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fallen  作者: 流転
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「そうだ、戦争が終わったから王国兵の討伐隊が組まれる前にライザに会いに行かないと」


僕がそのことを思い出したのは、ミーシャの成長ぶりを実感して少し経った後だった。戦場ではライザは僕の事を友と呼んでくれた。互いに利用しあっている関係のはずの僕らだが、ライザに人間の心を教えるうちに、いつしか大切な友となっていたのだ。僕はいつもの森の中に作られた石造りの墓に向かうと、もうそこには既にライザがおり、墓に向けて祈っていた。僕も無言でライザの横にしゃがみ込み、墓に向けて祈る。


「・・・リュー、キテイタのか」

「うん、もう戦争も終わったしね。それで気になったこともあってここにやってきたんだ」

「キにナッタこと?」

「うん、まずは戦場で僕の事を友って呼んでくれたこと。ライザの心境にも変化があったの?」

「・・・ソウだな、ワレもカワッタ。ワレのムラもカッキヅイタ」

「村・・・僕が前に命を奪ってしまったガル達が住んでいた村だよね?その、変化と言うのは?」


思わず僕は気になって話を深堀してしまう。根掘り葉掘り聞くというのは相手に良い印象を与えないし、危険ではあるがそれでも聞かずにはいられなかった。はたしてライザはこう答える。


「ナカマが、ワレのコトをカンゲイシテくれたのだ」

「・・・!そんなことが」


そう言ったライザの顔には笑顔が見れた。初期の頃のライザは笑顔というものを見せなかった。いや、笑顔だけではない。厳しい野生の世界を生き抜くのに必死で、喜怒哀楽と言う感情を持ち合わせていなかったのだから致し方あるまい。だが今では随分と表情豊かになり、リグウェルさんも驚いていた。それに何より驚くべきはライザ自身の変化もさることながら、やはり何と言っても周りの変化であろう。ライザの話を聞くうちに、僕の笑顔も増えていく。


(群れから村になって、しまいには仲間か。いいことだな・・・)


ライザの成長は僕の成長でもある。成長と言うのは強くなればそれでいいというものではない。結局一人では出来ることなど限られているのだから。そして気持ちだけが先走って、一人で突っ走ってもそれは無謀というものだから。


「ライザは良い仲間を持ったね。もう村のガル達はただの村民じゃないよ、ライザの良き理解者だ。これで僕の任務は終わり。ライザに人間の心を教えるのは終わったし、もう僕がいなくってもライザの村は繁栄を続けていくよ」

「・・・エ?」

「それでライザ、僕の事はどうするのかな?やっぱり仲間の仇だから殺すの?」

「チョットマテ、リューよ!ワレとリューはトモでアロウ!?ナゼそんなコトをイウのだ!?・・・ン?リュー?」


取り乱すライザを見て僕はニンマリと笑う。僕の悪い笑顔を見て、ライザが全てを察するが時すでに遅し。


(友、友、ライザと友だ!改めて言われると感慨深いなぁ)


「・・・リューよ、ワレをカラカッタな?」

「そうだよ?人間の心は複雑だからね。ずけずけと本心を露にするライザが悪いんだよ」

「ヌゥ、コザカシイマネを」


魔族の皆の時とも感じたバカ騒ぎの楽しさ。それは戦争という非日常から離れた今だからこそ改めて実感できるものだ。いつ死ぬか分からない世界だからこそ、こんな他人から見れば無駄とも言える時間でさえもかけがえのない宝物なのだ。


「あー、ライザをからかうのは楽しいなぁ。そういえば、もう一個気になっていたことがあったんだよね」

「ナンダ?」

「王国の魔導士たちは体の中に魔物が持つ魔法器官を取り入れてたよね?イスファ=リアも実験体にされていたようだけど、もしかしてライザも実験体にされていたんじゃないの?」

「・・・ハナサナイとイケナイか」


ライザは暫し沈黙した後、渋々ながら口を開く。そしてライザは過去の事を話す。それは概ね僕が予想していた通りのこと。ライザもイスファ=リアも昔は王国の実験体になっていた。ライザは白ローブの集団の実験に付き合わされていくうちに、次第に人間に興味を抱いたという。そしてその時に簡単な人間の言葉も覚えた。ライザは己の弱さを嘆き、人間に見つからないように部落を作り、人間に負けないように力をつけたのだ。


「ずっと不思議だったんだよ。ライザは魔物なのに魔力の色が綺麗な緑色だったから。イスファ=リアも僕の腕を食べて青色の魔力になったけど、それまではどうしていたんだろう、って。それで王国の実験の事を知り、もしかしたらライザはイスファ=リアと似た境遇にいたんじゃないかって思ったんだ」

「ソウダナ、シセツにイタトキはカリなどデキナカッタからな」

「白ローブの集団が憎くはないの?他でもないライザ自身が傷つけられたんだよ?王国の魔導士たちが憎くはないの?ライザの実験の末に彼らは強くなったんだよ?」

「ニククないとイエばウソになる。だがワレはフクシュウだけがイキカタではないとシッタからな」

「・・・」


ライザは変わった。その変化は群れの王でありながらひたすらに強さを求め、そして人間の事を知ろうとする貪欲さから、大切なモノを知り、それを守りたいと願う誠実さに変わったのだ。ライザは僕の友だ、だからこそ僕はライザに渡すべきものがある。


「ライザ。腕を出して」

「コウか?」

「はい、僕からのプレゼント。ライザの魔力の色にピッタリのブレスレットでしょ?」

「・・・!」

「いつか渡そうと思っていたんだけど、僕の事を友と認めてくれたから。ありがとう、ライザとの出会いは僕の人生を変えたよ」

「ソレはワレもだな」


そこから長い、長い話をした。取り留めもない話でありながら、無限に話していられる様なそんな話。木々の隙間から太陽が差し込み、僕とライザのブレスレットを照らし出していた。

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