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第一話 “旅”の始まり

 ???「わっ、起きたんだ」


 気づいたらどこか知らない誰かの家に居た、僕は何がなんだか分からなかった。


 でも、自殺が失敗したのは目に見えて分かった。


 雄二「失敗か……」


 僕は意図せずに、本能的に呟いていた。


 ???「失敗って?」


 自分でも聞き取れるか怪しいぐらいのかなり小さな声で言ったので、相手が聞き取れていたのが少し驚きだった。


 雄二「なんでもない」


 少し声が震えていたのが分かった。


 ???「なんでもないわけない、だって泣いてるもん」


 言われるまで気づかなかった、声が震えていたのは分かったが、泣いているとは思っていなかった。


 いつも通り、我慢できてると思った。


 でも、なぜ涙が出てきたのか?人の温かさに触れたから?自殺に失敗したから?泣いている理由は自分でも分からなかった。


 ???「出会ったばかりだけど、何があったのか、教えてくれない?」


 僕は迷った、こうやって優しくされて、その優しさに甘えて、そうやってやって良い方向に進んだことがないからだ。


 いじめられた時だってそうだった、最初は優しくしてくれたあの人も、最後の方には、やはり僕をいじめる側になっていた。


 昔の事を思い出していると、今度は自分でも分かるほどに、大粒の涙を流していた。


 昔のことなんて、思い出すんじゃなかった。


 僕は強くそう思った。


 ???「もう、仕方ないんだから」


 …………!?


 気づいたら僕は、青髪の少女に抱きつかれていた、僕の頭が、青髪の少女の頭の下になるように。


 ???「君に何があったかなんて分からないけど、君は今、ものすごく疲れてて、苦しくて、なのに、泣くのを我慢して……こんな事、私が言える事じゃない気がするけど、もう、頑張らなくていいんだよ」


 その言葉を聞いた時、僕は自分で涙腺が崩壊したのを感じた。


 ???「……泣いてるけど、まだ無理してるでしょ?ほら、声抑えてる、今は私と君しかいないからさ、思いっきり泣いていいよ。君の事情はわからないけれど、君が今とても辛いのは分かってる」


 雄二「思いっきり泣いてもいいの?怒らないの?」


僕は震えた声でそう言った。


 ???「はぁ……昔の私と本当によく似てる。慰めてる人が怒るわけないでしょ、君は頑張ったんだから、思いっきり泣いていいよ」


 何年ぶりだろうか、声を出して泣いたのは、声を出したらうるさいから、泣いてるのがバレるから。泣いたら情けないから。


 ???「君に伝えておきたいんだけどさ、泣く事は、恥ずかしいことでもなんでもないからね、昔の私もそうやって考えてたから、もしかして君も……なんて思ったから一応言っておいたけど、泣きたい時に泣く、笑いたい時に笑う、それだけでいいの、他人の方が辛い思いをしてる、そんなの関係ない、今辛いのは、その人じゃなくて、あなたなんだから」


 僕は散々泣いた。

 ずっと、ずっと。

 涙を受け止めてくれて嬉しかった。

 泣くのを認めてくれて嬉しかった。


???「泣き止んだかと思ったら、今度は寝てる、もう、仕方ないんだから……」



 次の日、僕は青髪の少女の胸の中で寝ていたのに気がついた。


 ???「あっ、起きた、おはよう」

 

 青髪の少女は微笑みながらそう言った。


 雄二「おはようございます、昨日寝てたんですね、迷惑でしたよね、すいません……」


 ???「迷惑なんかじゃないよ、君の寝顔可愛かったし」


 ???「それより、まだ名前言ってなかったね、私の名前はユイナ、よろしくね!君の名前は?」


 雄二「えっと、佐々木 雄二です。」


 ユイナ「雄二って言うんだ、雄二くん、よろしくね!」


ユイナ「外見から見るに、最近話題のイセカイテンセイシャ?ってやつかな?」


 雄二「多分そうだと思います」


 ユイナ「じゃあこの世界についてあまり知らないわけか、戦う武器も何も持ってないもんね、この世界は「オーバー•パレット•ワールド」通称、OPWって呼ばれる世界で、それぞれ、パレットみたいにある色がメインの世界があるの、この世界は緑の世界、ひとまず見に行ってみよっか?」


 そうして、僕たちは外へ出た。


 ユイナ「これが私の住んでる緑の世界」


 雄二「綺麗……」


 僕は、目の前にある広大な草原、そして優しく吹く風を目の当たりにし、また意図せずそう呟いた。


 ユイナ「でしょ!」


 彼女は誇らしげにそう言った。


 雄二「こんな絶景が他の世界にもあるんですか?」


 ユイナ「分からない、だけど見てみたい」


 雄二「それは僕も同感です」


 ユイナ「そうだ、目標も同じだし、私と一緒に他の世界を見に行かない?」


 多分、今までの僕だったら、信用できずに断っていただろう、だけど、この人ことは信用しても良さそう、そう感じた。


 雄二「はい!」


 僕は、もう一度人を信じてみる事にした。

 そして、これが僕の“旅”の始まりだ。

 そう思った。




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