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15 ついて行くヒトを間違った? その3

 つかれたーつかれたーおなかへったー、と連呼するリリザを何とか引っ張って歩き、いくつか山を越えて、ようやく人間達が使っていそうな道を見つけて。


 その道を歩いている所にちょうど通りかかった牛車。

 それにしがみついて、のるー、ぜったいのるー、と言って離れようとしないリリザ。


 そんな不審なボク達だったけど、ついでだからと快く荷台に乗せてもらえて……ガタゴトと牛車が進んで目的の人間の町に着くころにはもう日が沈みかけていた。


 オーガの集落が3つほど入るような大きさの町。

 木造家屋のオーガの集落と違って石造りの家が目立つ。それに辺りを歩いているのは人間ばかり。

 これが人間の町ってやつか。

 リリザによるとこれでも小さい町なんだとか。オーガと違って人間って沢山いるんだなって思った。


 牛車で運んでくれた人間にお礼を言って別れて、さてこれからどうするのか。


 リリザ曰く、人間の町には宿屋と言うものがあるそうだ。お金を払うことで部屋に寝泊まりできる旅人用の家らしい。エルフやオーガでは考えられないけど、人間はお金を払うことでなんでも代わりにやってくれる種族なんだとか。

 

 そんな宿屋なるものに入ったリリザとボク。

 リリザは長旅の疲れでぐでんとなりながらも人間の女にお金を渡していて……どうやら話がまとまったようだ。


 ボクは宿の入口横のテーブルでその様子を眺めていた。

 この宿は簡単な食事を出してもくれるらしく、ボクはここで待っておくようにリリザに言われた。リリザの空腹は部屋に入るまで持たないようだ。


「ぱる~、おつかれ~」


 伸びきった猫のようにテーブルの上に伏せているリリザ。

 こうなったらしばらくは動かないだろう。


 まあ話によるとすぐに夜ご飯が出てくるということなので、ぐんにょりしていても問題ないだろう。

 ご飯を作る必要が無いのでボクもゆっくりさせてもらおう。


 そう思って気を抜いた時だった。


「ミモーネ! ミモーネはいるか!?」


 頭の毛が薄い人間の男が息を切らせて宿の入口に駆け込んできた。


「なんだい、ダルガン、騒々しいね」


 あまりの騒々しさに、カウンターの奥で調理していた女が顔を出す。

 彼女が手に持っている皿はボクたちの食べ物だろう。


「大変なんだ! 道具屋んちのボウズがうちの息子を連れて山に入ったらしいんだ!」


「なんだって!? 山には恐ろしい魔物がいるから近づいちゃならないって、いつも言ってただろうに!」


「おおかた勇者ごっことか言って、怖いもの知らずで山にいったんだろう。ミモーネ、お前も皆に声をかけてくれ。町一番のすごうでローシュさんは今隣町に行ってる。帰りを待ってる暇はないんだ!」


「おじさん! 山ってどっち!」


 突如リリザが会話に割って入った。


「え、あ、北だが」


「分かったわ!」


 リリザはひょいっとテーブルを飛び越して、宿の外へと出てしまった。


「り、りりざ!?」


 あれだけダラけていたリリザがいきなり俊敏に動き出すところを目の当たりにして、ボクは一瞬あっけにとられたが、ふと我に返って急いでリリザの後を追った。


 宿の外に出て、右を見て左を見て、リリザの姿を探す。


 特徴的なローブをはためかせて走るリリザの後ろ姿。

 見つけたリリザは、ボクが外に出る僅かな間にかなりの距離を進んでいた。


「リリザ!」


 ボクが声をかけるが聞こえていないのかリリザは立ち止まってはくれない。

 こうなったら追いつくしかない。オーガの母からもらったこの脚力を舐めてもらっては困る。


 自慢の足で駆けだすボク。


 宿に荷物を置いてきたことを思い出したが、いまさら戻って担いでくる暇は無い。

 それよりも無心になって豪脚を見せる時だ!


 うりゃああああ!


 すぐに距離を詰めて、リリザに追いつく、というところまできたが――


「ミク、エクレ、リバラスト。()く、()く、其は扈随(こずい)する黒風、(あま)駆ける流星」


 なんか呟いてるぞ。もしかして魔術の詠唱か!


一条のわら箒(ティックルーコラット)!」


 リリザの足元に棒のような何かが現れたかと思うと、ふわりと浮かび上がる。

 棒かと思ったそれは掃除に使う(ほうき)であり、リリザはそれにまたがり夜空に向かって上昇していく。


「こ、このっ!」


 ここで跳ばなくては置いて行かれる!

 そう思い渾身の力を込めて空を行く(ほうき)に飛びついた。


「うわわわわわーっ!」


 何とか両手でしがみついたものの、ボクの体の重さをものともせず(ほうき)はぐんぐんと高度を上げていく。

 そして後方、ボクの頭上、もじゃもじゃとした穂先が集まった部分から何か魔力的なものが吹き出すと、急加速し空を舞った。


 その速度の反作用。ボクの体には前方から空気の塊がこれでもかとぶつかってきて、その圧に(ほうき)から振り落とされそうになるが必死にしがみついていく。

 そもそもこの高さだ。落ちたら死んでしまう。


 そんな命がけなボクの様子はお構いなしに、ぐんぐんと近づいてくる山。


「り、りりざ!」


 空気が耳に当たる音がうるさくてリリザまで届いていないだろう。


「パル、やっぱり来てくれたんだ。ありがと。ちょーっときついと思うけど我慢してね」


 見上げるボクのほうを見て、リリザは嬉しそうににっこり笑った。

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