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37 光を放つ守護の盾 その18

「あ、あれは、まさか……」


 ホワニーが小刻みに鎧を震わせながらそう言った。


「もしかしなくても、船?」


 二人は何を言ってるんだ? と、ボクは目を凝らしてしっかりと海の様子を見た。


 エミィを乗せて小さくなっていく帆船の前。どこから現れたのか、8隻ほどの大型の船がその航路上に現れたのだ。


「あれは……聖騎士団第二船団。シュキル様の船!」


 ホワニーいわく、あの船は聖騎士団の船で、直属の上官であるシュキルという聖騎士が指揮しているらしい。

 

 説明を聞いているうちに、聖騎士団の船団は領主の船を取り囲むと強制的に停止させたようだ。

 この後、船に聖騎士が乗り込んでいろいろ調べるのだろう。


 リリザは一息ついて、魔力の流れが元に戻ってきたからといって、再び箒を呼び出して。


 ボク達はそれに乗って、沖合に停泊している船へと向かった。


 調査でごった返している所、「なんだあれは」と聖騎士達が警戒の様相を強めた。

 見るからに怪しいやつが空から降りてきたのだ。無理もない。

 聖騎士達は色めき立ったけど、ホワニーが一緒にいたのですぐに誤解を解くことが出来た。


 そして。


「エミィ! 無事だったか!」


「パル!? どうして?」


 ボクは事のあらましを説明した。


「そうだったのね。助けに来てくれてありがとう! ほら、タクもお礼言いなさい」


「あ、ありがとう」


 エミィとタクの姉弟は無事に保護された。

 ボクは感極まってエミィを抱きしめたら、エミィはジタバタと暴れ始めて、ボクの体をポカポカ叩いてきた。あげく「ねえちゃんを放せ!」とタク君に悪者認定されてしまった。

 はいはいそこまでよお子様たち、とリリザに言われてしぶしぶ体を離したんだけど、エミィの顔はリンゴのように真っ赤になっていた。

 強く抱きしめすぎて血が上ってしまったのかもしれない。ごめんねエミィ。それと、無事でよかった。


「ご苦労だったね、ホワニー」


 そしてここの一番偉い人。ホワニーと似た鎧を身に着けた女の聖騎士。

 布というかマスクというか。そういうもので右目を隠した人間。


「シュキル様、どうしてこちらへ。ここには私一人で任務に当たらせるっておっしゃったじゃありませんか。やっぱり私だけでは心配だったということでしょうか」


「そうじゃない。キミには実力が備わっている。これまでは自分の心に向き合えておらず、その力を発揮できなかっただけだ。そうだろう? 何があったかは後で報告してもらうが、この距離でも巨大な神聖力を感じたよ。私の目は間違ってはいなかった」


 シュキルはその手をポンとホワニーの肩に置いた。


「君たち二人にも礼を言わねばな。ホワニーを助けてくれたんだろう? ありがとう。暗黒魔術師(アークメイジ)リリザ、それと」


「彼はパル君です」


「ありがとうパル君」


「あの、どこかでお会いしましたっけ?」


「いや、初対面だ。私は君の顔を知っているがね」


 リリザは不満そうな顔をしているけど、名前と顔が売れてるっていうのは強い証拠だよ。さすがリリザ。


「残念ながら報奨金は出ないが……君たちにとってはあの子たちが報奨金のようなものだな」


「団長、あれだけの証拠があれば領主を裁けます」


 ちょうど区切りのいいところで男の聖騎士が現れて、敬礼してシュキルに報告を行った。


「よし、船を港に着けろ! 領主を捕らえるのだ!」



 こうして慌ただしかった港町での騒動は幕を下ろした。


 エミィとタクは聖騎士団でしばらく保護してもらえるようで「私、このお金でお店を開くわ」などと言っていた。このお金というのはボクが渡したお金のことだ。

 リリザは微妙な表情をしていたけど、二人は幸せになって欲しい。


 ――どこかの場所 黒いローブを着た男


「レギーネのルートがつぶされてしまいましたか。金で簡単に生贄が手に入るので利用していましたが、まあそれならそれでいいでしょう。別の手段もありますしね」


 そういうと怪しいその男は闇の中へ消えていった。


 ――領主の屋敷 シュキル


「奴らの証拠は見当たらなかったか……」


 屋敷をくまなく調べたシュキルは独り言ちた。

 今回の一件、暗黒教団が一枚嚙んでいると(にら)んでいた。

 だが、不正の証拠は山ほど出てくるのだがその教団の情報は皆無だった。不自然なほどに。


「まあいい。いずれ尻尾を掴んでやるさ」


 証拠をまとめた一覧を机の上へと置く。

 その中には家令についての記載は一つも無かった。


「それにしても、なぜリリザがこんなところに……。勇者はきちんと監視していないというのか? 確認を取る必要があるな……」


 頭の中で情報を引っ張り出し繋げて行く。

 だが、知りうる情報だけではその答えにたどり着くことはできなかった。


「仕方がない。一度王都に戻ってから片をつけよう」


 そう言うと書類でごった返している領主の部屋を後にした。


 ――数日後 輸送船の上 リリザとパル


 持ち金をほとんど失った二人はいくつかの仕事をこなして、ようやく北大陸に向かう船に乗ることが出来た。


「どうしたのパル? 船酔い?」


 神妙な面持ちで海を見続けているパルに声をかけるリリザ。


「ちがうよ」


「じゃあどうしたの? はっはーん、エミィちゃんと別れるのがつらかったのかしら。それともホワニー? パルってば隅に置けないのね」


「もう、違うって!」


「じゃあどうして黄昏てるのよ。思春期?」


「なんだよそれ……」


「パルくらいの年の子がかかるもやもやっとした気持ちのこと?」


「うーん」


「まあ、悩みがあるんならお姉さんが聞いてあげるわよ? こう見えてもパルよりも1.5倍は大人なんだから」


「はぁ。リリザを見てたら悩んでたのが馬鹿らしくなってきた」


「どういう意味よそれ。あ、美人おねえさんを見てたら幸せになってきたってことね!」


「もう、本気で言ってるの?」


「え、うん、そりゃあ、一応。だけど、素で返されるとお姉さん寂しいかなって」


「はぁ……。あのねリリザ。ボクは今回思い知ったんだ」


「ふんふん」


「リリザは強い。だけど今回みたいなことがまた起こるかもしれない。その時、ボクがリリザを守らないと、守れるくらいに強くならなくちゃいけないって」


「パル……」


「だからリリザ、ボクに体術を教えてくれ! ボクが戦えるようになったらもっとリリザは楽になると思う!」


「なるほど~。うーん、体術ねぇ。でも、私も教えられるほどきちんと習得したわけじゃないのよ。おじいちゃんに言わせるとまだまだひよっこなんだって」


「おじいちゃん?」


「そ。私に武術を教えてくれた人よ!」

お読みいただきありがとうございます。

これにて第3話は終了となります。

第3話ではパルがどんな子か、というテーマでお話を書きました。

それが伝わっていたなら嬉しいです。


次話は無力感に悩むパル君のお話です!


面白い、続きを読みたい、と思われた方は、ブックマークや、この下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援ポイントを付けて頂けると作者はとても喜びます!


それでは引き続きお楽しみください!

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