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22 光を放つ守護の盾 その3

 なーんてことがあったの。

 エルフのお父さんからいろいろ習っていたみたいで、パルったら主婦力が高いのよね。

 頭の回転も速い子で、いろいろな事を覚えるのも速いし、優秀な子。


 だけど、ちょーっと人間の常識には疎いのよね。

 だから今日は一人でお使いに行かせてみたんだけど。


 そういえば初めてのお使いって、ハプニングがいっぱいじゃなかったっけ? テレビで見たことあるわ。


「心配になってきちゃった」


 売買についての常識は一通り教えてみたものの、実際には何が起こるか分からない。

 この港町、治安はいいって評判なんだけど、ここは異世界。何があるか分からない。


「お昼寝はやめ。パルの様子を見に行きましょ」


 湧き上がってくるモヤモヤした感覚。

 すぐにベッドから飛び起きて、泊っている宿を出て大通りへ。


 パルが向かったのは海鮮市のはず。

 ところで海鮮市はどっちかしら。パルがいてくれたらすぐに行けるのに。


「あの~」


 どうしようかとうろうろしている所、後ろから間の抜けた声で呼びかけられた。

 「はい?」と振り返った先には、人の身長ほどもある大きな盾を背負って、全身鎧でがっちがちに固めた女騎士の姿があった。


「あのぅ、あなた旅人ですか?」


 青色の髪をおさげにしていて、眼鏡をかけた騎士。

 男なら職質にかこつけたナンパの事も多いけど、女性なら違うだろう。さてさて一体どういうことなのかしらね。


「ええそうよ。それが?」


「よかった! あの! 旅人の方が行方不明になってるっていう情報があってですね、何か知りませんか?」


 いきなり投げかけられた言葉に私はぽかんとする。


「って、旅人の方なんだから詳しい事を聞いても分かるわけないじゃないですかー、私のバカバカ! 聞くなら地元の人にしないとー! だけど、地元の人は、あわわわわ!」


 一人で漫才を始めてしまった。

 大丈夫なんだろうかこの女騎士は、と哀れに思った所で助け船を出そうとおもいます。


「あの、あなたは?」


「あ、失礼しました。私は聖騎士のホワニーと言います。実はですね、この港町で旅人が何人か行方不明になっているという情報を得たので調査しているところです」


 聖騎士。この国で幅を利かせているリティアンス教の教義を守り、広めるための実行組織だ。弱きを守り悪を挫くリティアンス教の教えにより、正義の執行者として治安機関を兼ねている。

 私は無神論者だし、宗教って聞くとどうも胡散臭いと思ってしまう、そういう色眼鏡で見てしまうので聖騎士もあまり好きではない。

 でもあえてもめ事を起こそうとは思わないけどね。


「この町は治安がいいって聞いたけど? 確か数年前にやってきた今の領主様がすごく優秀で、それまで寂れた港町だったここを綺麗に整えて屈指の観光地にしたとかなんとか。税金も安くて喜んでる、って町のおじさんが自慢してたわ」


「おぉ、そうなんですね!」


 てのひらにグーの握りこぶしをぽんっと叩くアクション。そんなのする人初めて見たわ。

 この聖騎士さん私よりちょっと年下に見えるけど、あぶなっかしいわね。


「確かに町は清潔で貧民街も無いし、人々の身なりも良くって栄えていて。ですので……実は調査が行き詰っているんですよね」


 ふぅ、とため息を漏らすついでに彼女の鎧がガチャリと音を立てた。


 さて、いつまでもこの人に構っている暇は無い。

 だけど『旅人が行方不明になる』というのは気になる情報ではある。

 何かというと、私のパルが心配なのだ。


 こういう時って、やたら悪い方に転がるじゃない?

 いくら治安が良くっても何があるか分からない。


「これまで特に何かあったわけじゃないけど、今連れを一人でお使いに行かせてるから心配なの、またね」


「あ、はい。何かありましたらお知らせください。リティアンス様のご加護があらんことを」


 後ろでがっちゃんがっちゃん音を立てながら手を振ってくれる聖騎士ホワニ―。

 変わった子だなって思った所で……そもそも私はどっちに行けばパルに会えるのか、という問題に再度ぶち当たる。


「ま、市場の場所は分からないけど、パルの魔力を追えばいっか」


 そうそう、やみくもに探しても仕方ないからね。市場の場所は問題じゃないのよ、場所は。


「りりざー!」


 探知魔術を使おうとした矢先のこと。

 探し人であるパルが通りの真ん中から歩いてくるのを見つけたのだ。


 無事でよかったと安堵する半面――


「ぱ、る?」


 ちょーっと、自分の目を疑った。


 どんどんと近づいてくるパル。

 その胸には大きな石が抱きかかえられている。

 そこらへんに転がっているような何の変哲もない大石。


 だけど私の目は正常だったわ。

 眼前にやってきたパルを見てもその様子は変わらないもの。


「リリザ、どうしたの? 昼寝するって言ってなかったっけ」


「えっと、それよりも、パル、それは?」


 私のことはいいのだ。私のことは。

 それよりも今解き明かさなくてはならないのは、パルがその胸に抱えた物体の事。

 何故、道端で拾ったような石を持って帰ってきたのか。


「これ? これはさっきお母さんが病気で働けなくって、薬代を稼ぐために働いてるっていう女の子から買った。なんか岩を売る仕事をしてるらしいんだけど、岩はいいからって言ってお金を全部渡そうとしたら、それは受け取れないって言われて、岩を買ってくれるなら受け取れるって言われたから、この岩と交換してきた」

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