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135.彼女は理解っている~お祈り文~

いつもありがとうございます。

遅くなりすみません……


念のための補足

光樹族→エルフみたいな種族

輝光樹族→ハイエルフみたいな種族

この辺の違いについてのお話は後々に予定しています。



 この学院に来た頃と比べるとずいぶんと慣れた心持ちで、僕はアイネさんたちにヒューエイアさんを加えた面々を引き連れて更衣室に向かっていた。


 最初の頃はこの時間が来る度にドキドキして、更衣室に入る前から『溜まって』しまうことに気が重くなったものだったけれど、2ヶ月も毎日そんな経験をしていると着替え程度ではそこまで心が乱されることもなくなっていた。


 着替えどころかお風呂では女の子たちの裸を見ているし、それ以上のことをアイネさんたちと頻繁にシているので、耐性がついてしまったのかもしれないけれど……。


 輝光士女学院では、実技の授業はかなり重視されている。


 毎日の1時限目と2時限目は様々な座学の授業に振り分けられているが、3時限目と4時限目は通しで実技の授業に充てられていると言えば学院がどれだけ実技を重視しているか分かるだろうか。


 場所は晴れの日はほとんどがグラウンドで行われていて、雨の日は体育館のような建物で行われている。

 どちらもSクラスは優先で使うことができているらしいので、ありがたい話だ。


 余談だけど、昼食後の5時限目は座学のときもあれば『淑女教育』のときもある。


『ヒュー様! もうすぐですよ!』


『ああ、わかったわかった。わかったから離してくれないか……』


 僕が自分自身の女の子に対する慣れについて考えている間にも更衣室は近づいてきていて、前の方ではエルシーユさんがヒューエイアさんの手を引きそんなやり取りがなされていた。


 エルシーユさんとしては問題なく言葉が通じる相手が増えて嬉しいのか、憧れの(?)同族に対して学院の先輩として世話を焼いているつもりなのか分からないけれど、2人の容姿はともかく(身長の関係でエルシーユさんのほうが年上に見える)その様子はまるで『早く早く』と親の手を引く子供そのものと言ったところだろうか。


 ヒューエイアさんもどこか『仕方ないな』という風にそれに付き合っているように見える。


 そうこうしているうちに更衣室にたどり着き、同性しかいない故の無遠慮なのか豪快に扉を開け放ったエルシーユさんは、ヒューエイアさんの手を引いたまま中へと入っていく。


「こ、こらっ、エルシーユさん! もうちょっと淑女として恥じらいを……!」


「もう何度目ッスかね……アイねぇも諦めればいいッスのに」


「まぁまぁ、そんなところもエルちゃんの可愛いところよ」


 エルシーユさんの行動について口々に反応をしつつも、僕らは連れ立って更衣室の中に入った。


「(ぅ……)」


 ……うーん、慣れたと言えば慣れたのだけれど、相変わらずここの匂いだけはダメかもしれない。


 お年頃の女の子たちが着替える場となれば、様々な香水の甘い香りが混ざりあった独特の香りが充満している。

 着替えというと大浴場の脱衣所も当てはまるけれど、あちらは香水を落としてさっぱりした後だし、石鹸の香りは鼻には優しいのでこことはまた違うのだ。


 まあ、この感覚を持っているのは……男の感性を持っている僕だけなのだろうけれど。


『ええと、ヒュー様のロッカーは……』


『ヒューエイアさんは、こっちですね。ロッカーの位置は席順なのでアイネさんの隣です』


『そうだったわね! じゃあ――』


『時間もないですし、エルシーユさんはまずはご自分が着替えてこないとダメですよ』


『うぅ……ルナリアさんがそう言うなら、わかったわ……ヒュー様、また後でねっ!』


『うむ』


 ヒューエイアさんの手を引いたままキョロキョロとしていたエルシーユさんを自分の着替えに向かわせて、僕は向かって左側の奥の方にヒューエイアさんを案内した。


 エルシーユさんに言った通り時間もないので、僕もさっさと制服に手をかけて訓練着に着替え始める。


「やはりあの娘はまだ若いな……今代の巫女とはいえ、100はいっていないのではないか?」


「さ、さぁ……そういえば、僕らよりも歳上なのは分かっていましたけれど、詳しい年齢の話はしたことがありませんでしたね」


 ブラウスを脱ぎ、スカートを足から引き抜いたところでヒューエイアさんから質問を受けたが、僕はそれに答えることができなかった。

 見た目だけなら僕らと同年代に見えるし、長命種である輝光樹族の年齢を普人族の僕らが推し量ることは難しいからだ。


 質問をした当人であるヒューエイアさんは、ロッカーから取り出した訓練着の下……ブルマを手にして難しい顔をしている。


 ……そういえば、僕も最初はこの訓練着に驚いたっけ。


「そうか……まぁ私の推測は間違ってはいないと思うよ。光樹族の中でも我々のような輝光樹族と呼ばれるものは特に寿命が長く、精神の成長が遅いんだ。本来であれば外界と隔たりのある里でのんびりと暮らしている者たちだからね。刺激もなければ急成長する必要もないから、と私は考えている」


