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12 不思議なニンゲンに拾われて その12

「あー、もう! もう、もう、もう! いいです、もういいです!」


「リリザ!?」


 逆にリリザが叫びだした。

 爆発するようにリリザが声を張り上げたのだ。


「もう限界です! この私、リリザお姉さんはそこの子羊をいただいていきます。誰にも文句は言わせません。はい決定!」


「あの、リリザ?」


「何よ、私に文句があるっていうの? 文句があるならまずは大人になってからね。子供は大人の言うことをきかなきゃいけないのよ?」


 つかつかと歩いて来て、ボクの手を握ろうとするリリザ。


 だけど――


「えっ? パル……どうして……」


 だけどボクはその手を避けたのだ。


 もちろん理由はある。


「その、やっぱり、自分で言わないと。あの、リリザ! ボクはリリザについて行きたい。リリザと一緒にいたい! だから、その、連れて行って欲しい!」


 そして改めて手を伸ばした。


「んー、んー。んー。んふふふふふ!」


 リリザはご満悦な表情を浮かべると、がばっとぼくの体に抱き着いてきて。


「よーし、よーし。さすがは男の子だ。その願い聞き届けてあげようじゃないか」


 ぐ、ぐるじい……。

 ボクの顔はリリザの胸に埋められている。そして後頭部にぐっと手を回されているので息をする隙間も脱出する方法もない。


 こ、こうなったら……。


 ボクはリリザのわき腹に手を伸ばした。


「きゃっ! ちょ、ちょっと、あはは、こそばい! そこ、だめ!」


 やはり人間にも弱点だったのだ。

 リリザの腕が緩んだ隙にボクの顔は無呼吸地帯から脱出して、ぜはぜはと大きな呼吸をするのだった。


 ◆◆◆


「じゃ、行きましょ。よろしくねパル」


 リリザがにいっと笑みを浮かべる。


 あの後リリザは族長に、ボクが集落の外に……リリザに着いていくことをキッチリと念押しして。

 そんなリリザに対して昔はブイブイ言わしてた族長が猫のように小さくなって怯えていて。

 それから「忘れてたわ」と言ったリリザが何かの魔術を使うと、族長は白目をむいて仰向けに倒れてしまって。

 さっき倒して倒れっぱなしのグラムドにも同じく何かをして、「さて目撃者の記憶は消去したわ」と手をパチンパチンと叩き、砂を払うような所作を見せた後。


 リリザは笑顔でそう言ったのだ。

 思えばそんな眩しいくらいの笑顔を見たのはいつ以来だろうか。


 母さんもこんな笑顔をする人だった。

 と思ったところで、なんだか恥ずかしくなってしまって――


「あ、ああ……こちらこそよろしく、リリザ」


 と、ちょっと口ごもってしまった。


 今からこの人と旅に出るんだ。

 住み慣れたとは言わない、数年間過ごしたこの集落を出て。


 思えばボクは子供のころ住んでいた森とこの集落しか知らない。


 世界は広くって、すごいんだって父さんも言っていた。

 炎が地面から噴き出てる場所とか、辺り一面が氷漬けの場所とか。凶暴な魔物たちが(ひし)めくように住まう山があるとか、そんな話を聞いたことを思い出した。


 でもまあ、この人と……リリザと一緒ならどんな所だって楽しそうだ。


「それで、リリザはどこに行くの?」


 ボクはリリザの事を何も知らない。だから至極まっとうな質問だ。


 そんなボクに対してリリザは満面の笑みでこう答えた。


「決まっているわ! 勇者様のところよ!」

お読みいただきありがとうございます。

ここで第1話は終了となります。


謎の魔術師リリザと出会ったパルは広い世界に旅立ちます。この先何が待ち受けているのか。そして勇者様とは何者なのか。


面白い、続きを読みたい、と思われた方は、ブックマークや、この下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援ポイントを付けて頂けると作者はとても喜びます!


それでは引き続きお楽しみください!

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