コント「サイコパス勇者」
魔王「よぉし、トラップの設置も完了したし、いつでも勇者を迎え撃てるぞ! とくにこの玉座の前に設置した落とし穴は絶対に役に立つ! 勇者を奈落の底に突き落としてや――
勇者「うえええええええええええん!」
魔王「え⁉ 勇者⁉ なんで泣いてるの⁉ 一人でここまで来たの⁉」
勇者「うえええええええええええん!」
魔王「泣いてたら何も分からないよ! この魔王でよければ話を聞くからさ、何があったか話してごらん」
勇者「僧侶にフラれたあああああああ!」
魔王「そうか、失恋したんだね?! 失恋した勢いでここまで来たのかな?!」
勇者「俺がぁ、五股したらぁ、付き合いきれないって言われてフラれたぁ!」
魔王「そんなのフラれて当然だよ⁉ 五股とか正気の沙汰じゃないよ⁉」
勇者「だってハーレムって普通じゃん! うわあああああああああああん!」
魔王「それはフィクションの話だよ⁉ 実際にやったら愛想つかされるよ!」
勇者「ひっぐ……えっぐ……あとぉ……戦士にも絶縁されたぁ!」
魔王「一応聞いてみようかな。戦士君には何をしたのかな?」
勇者「一本だけ乳首に生えてる長いパイ毛引っこ抜いたぁ!」
魔王「怒られるよ! そんなのやったら怒られるに決まってるよ!」
勇者「あと、すね毛全部ガムテープではがしたぁ!」
魔王「ええええええええ⁉ 頭おかしくない⁉ それでよく絶縁ですんだね⁉」
勇者「髪の毛も引っこ抜いて人工O字禿にしたぁ!」
魔王「鬼畜の所業だよ⁉ 普通だったら殺されてもおかしくないよ⁉ てか、大切な仲間に何してんの⁉」
勇者「旅にユーモアも必要かなって……うえええええええん!」
魔王「勇者君の言うユーモアが分からないよ!」
勇者「それとぉ賢者にぃ……ひっぐ……うぐっ……ぜってー殺す。賢者の野郎マジ殺す」
魔王「急に素のテンションに戻らないでくれる⁉ 怖いんだけど?!」
勇者「あーマジで賢者殺してぇ。魔王の次に殺してぇ」
魔王「本人が目の前にいるのに物騒なこと言わないでくれる?!」
ぴりりりりりりりりり!
勇者「あっ、スマホに着信だ」
魔王「はい世界観壊れた! いきなりスマホ出しましたよ!」
勇者「もしもし? あっ、僧侶? わりぃけど、ちょっと魔王城来てくんね? なるはやで、しくよろ」
魔王「軽っ! 僧侶ちゃんの扱い軽っ!」
勇者「だから……言ってんじゃん。この間の女は遊びだって、マジ。本命はお前だけだから、信じろよ、マジ」
魔王「うわぁ……コイツクズだわぁ。全力でクズな人生歩んでるクソ野郎だわぁ」
勇者「だからちげーって……待てよっ、ちょ……待て――うわああああああん! やっぱりフラれたあああああああああ!」
魔王「フラれて当然だよ! てか、テンションの切り替え早すぎて怖いんだけど⁉」
ぴりりりりりりりりり!
勇者「あっ、今度は戦士だ。おい! お前なんで魔王城来ねーの⁉ マジしらけんだけど⁉ しり毛全部引っこ抜いたのまだ根に持ってんの⁉」
魔王「勇者君は親を戦士に殺されたりとかしたのかな⁉」
勇者「だからあれはタダの冗談だって! マジで――まっ……やっぱり絶縁されたああああああああ!」
魔王「もう突っ込む気も失せたよ。どうせ次は賢者から電話がかかってくるんだろ?」
ぴりりりりりりりりり!
勇者「はいお電話ありがとうございます。賢者様、ご無沙汰しております(ぺこぺこ」
魔王「え⁉ 急に態度変わったよ⁉ なんで⁉」
勇者「ええ、はい。僧侶さんと、戦士さんの件については行き違いがあったというか、ご面倒をおかけして誠に……いえ……決してそのような……申し訳ございませんでしたあああああああ(土下座」
魔王「電話しながら土下座したよこの人」
勇者「後生ですから! あともう一度チャンスをください! さすれば必ずあのクソ魔王を惨殺して一族郎党皆殺しにしてご覧に入れますからっ!」
魔王「勇者が失敗した悪の幹部みたいなこと言い始めた」
勇者「はい……はい、必ず! ですから……ちっ、切りやがった。ぜってぇ許さねぇからな! このクソ賢者! ぺっぺっ!」
魔王「あの……人の部屋でつば吐くの止めてもらえません?」
勇者「あっ、今の話聞いてたっしょ? 今から賢者がここくっから、テキトーにだべってて。したら俺、後ろから賢者の野郎を刺し殺すから」
魔王「俺が協力するのは前提条件なんですね」
勇者「んじゃ、そんな感じで。しくよろー!」
部屋から勇者が出て行こうとすると――ガッターん!
勇者「うわああああああああああ!」
魔王「よっ……良かった……トラップが役に立った。一度この落とし穴に落ちたら容易には脱出できないぞ。これでもうあの面倒な勇者と関わらなくてすむ――
勇者「魔王おおおおおおおおおおおおお!」
魔王「うわぁ! なんだ⁉」
勇者「なんかここすっげー居心地良いから、しばらく住むことにするわ! しくよろー!」
魔王「えええええええええええ⁉」