「そ、そうなんですね……」


 伸縮性の素材でできたブルマを『みょんみょん』と引っ張りながらそんな真面目な口調で言うものだから、僕は思わず漏れそうになった笑いを堪える羽目になってしまった。


「ああ。……ふむ?」


「……あの、何か……?」


 手にしたブルマの素材を確かめ終わったのか、それとも僕の反応に思うところでもあったのか……ヒューエイアさんは何かをつぶやきながらジッと僕の方を見ている。


 その視線は頭の上からつま先まで眺めるかのようで……有り体に言えば観察されているといったものだった。


「いやなに、君の美しさは見事なものだと思ったんだよ。長いこと生きてきているが、これほど美しいという言葉が似合う女性は見たことがないね」


「ぅ……あ、ありがとうございます……?」


 サラッと自然と恥ずかしい言葉を口にするヒューエイアさんに、なんだか恥ずかしくなってしまったつい僕はブラで覆われた胸とショーツを腕で隠した。


 ……いや待て僕。

 何を照れて普通に隠しているんだ。


 これじゃあまるっきり普通の女の子の反応じゃないか……。


「おやぁ~? ダメッスよヒューっち。ルナっちはアイねぇのものなんスから、狙っても無駄ッスよ~? そうッスよね、アイねぇ?」


「まぁ、ルナさんだもの。ルナさんを見たら誰だって見入ってしまうわ」


「ちぇっ……最近のアイねぇはヨユーッスよねぇ。むしろ嬉しそうッスし……嫁が褒められてそんなに嬉しいんスか?」


「よ、嫁って……」


 僕が密かにショックを受けている間に、アイネさんとミリリアさんのいつもの漫才(?)が始まってしまった。

 そしてヒューエイアさんはそんな下着姿の2人の様子を見ている。


「ふむ、いやアイネ君もなかなかのものだと思うよ。これまで見てきた普人族の中でもかなり整った容姿をしていると私は思う」


 うんうん。

 アイネさんはとっても美人さんなんだ。

 見た目だけじゃなくて心も美しい自慢のお嫁さんなんだよ。


 他の人が居るのでここでは口には出せないけれども、ヒューエイアさんが言ったことに全面的に同意しつつ、何度見ても飽きないその肢体につい僕も目が行ってしまう。


「ぁぅ……ル、ルナさん……そんなに、見つめられると……」


「……今日も綺麗ですよ、アイネさん……」


「ユ……ルナさん……」


「…………うへぇ、また始まったッス……勘弁してほしいッスよ……」


 おっと、いけないいけない。

 照れるアイネさんが可愛らしくて、つい見つめ合ってしまった。


「ヒューっち……見ての通りッスよ。アタシも胸以外じゃ勝てないくらいの美人な2人ッスけど、手を出すには手遅れだから諦めるッス……」


「いや、私はただ事実を述べただけで……ふむ? 手を出すとは……ああ、最近は女同士の『そういう』関係もあるんだったね。若いとは良いものだな」


「そうッスよー? このふたりなんていつでもどこでもイチャイチャしてるんスから……はぁ、アタシにもいい人できないッスかねぇ……? チラッ」


「……ミリリアさんのご多幸をお祈りしております」


「お祈りされちゃったッス……ガックシ……」


 なんだかウインクを飛ばしてくるピンクのちびっ子を無視して、僕はいそいそと訓練着を身に着けていく。

 そんな僕の隣では、アイネさんが顔を赤くしながらモジモジとしていた。可愛い。


「ちょ、ちょっとミリリアッ……いつでもどこでもなんてことは……」


「ニッシッシ……イチャイチャしてることは否定しないんスねぇ?」


「ほ、ほらお二人共……そろそろ着替えを進めないと……」


 ニヤリとするミリリアさんの矛先が僕に向く前に2人を急かした僕は……ふと会話の流れが自然だったせいで気になることをスルーしてたことに気がついた。


「そういえば……ヒューエイアさんは、その……僕とアイネさんの関係を分かってくれているのですね……?」


「関係……ああ、そうだね、これでも徒人の世に出て長いからね。ただ……私『は』という君の言葉には、どういう意味があるのかな?」


「あっ、ええと……それは……」


 もちろん、エルシーユさんと比べてということだけれども……聞いて良いものなのか迷ってしまった。


 エルシーユさんの年齢考察の話の続きではないけれど、僕はもう少し輝光樹族という人々について知るべきだと思っている。

 知ることができれば、女の子同士の恋人関係というものを『分かってくれない』側であるエルシーユさんへの説得の(いとぐち)やその方法が考えられるのでは……という期待感があるからだ。


 しかし、種族固有の特徴を指して悪く言う(つもりはないが)ことはこの世界においては最低のマナー違反だ。

 『エルシーユさんが分かってくれないんですけれど、それは貴女がたの種族の特徴……精神性の問題ですか?』とは聞けないのである。


 ヒューエイアさんという種族の中でも特別年長な人が身近に現れて、このことはチャンスとも思っているのだけれど……難しいなぁ。


『ルナリアさんっ、着替えてきたわっ! ヒュー様っ、いきましょっ!』


『ああ、分かったからそう急かさないでくれ……。ルナリア君、いいかい?』


『ええ……お話はまた今度にしましょう』


 結局、僕が聞きあぐねているうちにエルシーユさんが突撃してきて、話は持ち越しになってしまった。


 なんとかしないとだめなのに、ここのところはずっとこうだなぁ……なんて思いつつ、着替え終わったマリアナさんとも合流してグラウンドに向かうのだった。



ミリリアちゃん、お祈りされるの巻


お読みいただき、ありがとうございます。

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