出会いときっかけ
「マスクつけてね」
静かな教室に俺の声が響き渡る。
俺はヤマギシ。しがない高校教員だ。俺はここでいくつもの生徒に物理を教えてきた。だが気になることが一つだけ。ここのところ生徒の様子がおかしい。
このご時世だからマスクをつけてと上司からのお達しがあり、その指導も念入りに行っている。
そしてまたあの生徒がマスクを外している。しかも俺の方を見てクスクスと笑っているようだ。なんだ?
何がおかしいんだ?とりあえず注意しとくか。
「マスクつけてね」
静かな教室に俺の声が響き渡る。またクスクス笑いが起こる。
昼休みを楽しむ生徒たちの雑踏に紛れ俺は個室でため息をついた。
「俺は何をやってるんだろう。」
真面目に指導をしているつもりなのにどうして生徒に笑われなければいけないのだろうか。
そう深く考え込んでいると、自然とまぶたが下りてきてしまった。
キーンコーンカーンコーン。チャイムに起こされた。
「午後も授業かぁ。」
そう思うと憂鬱な気持ちでいっぱいになった。
手を洗い、扉を開けると、そこはいつもと違う雰囲気の漂う廊下であった。
「ここは、どこだ?」
「ここはあなたが作り出したあなたのための理想の世界よ。」
とワイルドな女声が聞こえてきた。