弘子との出会い
「お前は……誰だ?」
ヤマギシは彼女をつま先からぴょこんとはねているくせ毛の先まで見つめた。
「わたしは弘子。あなたがこの世界から出られるように手助けしにきたわ。」
「この世界から出る?何を言ってるんだよ。」
笑いながら応えた。
「そう、疑うのね。それじゃ、あそこ。みてくれる?」
ヤマギシは疑惑の表情を浮かべながら視線をそちらに向けた。
そこにはさきほどマスクの件で注意したばかりの生徒がいた。不思議なことに動いていない。
「おい、どうした?なんで動かないんだ?」
反応がない。
「どういうことだ?」
「気づいたでしょ?ここの世界は確かにあなたの理想の世界」
「……のはずだったの。」
「でもあなたの精神が不安定だったから、悪の秘密結社・せたまふさせたまふ団があなたの世界に入り込んでしまってかたっぱしから悪さをしているのよ。」
「そんなの僕はどうしたらいいんだよ……」と弱腰のヤマギシ。
「思い出しなさいよ!あなたはなんの教員なのよ!」
「物理……だけど、それがなんの関係があるんだ?」
すると弘子はニッと笑って手を差し伸べた。
「ん!」
「ん?」
「どうしたのよ、手を繋ぐのよ。早くしなさいよぉ!」
ヤマギシは少し照れながら弘子と手を繋いだ。
すると驚くことにまばゆい光が目の前にあふれでた。