5話
この国の王子ユークリス・アレンティウスは1年の頃は登校していなかった。
その理由は、本人自身に問題があったからだ。
王子はあまり友好的な人柄ではない。寡黙で内気であり自室に引き篭っていたので登校出来なかったのだ。まるで前世の私みたいである。
でも将来この国を任される身としていつまでも引き篭もっているわけにもいかないので、無理矢理外に出されたという感じだ。
そして今学期2年からの登校になる。そんな王子は何と私と同じクラスであった。
前の席に座っている姿を見た瞬間、私の冷や汗がドバッと出てしまった。
私がゲームの中でのヒロインだから必然的に攻略キャラと出会ってしまう運命なのか、そのフラグをへし折らなければならない。
授業中はずっとその事でいっぱいだった。
今はお昼時、学食の場である。
私はため息を吐きながらオムライスの中に入っていたグリンピースをスプーンで突いている。
ここの学食のオムライスは絶品なのだ、ソースはデミグラスで卵はふわっ、とろっであり、バターライスも味付けがしっかりとしている。唯一残念なのはグリンピースが入っている事だ。これは邪道である。
「お嬢様、いくらグリンピースが苦手だからといって突くのはどうかと思いますよ。他の方の目もあるのですからお行儀が悪い事は控えてください。」
キリアがもっともな事を言ってくる。
「わかったわよ。」
お行儀が悪い事をしている自覚はあるが私は憂鬱で仕方がないのだ。
「ユリシア様、元気ないっすね。どうされたんですか?何時もならグリンピースは綺麗に避けるか、キリアの器に移すかしていたのに今日は突くだけって。」
キリアの隣に座っているカイルが不思議がって聞いてくる。
「それがね、王子が同じクラスだと知った途端にこの調子なのよ?普通なら喜ぶじゃない?」
「へー、将来玉の輿狙えるじゃないっすか。まだ顔は拝見していないですが、イケメンという噂もありますし、お嬢様方喜ぶんじゃないっすか?他所のお嬢様と一緒に王子を狙ってみてはいかがです?」
カイルが面白がって聞いてくる。
「私はいいわ。好みじゃないし。」
「え、マリアナ好きじゃないの?」
ゲームではマリアナはユークリスが好きであった。
好きであったからこそ悪役令嬢になったのだ。なのに好みじゃないときた。
「顔はカッコいいけどねー、あの暗い感じが好きじゃないわ。いくら王子といっても内面が良くないとダメよ。しかも引きこもりで面倒臭いじゃない。その点、キリアは顔も性格もいいじゃない。狙っちゃおうかな?」
マリアナはキリアに笑顔を向ける。
「私を引き合いに出さないで下さい。」
黙々とご飯を食べていたキリアがマリアナに顔を向ける。
「私はどうかしら?好みのタイプ?」
「ちょっと、マリアナっ駄目よ!キリアは渡せないから!」
私は立ち上がり叫ぶ。みんなの目線が私を向く。
「失礼しましたー。」
私は大人しく座り直す。穴があったら入りたい。キリアまでびっくりしてこっちの顔を見ている。
「冗談よ、あなたの大事な人は取りませんよ。」
マリアナがこちらを見て笑っている。大爆笑したいのだろう、マリアナもカイルも肩を凄い振るわせている。
今すぐ大きな穴を掘って潜り込みたいぐらいに恥ずかしい。
「ご馳走様でした!私先に教室戻るから、後片付け宜しくね。」
グリンピースだけを残し私は脱兎の如くこの場から逃げた。
お久しぶりです。
長らく放置していました……orz
読んで下さっている方々はお元気でしょうか?
私は何とか日々生活しております。
今後も投稿の間があくでしょうが、少しでも誰かの目にとまっていただけると嬉しいです。