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18 ついて行くヒトを間違った? その6

 『その態度、もの言い。我が餌を焼き払っておきながらの傲慢さ。もはや慈悲の心もない。代償にお前たちのはらわたを食らいつくしてやる。お前たちだけでは足りぬ。眼下に見える町の人間達全てをだ!』


 咆哮が止んだ、と思った矢先。一際大きな衝撃がボクの体を襲った。

 恐らくはドラゴンが魔力を開放した衝撃だろう。ただ魔力を開放しただけの。


 その衝撃によってボクは子供たちと一緒に地面へ倒れこんでしまった。


 すぐさま下敷きにしてしまった子供たちの様子を確認する。

 「痛いけど大丈夫」と言っている辺り、なんとか大丈夫だろう。


 それよりも。


「リリザ! どうするんだよ、ものすごく怒ってるじゃないか!」


 とリリザに言った所でどうなるものでもない。

 この怒れる竜をもはや止めることはできないのだ。


「ううーん。ちょっと煽り耐性低かったわね。若いドラゴンなのね」


 そうじゃない、そういうことが聞きたいんじゃないんだ。


 って、ヤバい! ドラゴンが前足を振り上げてる!


「お前たち、走るぞ!」


 戦うにしても逃げるにしても、この場所から一目散に離れなくてはならない。

 ボクは二人の手を引いて急いで走り始める。


 リリザの邪魔をするなんてもってのほかだ。

 とりあえず遠くへ。


 巻き込まれて二人がケガをしないように遠くへ。


 振り上げられた前足のターゲットはボク達ではないとはいえ、その衝撃の余波でやられてしまう可能性がある。


 とはいえ子供の足でそれほど速く走れるはずもない。

 振り下ろされた前足がリリザに向かうまでの時間もわずかなものだ。


 そんな中で


「リリザ!」


 ボクは振り返りざまにその様子を見てしまった。

 家ほどの大きさのある鋭い爪の前足が、その場からまったく動こうとしないリリザに向かって振り下ろされたのを。


 ボクだったら無理でもリリザならあれくらい回避できるはずなのに!


 迫る巨大な暴力がリリザをぺちゃんこに踏みつぶしてしまう、と言うとき――


 ――GAYaaaaaaaaaaaaaa!


 地面から飛び出たいくつもの槍みたいなものがドラゴンの前足に突き刺さっていたのだ。

 あれは痛い。想像しただけで痛い。


「どうかしら、乙女に手を出そうとすると痛い目にあうの、分かったかしら?」


 あれはやっぱりリリザの魔術だ。

 リリザの足元に奇怪な紫色に輝く円が出来ていて、そこから槍のような尖ったものが何本も出てきている。


 ――GRUUUUUUaaaaa!


 バキリと前足に突き刺さる槍を力任せにブチ折ったドラゴンは、くるりと体を回転させると、横なぎで太い尻尾の一撃を放ってくる。


 鞭のようにしなる高速の尻尾。

 鞭とは比較にならない大きさ太さ。かすっただけでも粉々の肉片に早変わりするだろう。


 そんな凶器がリリザへと迫るが、リリザは華麗に跳躍してそれをひらりと回避する。


「隙だらけよ?」


 リリザにとっては自分のいる場所が地面であっても空であっても関係ないようだ。

 今度はドラゴンの真下から槍が現れてグサグサと体に突き刺さる。


 地面からの攻撃を受け、たまらずドラゴンは空へと飛びあがる。


 重い体が浮力を得るためにその翼を激しく羽ばたかせるのだ。その余波、すごい風圧がボクらの所まで届いている。


「あら~、逃げるのかしら?」


 地面に着地したリリザは、おでこの目の上に手を当てて遠くを見るかのように、はるか上空のドラゴンの姿を見ている。


 『矮小な生物ごときがこの我に歯向かうなどと、あってはならん。ましてや傷をつけられるなどと! もはや加減など必要ない。我の過ちと共にすべてを吹き飛ばしてくれるわ!』


 空気の振動音。何かが叩きつけられるような激しい音を立てながら空中で浮遊するドラゴン。その口の辺りに得体のしれない力が集まっていく。


 あれってもしかして!


「リリザ、あいつ火を吐くんじゃ!? 父さんから聞いたことあるよ! ドラゴンのブレスはすべての物を焼き尽くすって!」


 一夜で国を焼き尽くしたっていう話を聞いたことがある。

 栄華を誇った人間の国はドラゴンの逆鱗に触れてしまったがゆえにその日で歴史に幕を閉じたのだ。


「こまったわねぇ。あれだけ高いところにいたら攻撃が届かないわ」


 いや、そうじゃない。

 こっちの攻撃というより、あっちの攻撃が問題なんであってね?


 そんなおちゃらけた様子をしている間に、ドラゴンの口の前に膨大な熱量の火球が生み出される。

 これだけ離れていても肌がチリチリと焼けるような、見ただけで分かる即死級の炎だ。


『燃え尽きよ、我に逆らったという愚かな行動を反省する間も無く!』


 そして、滅びの一撃が放たれた。


 火球が視覚的な大きさを増しながらこちらへと迫る。

 後数秒もしないうちにこの山は焦土と化すだろう。ボク達を巻き込んで。


「ちゃんちゃちゃちゃ~んちゃ、ちゃんちゃちゃちゃ~んちゃ、ちゃんちゃちゃちゃ~んちゃちゃ~ん。ちゃんちゃちゃちゃちゃちゃん、ちゃんちゃちゃちゃちゃちゃん、ちゃんちゃちゃんちゃんちゃちゃん、ちゃんちゃんちゃん!」


 なんか歌いだしたリリザ。

 そしてあれは、さっき乗ってきた箒。それを手に持って、両手剣のように両手で持って?


「かっとばせー、り、り、ざ!」


 リリザは体をひねり、箒を体の後方で止める。

 そして、自らの体の何倍も大きな火球に対して……箒を振りぬき……打ち返したのだ……。

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