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6話 新パーティの旅立ち

 

 エルフの村に来て、一週間が経過していた。いや、名残惜しいんだけど……そろそろ出立しなきゃなぁ。まじでここに骨を埋める羽目になる。そこまでする気はさらさらない。


「と、いうことで、俺そろそろ出るわ」


 寝たあとでエラに話を切り出した。


「そんなぁ!私たちを見捨てる気か?」


 エラがシーツを握りしめて、うるんだ目で俺を見る。だからその目は反則だって。なんでも言うこと聞いちゃいそうになるから。


「いやもともとそういう約束だったし……このままずるずるってのもなんか違うだろ」


「じゃあ私たちも連れて行ってくれ」


「いやいやとてもじゃないがお前ら全員を連れて歩くなんてできない。俺にそこまでの甲斐性ないぞ!?」


 またまたこのお嬢さんは無茶をおっしゃる。賢そうに見えて実は馬鹿なのかな……?


「全員って意味じゃない。私たち双子を連れて行ってほしいんだ」


「なんだ、そういうことか」


 まあそれなら考えんこともない。二人には世話になったし、情も沸いてきたしな……。それに、エルフって魔力とかすごいらしいし、少なくともあの4馬鹿よりは役に立ちそうだ。


「でもお前ら街は怖くていやなんじゃないっけ?」


「そこは、ホラ。旦那様が守ってくれるだろ?」


 またあの目だ。ずるいって……。


「ま、まあお前らがいいなら俺はかまわんけどな……」


「ホントか!?よかった。さっそく準備してくる!」


 エラは裸のままベッドを抜け出し、部屋を出ていった。


「じゃあ俺もレグを引き取りに行って、出る準備するか」


 俺は服を着て隣の家へ向かった。



          ◆



 隣の家には歳をとったエルフが一人で住んでいた。歳をとったといっても見た目には40くらいだ。それもかなり若々しくて綺麗。ただエルフの年齢は見た目とは違うからな。たぶん100は超えてるばあさんだろう。


「レグ引き取りにきましたー!」


「ああ、あんたかい?うちの村の若い連中をたぶらかした色男ってのは?」


 いや人聞き悪いな……。年配のエルフたちからは印象悪いのか?


「こんな小さな子供ほったらかして女遊びたぁロクな男じゃないねあんたの父さんは」


 老婆がレグに向かって言う。もうこいつのことは老婆と呼ぶことにする。ロクなもんじゃないのはあんたの村の若いエルフたちのほうだよ……。


「お世話になりました……」


 でもまあお礼はちゃんと言う。


「ありがとうございました」


「ありがとう」


 ――俺に続けてレグが喋った。


「お前喋れたの!?」


「ああ、私が教えたんだよ。この子賢くて、スポンジみたいに吸収してねぇ……」


 おばさんが言う。老婆からおばさんに格上げだ。うちの子に言葉を教えてくれてたなんて……。感激だ。


「ぱぱー」


「ははは、パパはやめてくれ。アウルスだよ。アウルス。ほら、言ってごらん」


「あううす?あううす!」


 レグはうれしそうに俺の名を口にする。可愛い。


「それじゃあ、いこうか」


 俺はもう一度丁寧にお礼をいい、その場を後にした。



          ◆



 エラとエルの家に帰ると、村中のエルフが集まっていた。みんなで見送ってくれるみたいだ。中には名残惜しそうに涙を流しているものもいる。まあいろいろあったからなぁ。俺も寂しいよ。


「お前ら、準備はいいか?」


「ああ、必要なものは全部持った」


 俺たちは馬車に荷物を詰め込む。馬車といっても馬じゃない。ここらへんに生息している、ソルラドと呼ばれる、ラプトルのような動物だ。馬よりいくらか足が速く、エルフはみなこれに乗るらしい。


 エルフたちがお土産にいろいろ持たせてくれた。例のエルフ酒とか、パンとかスープとか。


「みんな、世話になったな。本当に、いろいろ楽しかったよ」


 俺は一人ずつに言葉をかけ、握手し、抱擁を交わし、別れを告げてまわった。


「お前たちも、本当についてくるんだな?」


「ああ、もちろん」


 俺はエラとエルに再三確認する。仲間を増やすときは慎重にならざるを得ない。なんてったって前回はとんでもない失敗だったからなぁ。


「もしお前らが無能だと判断したら、俺はお前たちを容赦なく置いていく。俺は別にお前らと結婚するわけでもないし、守りこそするが、養ってやるわけじゃない。ちゃんと自分の飯の分の働きはしてもらうからな」


