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45 強くなりたい その8

 気づいた時にはどこかの部屋の中にいた。

 四方をぐるりと木製の壁に囲まれた部屋。窓は無い。生活感は無いけどベッドやらタンスやらは置かれている。そんな部屋。

 地面に引きずり込まれたはずがどうしてこんな所に……。


 ボクの体に……異常はなさそうだ。

 痛みも感じるので死んでしまったという訳ではなさそうだ。


 とりあえずはこの部屋から出てみよう。

 なぜなら部屋には扉が一つあるからだ。内側から鍵を書けるタイプなので、つまり開けて出られる。


 扉に歩み寄り、つっかえ棒タイプのカギを開け、さあ脱出! と言う所で勝手に扉が開かれた。


 ボクの手は空を切り、ちょっと恥ずかしいと思った所で、先ほどのエルフ女性と目が合った。


「うわぁっ!」


 扉の外にいるなんて思わなかったので声を上げてしまった。


「呼ぶまではここで待っておれ」

「「はっ!」」


 女エルフさんが後ろに控える数人の男エルフに声をかける。


 ボクは後ずさり扉から距離を取って警戒する。


 そんなボクの様子を意に介さず女エルフさんは部屋へと入ってきて、後ろ手に扉を閉めてしまった。


「ボクをどうするつもりだ!」


 オーガの血を引くボクはひどく拒絶されている。これから殺されるという可能性も高い。

 本当は3人捕らえるつもりだったのかもしれない。でもリリザもおじいちゃんも武術の達人。あれしきの魔術で捕まったりはしない。

 ボクだけだ。並みの力しか持ってなくって、さらに修行の枷を着けているから動きが鈍くなって捕まったのは。


「……」


 女エルフさんは無言のままボクの顔を見ている。

 細い生糸のようにきれいな銀色の髪。細長く端正な青い目。日に焼けていない白い肌の整った顔立ち。そしてボクとは違う、長く伸びた耳。

 同じエルフの父さんと特徴がよく似ている。


 いったいどういうつもりなのか。

 細い体。薄布のような服を身にまとっているため体のラインが浮き出ているので分かる。

 ボクの、オーガの身体能力なら、単純な力比べなら負けやしない。

 だけどここは相手の懐の中。そんなことで逃げられるはずがない。


「つらい思いをさせてすまなかった、パルルク……」


「えっ!?」


 彼女の発した言葉に、ボクは心を撃たれたほど驚いた。

 ボクの名前を口にしたからだ。愛称しか名乗った記憶は無い。


 女性はボクの体を抱きしめていた。

 ボクよりも背の高い体で。


「シュリンドを……オーガと添い遂げると言い出した孫を追放したのは私。エルフとオーガ、敵対する異なる種族が添い遂げるなんて常識的にありえなかった。立場上、私はそうするしかなかったし、その時はそうとしか考えられなかったのだ。

 それから数年後、パルルクが生まれたと知った。そしてさらに数年後……シュリンドは死んでしまった。パルルクの記憶にも残ってるかもしれない。エルフとオーガの戦いに巻き込まれて……」


「あなたはいったい……」


「私の名はシフォン・テラ・フォーティナル。パルルクの曾祖母だ」


 ひいおばあちゃん……。父さんのおばあちゃんということか。

 それにしても若く見える。オーガで言うとまだ青年と中年の間くらいだ。


「ボクをどうするの? なんでここに連れてきたの?」


「パルルクに謝りたくてだ。パルルクが生まれたと知った後、オーガとも手を取り合える可能性があるのではないかと考えることもあったのだ。だけど私は行動に移さなかった。そうやって里の掟に縛られているうちに孫を亡くし、そしてパルルクを連れ去られてしまった……。

 私がもっと早く孫を許してあげれたら、あの子は死なずに済んだかもしれない。パルルクから両親を奪わずに済んだのかもしれない。ずっとそう思っていた。本当にすまなかった、パルルク……」


 悲愴感ある声。

 それに合わせていくつかの水滴がボクの頭の上に落ちてくる。


「謝られても困る。ボクは別にそんなことを恨んじゃいない。お父さんとお母さんはとても幸せそうに暮らしていて、ボクも楽しくて幸せだった。家族3人の生活はあなたが考えているのとは正反対のはずだよ。

 父さんと母さんの最後だってそうさ。二人は勇敢に戦ったんだ」


「だけど……私たちはエッダを、パルルクの母を手にかけてしまった」


 そうだ。それは間違いない。

 エルフの里を襲いに来たオーガの一団。その一隊がエルフの里の離れにあったボクの家に襲ってきた。

 父さんと母さんはオーガの一団に対して奮戦していたんだけど、エルフの村からやってきた戦士たちによって襲ってきたオーガごと母さんは魔術に巻き込まれて殺されてしまった。

 時を置かずオーガの増援がやってきて。その人数で父さんを含めたエルフたちを殺して……そして家に隠れていたボクを見つけて、面白半分に連れて帰った。


 これがボクと父さん母さんの別れの顛末だ。


 確かにシフォンひいおばあちゃんの言っていることはあってる。


 ボクだって悲しんださ。どうしてエルフとオーガが争うのかって。どうして父さんや母さんが殺されなくってはならなかったのかって。

 いくら戦場で、命のやり取りをする場でエルフとオーガの顔の見分けが出来にくいからって、もっと母さんの事を知っていてくれたら分かったんじゃないか、って。

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