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29 光を放つ守護の盾 その10

 ボクはリリザの後を追って駆けだす。

 ここではリリザに力を貸してもらった。だけど助け出すのはボクの役目だ。


 リリザを追い越して先に門の中へと入る。

 門を破壊した衝撃で門の上にいた人間達はみんな地面に落下してしまっている。


「おい、エミィはどこだ!」


 倒れてる一人の胸ぐらをつかみ揺さぶってやる。


「う、ぐっ、え、エミィ?」


「しらばっくれるな、お前たちが連れていった女の子のことだ」


「し、知らないな。知っていても教えるわけはないだろ」


「このっ!」


 ボクは握りこぶしを作って振り下ろそうとした時――


「ひっ!!」


 男の顔が恐怖にひきつった。


「はいはい、パル、乱暴なことしちゃだめよ。そんな事しなくても魂が屈服して勝手にしゃべってくれるから」


 どうやらボクの拳におびえているわけじゃなくってリリザにおびえてるみたいだ。

 何かの魔術だろうか。ボクにはいつも通りのリリザに見える。


「ひぃぃ、話す、話すから、あの女は地下牢に連れていかれた、間違いない。みんなそこに連れていかれるんだ!」


「みんな?」


「そ、そうだ。何日か地下牢に入れられて、その先は知らない!」


「地下牢ってどこ?」


「や、屋敷の中、正面ホールにある上り階段の後ろにある通路を進んだ先だ、も、もういいだろ、助けてくれ! ぱうっ」


 男は急に白目をむいて倒れてしまった。

 これが魂が屈服したってやつなのだろうか。いつ見てもリリザの魔術はすごい。


「地下牢ね。これだけ大きいと……あってもおかしくは無いわよね」


 目の前の建物。リリザの言う通りすごく大きい。

 石造りの三階建てで、視界の端から端まで埋まる程の大きさだ。こんな建物見たことが無い。オーガの集落ではもちろんのこと、今まで旅してきた人間の町でも。


「なんだこれは! 何があった!」


 という男の声と、ガチャガチャ音を立ててホワニーが追いついてきたのは同時くらいだった。


「ちょっと、リリザさん! なんてことをしてるんですか、ほら、今なら事情を話して謝ればなんとかなりますよ」


 そんなホワニーを無視して、リリザは屋敷の庭を進み、建物の扉に手を当てると魔術で鍵を開けてしまう。


「ホワニー、あなた、殿(しんがり)やる? それとも一緒に地下牢に行く?」


「ホワニーが殿(しんがり)ならボク達は楽できるね」


 殿(しんがり)と言うのは、簡単に言うと隊列の一番後ろの人だ。

 追われている時は敵を一手に引き受ける一番大変な役目。それでいて重要な役目だ。


「え、えええ、あんな数相手にできませんよ!」


 わらわらと外側から警備兵が集まってくる。


「じゃ、一緒にいきましょ」


  殿(しんがり)うんぬんはリリザの方便だ。煮え切らないホワニーを一緒に連れて行くための。

 だからボクもわざとらしく乗ってみたってわけ。


 三人一丸となったところで扉を勢いよく開いて、ボク達は建物の中へと進む。

 白と黒の服を着た女たちが何人もいる。皆、何事なのかと怯えているだけでボクたちの邪魔をしてくることはない。


 男から聞き出したとおり、二階へと上がる正面階段の奥、暗がりに繋がる通路を進み、いくつかの扉を経て、地下へと続く階段を見つけるとボクたちは勢いよく駆け下りた。


 「ちょっとまってくださーい」などと狭い通路に引っかかりそうになる盾を斜めにしながらホワニーが言っていた。

 本当はホワニーも女の子なので手助けしなくてはならないのだけど、ホワニーなら大丈夫。自分で身を守れる。だけどエミィはそうじゃない。ボクが助けてあげないと!


「ここが地下牢か……」


 なんだかじめッとした場所。地下だからそう感じるだけなのか。

 ここまでの道、壁に置かれていた燭台に次々とリリザが火を着けながら駆け抜けてきた。その最終地点。灯された蝋燭の炎がゆらりと揺らめく。


「牢番は……いないわね……」


 石の壁でがっちりと囲まれており、そこに鉄の棒が天井から地面まで何本を立てに突き刺さっていて、まるで部屋のようになっている。そんなものがいくつもある。

 この中のどこかにエミィが囚われてるはずだ!


「エミィっ! どこだ、返事をしてくれ!」


 ボクは薄暗いその中にエミィがいないか探して回る。

 桃色の髪の毛の小さな女の子。少し前に元気な笑顔を見せてくれたその子を。


 ここもいない、こっちにもいない。いったいどこに!!

 10以上あった牢屋をすべて回ったけどエミィの姿は愚か、ほかの誰の姿もなかった。


「リリザ、ここにはエミィはいない! あの男、嘘をついたんじゃ!」


「いえ、嘘はつけないわ。彼の言った事は本当よ。確かに今は(・・)誰もいない。でも、少し前までいたことは分かる。エミィちゃんと弟さんだけでなく、ほかに何人も!」


「それってもしかして……」


「そうね、おそらくは旅人」


「ほう、そこまで分かってしまいますか。あなた方、只者ではありませんね」


「だれだっ!」


 ボクたちの後方から聞こえてきた聞きなれない男の声。

 地上へと上がる階段。この牢屋唯一の出口からコツコツと靴音を立ててやってきたのは白髪交じりの髪をした初老の男。その後ろに何人かの兵士を従えている。

 ボクはその姿を見たとき、ぶわりと体中の毛が逆立つような悪寒を覚えた。


「リティアンスの聖騎士が一人、魔術師と見受けられるお嬢さんが一人、それと、元気の良さそうなエルフ? いや、オーガの坊やか」

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