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28 光を放つ守護の盾 その9

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」


 オーガの脚力を生かした跳び蹴りをくらえ!

 集落にいるときに何度も練習してきた大技だ。ただし1回も獲物に対しては使ったことがない!


 ――ドゴゥッ!


 ボクはホワニーを飛び越えて、奥にいる男の一人の顔面に蹴りを食らわせた。


 男は後ろへ倒れこんだけど、思った以上にボクの体重は軽かったようで、ボクは蹴りの反動で地面に転げ落ちて、直後にガシャリと頭を固いものにぶつけた。


「きゃっ!」


 それはホワニーの足だった。


「あわわわわわわ!」


 ボクが足にぶつかったことによって、もともと鎧の重さでフラフラしていたホワニーの重心が崩れて前へと倒れこんで来る。

 ボクは下敷きになるまいとゴロンと転がって転倒ルートから脱出したが、どうやら残っていたもう一人の男はそれほど機敏ではないようで――


「お、おい、倒れてくるな! ぐわーっ!」


 ――どがしゃぁぁん


 激しい音と共に鎧&ホワニーに巻き込まれてしまった。


「ぐえぇ、お、重い! お前、やっぱりそういうことか!」


「ち、違います、誤解です!」


 見事な反撃だぞホワニー。

 やればできるんじゃないか。


「五回でも、六回……でもいいから……おも、い……。はやく、どけ……」


「す、すいませぇぇん。私の鎧、重すぎて一度倒れたら自分では起き上がれなくって」


「そんな……ばかな……がくっ」


 ホワニーの重さに耐えきれず男は気絶してしまった。


「ちょっと、パル! 何してるのよ、って、あら、あなたホワニ―じゃない」


 ようやくリリザが追い付いてきた。


 あれ? リリザもホワニーのこと知ってるの?


「あっ、さっきの旅人さん。それに、こっちはパル君! またお会いしましたね。

 じゃなくって、パル君、いきなり何をしてるんですか! 犯罪ですよ犯罪」


「いや、だって、またホワニーがいじめられてるのかと思って」


「うちのパルがごめんなさい」


 ボクの頭の上でリリザが頭を下げている。

 その相手は鎧の重さでおっさんを押しつぶして倒れたままのホワニー。


「とにかくホワニーが無事でよかった。こいつら悪いやつらだから!」


「ぱーるっ! 私、怒ってるんだけど?」


「ご、ごめん! でも!」


「でもも、ヘチマもないわ!」


「あ、あのぅ、まずは起こしていただけたらありがたいんですけど……」


「あ、ごめんね? パル、ほらそっち引っ張って。せーので」


 どうやら一人で起きられないホワニーの手を引っ張って起こさなくてはならないようだ。

 リリザが片手を、ボクがもう片手をもって――


「せーの!」


「ふいぃぃぃぃぃ、ありがとうございました」


 ずれた眼鏡を元の位置に戻しているホワニーだが、そのアクションだけでガッションガッション音がしている。


「パル君と、えっと……」


「私はリリザよ」


「リリザさん、ありがとうございました」


 深々と礼をする時も金属音を立てている。

 結構騒々しいんだな鎧って。


「ホワニーはどうしてここに?」


「それはですね、町の人から領主様がよく旅人を館に招いてるという情報を得たのでちょっとお話を聞こうかなって、門番の人に掛け合ってたところです。その後は今のとおりです」


 倒れて動かない門番の男たちをチラリと見やるホワニー。


「リリザさんとパル君はどうしてここに?」


 それはもちろん――


「悪いやつの巣窟だよ、ここは! だからホワニーも危ないって思って!」


「はいはい、落ち着いて。私たちは兵士に連れ去られたエミィっていう女の子を探しにきたのよ」


 リリザがボクの頭を手でポンポンと叩く。

 子ども扱いは不満だ。


「女の子?」


「ええ、話せば長くなるけど――」


「おい、お前ら! どこの手のものだ!」


 二人の会話はダミ声によって遮られた。

 その声の場所は正面門の上。何人かの人間が集まってきて「敵襲だ」と叫んでいる。


「あちゃー。さすがに対応は早いわね。もう、パル! あとでお説教よ!」


「うん、後で聞く! 早くエミもごっ!」


 急に口をふさがれた。


「はいはい。それは言っちゃダメ」


 もごごご。

 そうだった。ボク達の目的を知られちゃダメなんだった。


「おい、そこの三人、聞いてるのか!」


「えっ!? もしかして私も入ってます!?」


 がっつりボク達の仲間にカウントされてると思うよ。

 逆になんで驚いているのか知りたいくらい。


「ごめんねホワニー、巻き込んで。今からちょーっと暴れるけど、正義の行いだからリティアンス様とやらも許してくれるよね?」


「えっ、えっ!?」


「はい、パルは後ろね」


 ようやく口を開放してもらえた。


 この石壁、ちょっとやそっとでは壊れそうにない。

 だけどリリザならやってしまうだろう。ボクはそれに巻き込まれないように後ろの位置を指定されたってことだ。

 ほらホワニーも後ろにいないと危ないよ?


「えっと、あなたたち、その門の裏には誰もいないわよね? いたらケガどころじゃすまないからどいておいてね」


「なんだと? どういう意味だ!」


「見たほうが速いから実演するわね」


 リリザが集中モードに入った。周囲の魔力がリリザに集まっていくのがボクにでも分かる。


「クラ、ククラ、ルガククル。呼ぶは濫觴(らんしょう)たる力、現れしは舛馳(せんち)たる力。その力持ちて、籠居(ろうきょ)する者を引きずり出せ。貫き通す破城槌(バル・バラルク)!」


 正門の正面に現れたのは青白くぼんやりと光る丸太のような円筒形の魔力の塊。高濃度に圧縮されたそれに触れるだけで触れた者をボロボロにするだろう、というほどの圧倒的な破壊のイメージを感じる。


「いっけー!」


 リリザが号令をかけると同時に、青白丸太は門へと突っ込み、激しい音を立てて門を粉々にぶち破った。


「あわ、あわわわわ!」


 その様子を隣で見ていたホワニーは驚きで声も出ないようだ。


「ほら、二人とも行くわよ」


「ああ!」

「えっ、私もですか!?」

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