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23 光を放つ守護の盾 その4

「ちょ、ちょ、ちょっとパル! まさか渡したお金を全部渡したの? あれ、1か月くらいは生活できる金額よ!?」


「あ、そうなんだ。よかった! それだけあったら病気のお母さんも元気になるね!」


「元気になるね、じゃなーい!」


「何を怒ってるのさリリザ。女の子に優しくするのは当然のことじゃないか」


「そうだけど、そうじゃないの!

 いい? パルはいい事をしたって思ってるかもしれないけど、それは騙されただけだから! よくある常套句。不幸なふりをして親切な人からお金を巻き上げる、詐欺よ!」


「そんなはずない。お母さんが病気なんだよ、嘘でもそんな事言うはずがない」


「純粋! オーガ文化かエルフ文化かなぁ? パルは純粋すぎるよ!

 あのね、人間はずる賢いの。噓をついて人をだましてお金を巻き上げようとすることなんて日常茶飯事よ」


「それは嘘だよ。リリザはそんな事しないじゃないか。リリザはボクを助けてくれたし、子供たちだって助けたし、騙したりなんてしてないじゃないか」


「えっ、いや、まあ、それはそうだけど。ううー」


 ちょ、ちょっとこそばゆいかな。

 純粋な目がこっちを見てる。この私というパーフェクトお姉さんが近くにいるから人間って素敵、と思ってしまったのも止む無しかぁ。


「あのねパル。私がパルに騙したりひどい事をしたりすることは無いわ。だけど、ほかの人間はそうじゃないの。山にいた動物だって生きるためには噛みついてくるでしょ? 人間だって生きるために騙したりしてくるの。わかった?」


「わかりません。リリザがいい人間なんだから、あの子もいい人間なんだよ」


 あぁぁ。

 パルって結構頑固なのね。確かにこれまでも頑固かなって思うことはあったけど、スーパー頑固よ。


 あ、そうだ!


「ねえパル。あなたのお父さんは女の子に優しくしなさい、って教えたのよね?」


「そうだよ。父さんとの約束」


「女の子がさ、間違ったことをしてたら、それを教えてあげることが、正してあげることが、それこそが本当のやさしさってやつなんじゃないのかしら?」


「うーん……。確かにそうかな。でも、あの子は間違ってないよ」


「もう! じゃあこうしましょ。私はパルから聞いた話しか知らないからその女の子を疑っています。パルはそうじゃないって言います。だったら、私がその子に会ってみればいいんじゃないかしら?」


「うん。そうだね。あの子が疑われたままじゃ可哀そうだ。絶対リリザにもわかるよ!」


 そういってパルにその子の元まで案内してもらうことにした。

 もちろん大石は抱えさせたままで。

 クーリングオフするためには現品が無いとね。


 ◆◆◆


 少し時は遡り、パルが初めてのお使いに出発した時の事。


 パルは宿を出てまっすぐに海鮮市場へと向かっていた。一度行った事があるからだ。

 おなか減ったーというリリザの申し出に応えて食事店を探していたところ、偶然迷い込んだのだ。

 エルフ譲りの頭脳とオーガ譲りの感覚によって、パルは一度行った場所を忘れることはない。


 その時は新鮮な魚介類をその場でさばいてもらったものを買って食べた。


 (あの魚は美味しかったな。今回もそれにしようかな。いや、それともまだ見ぬ海の食材にするべきか……。うーん)


 どうしようかと思考を巡らせながら道を歩いていた所、何やら通りの向こうで怒号が飛び交っているのを耳にした。


「お前たちは信用ならねえ!」

「そうだ! 忘れたとは言わせねえぞ!」


「えっ、いや、でも……その、あの」


 屈強な二人の男に詰め寄られる女。

 全身に金属の鎧をまとい、背中に自分の身長よりも大きな盾を背負っている。

 聖騎士のホワニーだ。


「あいつら! 女の子を!」


 ただならぬ雰囲気を感じたパルは方向を変え、一直線に三人の元へと駆けだす。


「お前たちは俺たちを助けてくれなかった! 俺たちが外国に攻められて死にそうな時にな!」

「そうだそうだ! 何度も助けてくれって伝えたのに来てくれなかったんだ! 絶望した俺たちは玉砕するしかなかった! 町人たちが武器を手に取って戦うしかなかった! それがどういうことかわかるか?」


 弁論に熱が入り、男たちは今にもホワニーに飛び掛からんという様子。


「あわわわわ」


 そんな男たちの姿に、気弱な女聖騎士は圧倒されている。


「町は戦火で荒廃し、俺達の半分は死んだ! 分かるか? 命がけで戦って、死に物狂いで戦って、それでやっと外国の野郎を追い払ったんだよ」


「それを、お前たちは、のほほんと後からやってきやがった。俺たちを見殺しにしておいてだ!」


「で、でも、その後、けが人や負傷者を救ったって、町の復興に力を貸したって……」


 男達のマシンガンのような言葉が途切れ、そこにようやくホワニーが反論を挟んだのだが、それは逆効果だった。


「ばかやろう! けが人や負傷者を救った? 町の復興に力を貸した? 馬鹿を言え! バカ高い薬、復興のための資材の費用、お前たちはそれを要求した! 背に腹は代えられなかった俺達にだ!」


 狩る物と狩られる者。その立場が逆転することを本能的に拒んでしまう。

 男は怒りをもってその立場を維持することにしたのだ。


 だけどそんな理不尽なことがいつまでもまかり通るわけではない。

 『女の子に優しくする』をモットーにする少年の目に留まってしまったのだから。


「おい! 落ち着けよ!」


 ヒートアップして一触即発の三者の間にパルが割り込んだ。

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