67
「それで、結局リュー君は何をしに来たんだい?娘に会いに来たのかい?まぁリフィーアは可愛いからねぇ、無理もない」
「ちょっと父さん!」
一通り無駄話を終えた後、ラティムさんは思い出したように僕に、この洞窟を訪れた理由を聞く。若干リフィーアさんを持ち上げながら。リフィーアさんは驚いてラティムさんを叱りつけ、魔族の皆がそのやり取りを見て笑う。僕も自然と笑みが零れる。まるでそこには種族の壁などないかのようで暫く笑い声が洞窟内に反響する。場が静まってから僕は照れ臭そうに目的を答える。
「リフィーアさんに会いに来たってよりは魔族皆に、ですかね。それに前回来たときはラティムさんがいなかったので今回は会えたらいいなぁ、位の気持ち出来ました」
「僕はおまけかい!?」
「なにそれ、リューらしいわね」
再び僕らは笑いの渦に包まれる。でも実際、ラティムさんとリフィーア、魔族の皆に会えてよかった。僕の知らない所でいなくなられると、僕は塞ぎ込んでしまうだろう。ましてやそれが自分が心を許した人なら猶更だ。恥ずかしい気持ちもあるけど、自分の気持ちは言える時に行っとかないとね。
「ラティムさん、リフィーア、それに魔族の皆。また会えてよかったです」
「・・・いやぁ、直に言われると嬉しいねぇ」
「・・・珍種のリューでもそう言う事言えるのね」
その後僕はヌーラの火酒をラティムさんとリフィーア、それに魔族の皆と飲んだ。ラティムさんは前におじいちゃんの家で飲んでいたから分かったけど、基本的に魔族というのは酒に強いらしい。彼らのペースについて行こうとした僕はあっという間に自分を制御できなくなる。
「うぉー、いいぞリュー!」
「飲みほせぇ、お前ならやれるぞ!」
そんな掛け声を浴びながらヌーラの火酒を浴びるように飲んだところまでは覚えている。だがそのあとがどうしても思い出せず、なぜかひどい頭痛に襲われながら僕は今魔族の皆と先代魔王達の墓に祈っている。
「リュー君、辛いのなら寝ていてもよかったんだよ?」
「本当よ、リューひどい顔してるわよ」
「大丈夫、です・・・。多分。それにみんなが祈っている間に僕だけ寝ているなんて悪いですから」
強がりを言いながら会ったこともない先代魔王達の墓に片手を向ける。魔族に敬意を払う事を忘れたら、きっと僕は王都の群衆のようになるだろう。自分は魔族を追放した張本人ではないという言い訳は、僕は出来ない。ラティムさんは気にしすぎだと言うだろうけど、僕は魔族の事を知ってしまったから。過去に人間に追放されたにもかかわらず、懸命に生きてきたことを見てしまったから。魔族たちの家族の輪に触れてしまったから。
「なんでおじいちゃんといい、パテンさんといい、魔族の皆といい、僕の周りは酒に強い人ばかりなんだろう・・・」
魔族の皆に見送られて洞窟を後にし、僕は一人愚痴りながら森の中を歩く。そういえば独り言などいつぶりだろうか。そう考え口元が綻ぶ。僕にとって大事な人が増え、僕の世界が確かに広がっているという実感が湧いたからだ。




