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41 強くなりたい その4

「それで、おじいちゃん、どうしてこんな所に? 勇者様は?」


 付け合わせのグリーンニーニルを幸せそうに頬張っているリリザ。


「もちろんリリザを探しに来たんじゃ。あいつらのパーティから抜けてな!」


 ボク達が食べる様子をニコニコしながら見ていたおじいちゃんだったが、思うところがあるのか熱弁を振るい始めた。


「あの勇者、自分でやったにも関わらずリリザをどこに飛ばしたか分からんとかぬかしよった。頭にきたんで腹をボコボコにしてやったわい。

 まあ聖女のやつが止めに入って涙目で頼むから止めてやったのじゃが、そもそも聖女に配慮して顔を殴るのは止めてやったのにのう。

 それで、また目の前でイチャつき出したから堪忍袋の緒が切れてな。

 ワシのあまりの怒気にビビった勇者が「南大陸にとんだところまでしか分からない」と漏らしたから、その足でお主を探す旅に出たというわけじゃ」


「もう、おじいちゃん! 勇者様をいじめたらダメよ!」


「すまんすまん」


 あれは本気で悪いと思っていない言い方だ。

 でも……どういうことだ。リリザは勇者ってのに飛ばされてきたのか? それでオーガの集落の近くに?


 その事情を聴こうと口を開きかけた矢先のこと。

 リリザが「かくかくしかじか」とこれまでの事情を説明し始めて――


「という訳で、勇者様のところに戻るために旅をしているの」


「ふーむ。あいつの所にのう……。

 時にリリザ、お主、能力を封印されておるな? 先ほどの立ち合いで分かった。その状態ではいつもの半分も力が出せておらんじゃろ。魔術についてもそうじゃ」


 え!?


「さすがおじいちゃんね。分かっちゃうんだ。そりゃそうか」


 本当なの!? あれだけ強いリリザなのに、半分しか力が出てないの!?


「帽子はどうした、眼鏡は、杖は? やはり次元倉庫内で封印されておるのか?」


「うん……」


「心当たりがあるようじゃな。ワシは見とらんかったが、やはりあやつか」


「うん……多分」


「お主とあやつでは相性が悪い。じゃから止めておけと何度も言ったじゃろうに。いくらお主が暗黒教団からあやつに救い出されたからって――」


「おじいちゃん!」


 珍しくリリザが声を荒らげた。


「なんじゃ? もしかしてボウズには伝えておらんのか?」


「うん……」


「代わりに話してやろうか?」


「いい。自分で言うから。時が来たら」


 ボクは昔のリリザの事を何も知らない。話からすると、どうやらボクには言いたくない過去があるみたいだ。


「すまんな。しんみりさせてしもうた。そうじゃ、デザートにするか。あれと、そうじゃな、さっきその辺で見かけたあれをじゃな……。少し待っておれ」


 言い終わらない前におじいちゃんはどこかへ消えてしまった。

 残されたのはボク達二人。


 風の音がサラサラと流れている。


「パル、あのね……」


 無言の雰囲気に耐えきれなくなったのかリリザが口を開く。


「言いたくないことがあったら言わなくてもいいよ。昔がどうであれリリザはリリザだ」


「ん。ありがと」


 聞こえるか聞こえないか。小さくつぶやいたリリザ。

 隣に座っているのでそれだけで十分だ。


 ――ぶわっ


 一瞬だけ強い風が吹いたかと思うと、それはおじいちゃんだった。


「なんじゃ、二人して引っ付きよって。仲が良くてなによりじゃて」


 カカカ、と笑うおじいちゃんに、もう、ちゃかさないでよ、とぶーぶー言い出すリリザ。

 そんな中、さっそくおじいちゃんのデザートづくりが始まった。


 戻ってきたおじいちゃんの手にはハイシが握られていた。ハイシは手のひら大の果物で皮をむくと赤くて柔らかい熟れた実が顔を出す。甘くておいしい大衆果物だ。


 例の如く目に見えない速さの手刀でハイシを一口大の角切りに変えてしまうおじいちゃん。

 その他、なんでも出てくる荷袋から取り出したのは、白く透けて固まったもの。こちらも一口大。砂糖と何かの粉を固めて乾燥させたようなものだろうか。それと液体。おそらく果実水。それらを器に入れて完成。


「ほれ、おじいちゃん印のフルーツポンチじゃ」


 きっとこれもリリザが好きなものなんだろう。ボクの知らない食べ物なのでここで技を盗んでおく!


「んんー、あっまーい!」


 確かに甘い。この中で一番甘いのは白く透けた塊。やはり砂糖がたっぷり使われていると見える。その中にさわやかな酸っぱさの果実水と柔らかくて優しく溶けるような甘さのハイシの実がお互に引き立て合っている。


「んふふ、パル、最後にくず餅を残しておいて、かき混ぜて食べるとまた美味しいんだから」


 くず餅というのがこの透けている塊のことだろうか。

 いつの間にかリリザの器の中は少量しか残っていない。それをスプーンでぐりぐりと押し混ぜてすべての具材を混合している。


「あーん」


 器を口にして、もはや形を成さなくなったそれを喉へと流し込んだ。


「んん-っ!」


 とても満足げなリリザの笑顔。


 よし、ボクもやろう! きっと一番美味しい食べ方に違いない!


 リリザに倣ってボクもフルーツポンチを堪能したのだった。

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