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36 光を放つ守護の盾 その17

「ボク達は生き埋めになるだろ!」


「大丈夫ですよ! リティアンス様が守ってくださいますって! じゃあいきますよー!」


 聞く耳もたないっ!

 

 ボクの足は機敏に動いていた。

 もちろんリリザの元へだ。


「お、おい、まて、動けない、ちょっと、まって! ねえ!」


 どうやらゼンジーは光に照らされていることで身動きが取れないようだ。


 問答無用とばかりにゆっくりと傾いていく盾。


「あの、ねえ、ちょっと! あああああああ!」


 一定の角度を超えた盾は、急激に傾き、その重みで前へと倒れこんだ。

 屋敷ごとゼンジーを巻き込んで。


 瓦礫が落下してくるわ砂煙はあがるわ、大惨事。

 ボクは未だ目を覚まさないリリザの上に覆いかぶさるようにして瓦礫から彼女を守った。

 

「悪は滅びました。またここにリティアンス様の威光が示されたのです」


 などと締めようとしているホワニー。


「う、ううっ……」


「リリザ!」


 今まで気を失っていたリリザの口からうめき声が出た。

 同時に、ボク達にかかっていた魔法の色が失われる。


「パル……。頑張ったようね……」


「うん」


 ボクはあまり力にはなれなかった。

 この窮地を脱したのも、リリザを救ってくれたのも、どちらもホワニーの力だ。


「なんて顔してるの」


 リリザの手がゆっくりと伸びてきて、ボクの頬に触れる。


「ほら、そんな顔をしてたら、エミィちゃんに笑われるわよ。さ、ちょっとごめんだけど、肩かしてくれるかしら」


 ボクはリリザの意図を理解して、倒れているリリザの下に手を潜り込ませ、リリザをゆっくりと抱き起す。そしてリリザに痛みが無いように緩やかに立ち上がる。

 もう少しボクに身長があったらリリザも楽なんだけど、無いものをねだっても仕方ない。


「リリザさん!」


 一仕事やり終えたホワニーが音と共に駆け寄ってくる。


「ホワニーもありがと。私のパルを守ってくれて」


「いえ! いえ! リリザさんの魔術のおかげです。あの強くなる魔術のおかげで私は悪を倒すことが出来ました」


「あのねホワニー、私が使った魔術はただ痛みを和らげるだけのもの。攻撃力が上がったり、防御力が上がったりはしないわ」


「でも、だって」


「それは元々あなたが持っていた力。優しいあなたの心がブレーキをかけていた元々のあなたの力。それだけの強さがあなたにはあったの。思い出してみて。あなたが騎士になるときに誓った願いを。それをいつも忘れないで」


「私の……力。騎士の誓い……」


 ホワニーの事だ。きっと立派な願いがあるのだろう。


「ふふふ、さて、二人とも行きましょ」


 ぱあっと一瞬、緑の光がリリザから放たれて消えてしまった。

 その光は暖かくて、治癒魔術だというのがボクにも分かった。


 リリザが空飛ぶ箒を出した。

 ボクはすぐにリリザの意図を理解し、リリザの後ろに乗る。


「行くってどこへですか!?」


「もちろん、海よ!」


 ボク達の目的はゼンジーや領主を倒すことじゃない。エミィを助けることだ。

 ゼンジーの話によるとすでに船に乗って運ばれてるってことだから、その船に追いついて直接救い出そうってことだ。


「ほら、乗った乗った」


「あわわわわわ!」


 あわあわ言いながら事情を呑み込んだホワニーは元の大きさになった盾を回収し、ガチャガチャ鎧を鳴らしながらボクの後ろに回る。


「いくわよ、落ちないようにしっかりつかまってるのよ!」


「でもリリザ……」


 しっかりと掴まるってことは、おなかに手を回すことになる。

 先ほどきつい一撃を受けたばかりだから止めておいた方がいいのではないか、とリリザを気遣う。


「大丈夫よ。あ、それとも、もうちょっと上に掴まりたかった? パルもいつの間にか大人になったのねぇ」


「はいはい、ボクはまだ子供ですよ」


 軽口を叩けるくらいに回復してるってことだ。きっと大丈夫。

 リリザの言葉を受けて、ボクはしっかりとリリザの腰に手を回して落ちないように抱きしめる。

 後ろのホワニーも同じようにボクにしっかりと抱き着いている。鎧がヒンヤリしているのが背中越しに伝わってくる。


「しゅっぱーつ!」


 すごく重いはずのホワニーを乗せているにもかかわらず、箒は以前と同じようにぶわっと浮かび上がると高速で飛翔し始めた。


「いやぁぁぁぁぁ!」


 後ろから叫び声が聞こえる。どうやら高いところは苦手のようだ。

 そしてボクは固い金属で体を締め上げられている。


「ほ、ほわにー、く、くるしい……」


「いやぁぁぁぁぁ!」


 全く聞こえちゃいない。

 落ちないようにしっかりとつかまってもらう必要がある以上、苦しいからといってその手を放り投げるわけにはいかない。

 ここは男の子として我慢だ。

 がまん……がまん。リリザ……早く目的地へ……。


 乗員3人のうち2人が全く景色を見ていない中、箒はぐんぐんとスピードを上げて空気を切り裂く。

 海が大きくなってくる。

 ホワニーの抱き着き攻撃にも慣れてきたボクは辺りの景色を堪能する余裕がでてきた。


「リリザ、あれ、船が!」


 まさに直前に出航したところ。大型の帆船が陸から離れていく。


「きっとあれにエミィちゃんが。まかせて、スピードアップするわ! ブースト!」


 ――ぷすん


「あれ、あれれれれ?」


 先ほどまで軽快に空を飛んでいた箒が急に失速する。


「り、リリザ? 落ちてない?」


「え、うん。落ちてる。ごめんね、魔力切れみたい」


「魔力切れって! もしかしてあいつの攻撃で……」


「ううん、それは大丈夫。まだ魔術が封じられてた時の影響が残ってるみたい」


 リリザが残った魔力を絞り出すと、失速していた箒はゆらゆらと木の葉が舞い落ちるように動いて、なんとか地面に落下することだけは避けられた。


 桟橋にたどり着いたボクたちだったが、目的の船は帆に風を受けて速度を上げて行ってしまう。


「船が……」


 今から海に飛び込んで泳いでも追いつけないだろう。ボクはそれほど泳ぎが得意ではないのだ。


 ボク達はその場に立ち尽くし、船を見送るしかなかった。

 遠く沈む夕日、そこに移る船の影。

 だんだんと小さくなっていくそれを……。

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