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34 光を放つ守護の盾 その15

「だめっ!」


 ぐえっ、ちょ、ちょっと、ホワニー!


 盾を失ったホワニーがボクの上に覆いかぶさってきたのだ。

 その重さがボクの体にかかる。


「おお、なんという慈悲の心! 身を挺してそのボウズを守ろうっていうのか。いいぞ、いいぞ。弱者を守るリティアンス教! 好きになれそうだ!」


「あうぅ!」


 ゼンジーは狂ったような笑顔を浮かべて、その足をホワニーの背に振り下ろしている。

 盾は無くなったけど彼女が身に着けた金属の鎧がその攻撃を防いでいる。


「ぱ、ぱる君、大丈夫。私が、守るから、だから」


 振り下ろされる衝撃が金属の鎧を通してボクの体に伝わってくる。

 鎧があるからって大丈夫なはずがない。


 もうホワニーの体もボロボロのはずだ。

 情けない。守らなくてはならない女の子に守られて、自分は何もできないなんて……。


 鎧とホワニーの体の重さ全てが直にボクの体の上にかかる。自分の体も支えることが出来なくなったのだ。

 力尽きたホワニーの圧倒的な重さによってボクは身動きが取れない。

 それだけではない。しっかりと最後までボクを守ろうと、背中までがっちりと抱きしめられているからだ。


「ちっ、動かなくなっちまったか……。しかたねえな。まあ楽しめた方かな。

 おい、お前ら、こいつらを牢屋に放り込んでおけ」


「へいっ!」


 ゼンジーが興味を失ったように背を向けて去っていく。入れ替わるように、後ろに控えていた二人の男が向かってくる。


 動けなくなったリリザを、ホワニーを捕まえるつもりだ。


 ボクが……ボクが二人を、女の子を守らないと……。二人を守って、あの子、エミィも助けるんだ。


「わ、わたしが……ま、も……る」


 ホワニー!

 耳元でぽつりぽつりと途切れ途切れの言葉が聞こえた。


 ――がしゃり


 だけどその体はボクの体の上から転げ落ちてしまう。

 もういいんだホワニー。あとはボクが……。


 力尽きて倒れこんだホワニー。

 もう動けない。そのはずだったのだ。

 

 ――カシャン カシャン


 鎧の立てる僅かな音。

 ホワニーははいずるように動いている。どこに行こうというのか。


「こいつ! まだ動けるのか! そうか、あの盾を」


 ホワニーは近くに転がっている盾を取りに行こうとしているのだ。


「おい待てよ、ゼンジーさんばかり楽しい思いをしたんだ。俺達だって少しくらいはあやかってもいいんじゃないか?」


「ん、そうだな。ほら、ねえちゃん、盾はあそこだぜ。くくく」


 ――ガシャッ


 音が止まる。ホワニーの進む方向に……盾との間に男が入って立ちふさがり、ホワニーの動きを止めてしまった。


 だけど――


「い、痛てえっ! は、放しやがれ!」


 無意識なのか、それでもホワニーは手を前に出し、手のぶつかった部分、男の足を盾と勘違いしてその手を強く握ったのだ。


「おい、何をしてるんだ?」


「この女、握る力が強いんだ! このっ、離せ、離せ!」


 もう片方の足を使って、掴まれている手を足蹴にする男。

 それでも、半ば意識を失っているホワニーの手は離れない。


 無抵抗のホワニーを男が執拗に蹴り散らす。


 許せない、許せないぞ!

 男は女の子に優しくするものだ。戦うことがあれば敬意を払うべきだ。

 それを……あろうことか遊び気分で尊厳を踏みにじるなんて!!!


 ボクの行き場のない怒り。

 体中を渦巻く怒り。痛みさえも凌駕するその感情が心の中を支配していく。


 ――ダンッ


 ボクはそれを発散させるかのように床を叩いた。


 ……う、動く。

 痛みで体を動かすどころじゃなかったはずなのに、動く。相変わらずすごく痛いけど、体が動く!


 それはリリザの魔術だった。

 倒れたまま動かないんだけどリリザの体が青白く光っていて、ボクとホワニーの体も青白く光っていて。

 なんの魔術かはわからないが、ボクの、いやボク達の痛みを軽減してくれているのだ。


「うわぁぁぁぁぁ!」


 ボクは大声を出しながら駆け跳ねた。


 どこに行くのかって?

 もちろんそこ(・・)にだ!


 金属製の大きな盾。それが転がっている場所に。


「ホワニー、受け取って!」 


 ずっしりと重い。痛めている体ではなくても、とてもボクが投げて渡せるような代物ではなかった。だけど鍛えた体幹があるから床を滑らせることはくらいは出来る!


 ホワニーの手を何とか外したのか、すでに進路上に男はおらず、後ろの方で座り込んで足を押さえている。

 つまり滑る盾の邪魔をする者はいない。


 ホワニーは盾をきちんと受け止められるのだろうか。無意識だとしても掴んでくれるんだろうか。


 その考えは杞憂に終わった。


 ――ガション


 ホワニーの金属製の小手が滑って行った盾の端を掴んだのだ。


「ホワニー! リリザが強くなる魔術を使ってくれた! 分かるだろ! 力があふれてくるのが!」


「ええ……、体から……力が、あふれているのが分かります。これが魔術の力」


 ――ガッ


 ホワニーは盾を床に突き刺すと、それを支えとして重い鎧を身に着けた体を起こし、立ち上がった。


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