 こいつらが足手まといにならないように、念を押しておく。もう面倒事はごめんだ。


「ええ、それで構わないわ」


 なぜかエラはにこにこだ。エルも、エラが総意だとばかりに何も喋らずににこにこしている。不気味だ。


「よし!それじゃあ、まぁ……出発だ」


 俺がソルラドにまたがり、合図をすると、みんなが一斉に手を奇妙な形にした。どうやらそれがエルフなりの別れの合図らしかった。


「長寿と繁栄を」


 エルフたちが声を揃えて言った。お前たちはバ〇カン人かよ……。


「ちょ……長寿と繁栄を」



          ◆



 俺たちはソルラドに乗って草原を突っ切っていた。エラが俺の横のソルラドにまたがり、残りの二人は後ろの馬車に乗っている。目指すは当初の目的地であったパローマだ。


「にしても……。まじで森を出てよかったのかよ……?」


 こいつらがついて来たのが、いまだに信じられない。保守的なエルフが人里に降りるなんて、どういった心境の変化だろう。


「いいに決まってるじゃないか。私たちはそうまでして、君といっしょにいることを選んだんだから。もっと誇りに思ってくれ」


 まじでそれだけの理由なのか……。まあ俺も捨てたもんじゃないってことだな。


 これはさっき確認したことだが、エラは攻撃系の魔法が得意らしく、エルは回復系と戦闘面でも隙の無い姉妹だった。まあ俺としてはあいつらより数百倍いい仲間が手に入ったわけだし、よろこばしいことだ。


「惚れただけでそこまで考えを変えるなんて、エルフってのはみんなそうなのか?」


「まあ、エルフは昔から恋多き種族ともいうしな……。それに、君の筋肉が魅力的なのが悪いんだぞ」


 いやそれ絶対エルフ酒のせいだろ……。



          ◆



 パローマまではまだまだあるので、俺たちは何日か草原で野宿しなくてはならない。盗賊に襲われないように、大きな岩陰にテントを張る。木の枝を拾ってきて、火を起こす。ここらで木が生えた場所は少ないから、見つけるのが大変だ。


 草原にはオオイノシシが生息していて、俺はそれを狩ってきた。狩は男の仕事だ。


「なぁお前ら本当に肉食わねえのか?」


「ああ、エルフは絶対に肉は食わない」


 姉妹は村から持ってきたパンやスープを食した。俺とレグはもちろんイノシシを食べる。キャンプの火で焼いた肉はうめえ!


「こんなにうまいのに、もったいない。なあ、レグ」


「うまいー!」


 俺たちが肉を歯で嚙みちぎると、姉妹は露骨に嫌な顔をした。


「よくそんな気持ちの悪いものを食えるな……」


 エルも無言でうなずく。


「いやいや、普通だから。人間にとっては」


 俺たちでいう、ゲテモノ料理を食ってる変人を見る感じかな?まあとにかく、そんな目で見られてはおいしい肉もなんだか喉を通らない。


 食事の後も、談笑は続いた。途中でレグが疲れて寝てしまったので、テントに運んだ。テントは二つあって、俺とレグ、エラとエルに分かれて寝るつもりだった。


 だけどまぁ、レグはぐっすり寝てしまったわけだし、今日も俺は姉妹と肌を重ねるつもりだ。


 その日もエルフ酒を飲んだから、ぜんぜん疲れなかった。


 まあ記憶はいくらか飛んだけど……。



          ◆



 そうやって野宿を繰り返しているうちに、パローマに着いた。


 パローマは文化と芸術の中心地だ。工芸や興行もさかんで、俺のお気に入り都市のひとつ。


「とりあえず、宿をとるか」


 街の入口近くに宿をとる。そうしておけば、もしあいつらに出くわしても、さっさと逃げることができるだろう。


「あいつら……俺が死んだと思ってるかな?」


「あいつらって……だれです?」


 口を開いたのはエラではなく珍しくエルのほうだ。


「実は俺はとある組織に追われている身でな……。もしも捕まったら殺されるかもしれないんだ……。だからあまり目立っちゃだめだぞ」


 俺はかっこつけて言った。目立つなといっても、こんな美人二人を連れていたら、嫌でも目立っちゃうけどな……。


「はいです!」


 エルが元気よく返事をする。この()、騙されやすそうだな……。俺がちゃんと守ってやらないと。


 こうして、俺の新パーティは4人になった。



――続く。

まずはこの小説に興味を持っていただき感謝します!

そして実際に読んでくださった方、本当にありがとうございました。

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