウム返しする。


「そうだパルルクよ。こやつのような魔術師にとって、真なる名を知られることは武器を持った相手の前に全裸で防御もなく立つのも同じ。絶対に知られてはいけない事」


 それじゃあリリザっていう名前は本当の名前じゃないってこと?

 それでいて本当の名前を勇者様っていうやつに知られてしまったってこと?


「あのう、それで、これ、なんとかなります?」


 バツが悪そうにリリザが口を開く。


「それはもちろんのこと。ここをどこだと、私たちを誰だと思っておる」


「やたっ! それじゃお願いします!」


「喜ぶのは早い。解除には儀式が必要で、儀式には素材が必要だ」


「素材、無いの?」


「うむ。少し前、100年ほど前だったか、使ってしまって今は無い」


「その素材って?」


「ルナドラゴンの尖付核だ。ルナドラゴンの頭部にある魔力をコントロールするための器官。それが必要だ。幸いにルナドラゴンは里の近くにおる。だが、そこはエルフの禁則地。我々は入ることはかなわぬ。じゃがお主らなら入っても構わぬ」


「やった! 簡単そうね!」


「威勢が良いのは結構。だが、なぜ禁則地になっているかを考えるのだ。ルナドラゴンの鱗は魔術を受け付けない。それでいて硬く、我々の放つ弓も一切効き目が無い。それゆえの禁則地」


「大丈夫よ、私、腕に自信はあるわ」


「お主はここに残らねばならん。儀式の準備があるからだ」


「えっ!? それじゃあ……」


「ボクが行くよ! リリザのためにきっとルナドラゴンの尖付核を持って帰ってくる!」


「だめよパル! 危ないわ。パルもお留守番、けってい!」


「心配してくれるのは嬉しいよ? でも、ボクだってリリザの役に立ちたい。いつも守ってもらってばっかりだ!」


「パルは凄く役に立ってるよ。ほら、ごはんとか、マッサージとか。ね。だから危ない事しなくったって……」


「そういうのじゃないんだ。ボクが役に立ちたいのはそういう事じゃないんだ。だから行く!」


「じゃ、じゃあ! 私! 封印このままでいいから!! パルが危ないのなんて嫌よ!!」


「リリザッ!!」


「は、はい」


「たまにはボクに頼ってよ……。ボクだってリリザのために戦いたいんだからっ!」


 込み上げてきたものをぶちまけると、ボクはそのままリリザの顔も見ずに部屋の外へと飛び出した。


 リリザのわからずや! ボクだって戦える! どうしてさっきおじいちゃんの方を見たのさ! どうしてボクを見てくれなかったのさ! そんなにボクは頼りないってのか! それに、それに! 儀式を止めるっていうなんて! またボクがリリザの足を引っ張るっていうのか? そんなのはごめんだ!


 こうなったら絶対に、絶対に素材を手に入れてやる!


 頭の中がモヤモヤとしたもので覆いつくされて、訳も分からずがむしゃらに走って……気づいた時には里のはずれにいた。


「ここは……」


 目の前には赤字で何か文字が書いてあって、バッテンがされている。

 エルフの文字のようだけどボクの知ってるものとはちょっと違う。昔の文字なのかな?


「そこが禁則地の入口じゃ」


「おじいちゃん……」


 背後から声が聞こえたので振り返ると、そこにはグランドラおじいちゃんの姿があった。


「坊主、師匠のワシを置いていくなんて酷い弟子じゃ」


「ごめんなさい。絶対に自分でやってやるんだって、カッとなって……」


「よいよい。若い時にはよくあることじゃ。今後気を付ければよい。それも修行の内じゃ」


「はい!」


「さてちょうどいい機会じゃ。実践で修行をつけてやろう」


「は、はいっ! お願いします!」


「よい返事じゃ。それじゃあ行くぞ!」


 ボク達は気合を入れてエルフの禁則地へと踏み込んだのだった。

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