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19 ついて行くヒトを間違った? その7

 火球は放たれた時よりも速度を増してみるみる遠ざかって行き――


 『そんな……馬鹿な……。ぐわーっ!』


 撃ち返された火球を自らの体に受け、さすがのドラゴンも無傷とはいかず、大きな地響きと共に地面に落下した。


 ボクは今、信じがたいものを目にした。

 国をも焼き尽くすほどの灼熱の炎。触れるだけで消し炭になるほどの無慈悲な力。

 そんな無形の炎を物理で、箒なんかではね返してしまうなんて。


 やっぱりリリザは凄い。すごい人間(ヒト)だ。


 ブスブスとまだ煙を上げているドラゴンに近づいていくリリザ。


「はい、確保ぉ!」


 今度は槍ではなく紫色の鎖が現れて、仰向けに倒れたドラゴンをがんじがらめにした。


 『ぐぬぅ、放せ、なんじゃこの鎖、切れぬ!』


「あらぁ、まだ十分元気なのね。おとなしく帰ってくれるまでボコボコに痛めつけたほうがいいのかしら」


 『ぬぅぅぅう、この力、貴様、もしや異世界転生者か!』


「残念、私は転移者よ。でも、それを見抜くなんてさすがドラゴンさんね。だったら私の力も理解できるよね。ねっ」


 『なぜだ。なぜこんな目に合う。我はただおとなしく餌を食べていただけだ。食べ過ぎて餌が減りすぎたから我慢してじっくり増えるのを待っていただけなのに!』


「あのミミズ、あなたが養殖してたのね。どのくらいの間放置してたのかしらないけど、増えすぎて町の人が迷惑してるみたいだからちゃんと管理してよね。あ、山全体で繁殖させたらダメよ。一部でやりなさい、一部の狭い所で」


 『人間の言うことなど聞かん……』


「ふーん。あっそ。ほいっ」


 ――AGYAAAAAA!


 紫の鎖が光だし、そこから雷のような光が漏れている。


 『わ、わかった。餌の管理はちゃんとする!』


「そうよ、最初からそういう素直な態度で入ればいいの。良い関係を築くには必要な能力よ?」


 『なにが良い関係だ……ぎゃわわわわわ!』


 再び稲妻が走った。

 どうやらこのドラゴン、学習能力が足りないようだ。


「何かいった?」


 『いえ、何も……』


「それじゃあついでに約束ね。あなたは(ふもと)の人間達に危害を加えてはなりません。また麓の人間達が危機に陥った時、守護者として人間達を助けてください」


 『……』


「返事がないわね。無理やり魂に約定を刻み込んでもいいのよ? 機械のように約定をこなす人形だとしても、町の人にとっては守護者に違いないから」


 『わかりました……』


「うん。いい子ね。じゃあ山をおりよっかな。おなかすいたし。ふもとまで乗せてって?」


 『馬鹿を言うな! 我が人間の使いになったことを示せと!?』


「わがまま言わないの。おなかが減ったのよ。そうだ、なんならあなたの尻尾をちょん切って食べるわよ? ねえパル、焼いたらきっと美味しいよね?」


 え゛っ!?

 いきなりこっちに話を振らないで。

 確かにトカゲとかは焼いたら香ばしくて美味しいけど、これ……ボクの回答次第でドラゴンの尻尾がなくなるってことだろ?


 どうしよう、なんて答えたら――


「無言は肯定とみなします。しっぽ美味しい、決定!」


 判定までが速すぎ!

 答える暇もないよ!


 『おい、ちょっとまって!』


 ほら、ドラゴンさんも不満そうだよ。


「なによ、安っぽいプライドよりも尻尾を失う方を選ぶっていうんでしょ?」


 これは本気だ。

 帰るよりも先に空腹を何とかしたいという欲求が勝っている。


 その証拠にリリザは人差し指を一本だけ立てていて、その先からなんでも切り裂けそうな魔力の刃がぶいんぶいん音を立てているからだ。


 『……(ふもと)まで運ばせていただきます』


 こうして俺たちはドラゴンの背にのって(ふもと)の町へと戻り、子供たちを無事に親の元へ返すことに成功した。

 そして今後はドラゴンが守ってくれると町の人に触れ回って、町の人は大感激して「ドラゴンが守護する町ララクサ」だ、と誰かが言うと、「ドラゴン様を祭るんだ」とかみんなが言い出して、あれよあれよと祭りが始まるのだった。


 リリザも救世主だと(あが)められて、運んでこられたご馳走を食べまくってご満悦そうで。ボクもすごく久しぶりに他人の作った料理を食べたのだった。


 夜も更けて祭りも終わりに近づき、いつの間にかドラゴンはいなくなっていて。

 ボクとリリザも宿へと帰るためにのんびりと夜の道を歩いていた。


 お互い何も言わない静かな夜道。

 時折、リーリーと何かの虫の音がするだけ。


 そんな時、ボクは気になっていた事をリリザに問いかけることにした。


「ねえリリザ、あの箒で空を飛ぶ魔術、どうしてオーガの集落からこの町に来る時につかわなかったのさ。あれだったら何日も山の中をさまよわなくてもすぐにたどり着けたのに」


 あれだけ疲れた、しんどい、もう歩けない、って連呼するくらいなのだ。

 あの箒に乗って行けばそんな辛い思いをする事もなかっただろうに。


 サーっと静かな空間に風の流れる音がする。

 ボクはリリザの横顔を見上げながら返事を待つ。


「そうね。

 どうしてかって言われるとね。身につけた力は自分のためじゃなくてほかの人のために使うべき、って思ってるからかな」


「他の人のため?」


「そ。きっとね魔術ってそういうものだと思うの。自分のためじゃなくて、ほかの人を幸せにする力。きっと神様はそういう意図で私にこの力をくれたんだと思うの」


「ふーん?」


「んー、パルにはちょっと難しかったかな」


 にこりと笑ってこっちを見るリリザ。

 そして、リリザの言うことが今一つよくわかっていないボクをからかうように、頭をわしゃわしゃと手で撫で始めた。


 さすがのお子様扱いにボクは膨れて――


「でもさ、リリザに最初に会った時、森の中で(まき)に火をつけてなかった? 自分のおなかが減ってたから」


 と直球で攻めた。


「あ、あれはあれよ、私のためじゃなくって、パルがすーっごく料理したい、っていう顔をしてたから、だからね、パルのため、そう、パルのためなのよ!」


「う、うん……」


 すごく早口で返答が返ってきた。

 ボクは圧倒されてそう答えることしかできなかったのだ。


「さ、さーて、帰ったらのむぞー!」


「えっ! さっき浴びるほど飲んでたじゃないか。ぐでんぐでんになるまでさ。ボクの話は聞いてくれなくなるし、大変だったんだよ?」


「あれはあれ、これはこれよ!」


 リリザと出会ってまだ数日。

 まだまだリリザについて知らないことは沢山あるけれど、今からちょっとずつ知って行けばいい。まだまだ旅は続くのだから。

お読みいただきありがとうございます。

自分の事はポンコツだけど人のために戦うときはカッコいいリリザお姉さん!

が第2話のテーマでした。


リリザは実は転移者だというのが明かされた今話ですが、リリザの肌の色は褐色なんだっていうのは忘れないであげてください!


次回、旅の途中で立ち寄った町で騒動に巻き込まれて、のようなお話となります。


面白い、続きを読みたい、と思われた方は、ブックマークや、この下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援ポイントを付けて頂けると作者はとても喜びます!


それでは引き続きお楽しみください!

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