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000.プロローグ~闇夜の雲に隠れた月が姿を現すように~

初投稿です。よろしくお願いいたします。

趣味・嗜好・性癖の全てをこねくり回し、この作品をお届けいたします。

あなたの性なる心の壁に、「サクッ」という音を響かせられるよう頑張りますので、どうぞお付き合いください。


 王国歴725年、大樹の月(4月)上旬。


「……貴女、何か隠しているでしょうっ!? 私の『眼』は誤魔化せません! 隠すようなやましいことがあるなら、今すぐこの学院から立ち去りなさいっ!」


 ――私はこの時、口にした言葉を、生涯後悔し続けるだろう。


 ここはセンツステル王立輝光士(きこうし)女学院の正面口。

 色とりどりの花が咲き誇る学院自慢の庭園を抜けた先、寮から登校してきた学院生で賑わう、往来のど真ん中。


 私は、王国はローゼリア伯爵家の次女。

 アイネシア・フォン・ロゼーリア。


 そして私の目の前には、『今日から学院に編入してくるから』と出迎えを申し付けられた、その相手である『女学生』がひとり。

 『女性』としては背が高く、全体的に線が細いのに出るところは出ていて、羨ましいほどスタイルが良さそう。


 ただ、どこにでもいるようなくすんだ暗い金色の長髪と同じ色の瞳、印象に残らないような平凡な顔立ちは、私の『眼』にはなぜか“ボヤケて”見えていた。


「大変申し訳ございません。あまり目立ちなくなかったもので……」


 ほんの一瞬、どこか辛そうな表情を浮かべた『彼女』は、すぐにその表情を困ったような笑みに変えると、こちらに注目している学院生たちを見ながらそう言った。


「(いや貴女、十分目立っていたでしょう……)」


 そう、『彼女』は私が『このコが編入生ね』とすぐに分かるほど、十分目立っていた。


 学院の制服を来ていて学院の外から来た人物というのもそうだけど、『彼女』の横……というか足元には、『彼女』と一緒に歩いてきたかのような猫が、しかも珍しい黒猫がいて、しかもこの黒猫が先程から、


「ほれ、(わらわ)も言うたであろう。お主が目立たぬなど有り得ぬと。悪あがきなど無駄じゃ無駄」


 人の言葉を話すのよね……。

 しかもどこか尊大な口調で。


「誰のせいだ誰のっ……あ、いえ、大変失礼いたしました。お騒がせしてしまい申し訳ございません。今、元に戻しますね」


 淑女らしくない口調で足元に向かって叫んでいた『彼女』は、ふと我に返ったように私と周りの学院生たちに頭を下げたが、口にした言葉の意味が分からなかった。


「元に戻す? 何かしら……輝光術(きこうじゅつ)で姿を変えているというの?」


 そんな術は聞いたこともないけれど……。


「ええ、これで――」


 『彼女』は右手に白く淡い光を纏うと、顔の前から髪を振り払うかのように動かす。


「――っ……!?」


 変化は劇的。

 淡い光が剥がれ落ちるように、あるいは闇夜の雲に隠れた月が姿を現すように、『彼女』は姿を変えていった。


 ――私はその光景を、その時の胸の高鳴りを、生涯忘れることはないだろう。


 湖に映った月を思わせる、淡く透き通った白銀の双眸。

 整ったという言葉の範囲には収まらない、ただただ美しい曲線を描く顔立ち。

 ほんのりと桜色に(なま)めく唇。


 そして何よりも美しいのは、陽光を受けて淡く輝く白い長髪。

 銀に近い髪の色なら世の中にはありふれているが、これほど美しい純白を、私は見たことがなかった。


「――良いでしょうか?」


 ――地上に月の女神が舞い降りた。


 その場にいた誰もがそう思っただろう。


「改めまして、私『が』、ルナリア・シール・ホワイライトと申します。よろしくお願いいたします、アイネさん」


 ――これが、後に1000年以上もの時を共に歩むことになる、私の愛する『旦那様』との出会い……いえ、再会だった。



お読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「性癖に刺さった(刺さりそう)」「おもしろかった」「続きはよ」と思っていただけたのでしたら、『ブックマークに追加』『ポイント評価』等をよろしくお願いいたします。


次回、「星導者の帰還~月と猫と影の従者~」

※連載開始記念として10日間連続2話投稿いたします。ぜひフォローください。

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