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「おじいちゃん、王都はまた変わったんだ。王都の人たちは恐怖に怯えながら狂気に支配されている、そんな感じがしたよ。騎士団と冒険者の遠征もあったけど、魔族の皆もそしてライザも無事だったよ。あ、ライザっていうのは前に話した珍しい魔物の事で・・・魔力持ちを殺さないなんてライザも変わってるよね。そういえば今日もヌーラの火酒を持ってきたんだけど、どうやら僕この酒にはまっちゃったみたい。おじいちゃんもこの酒好きだよね?折角だから語ろうよ」
僕は再びおじいちゃんの墓の前に来ていた。王都での忙しい日々も一区切りついたところだ。今ならおじいちゃんの所に帰れるかもしれないと思い、否王都の国民の意識というものが何か怖く感じて単に逃げてきただけなのかもしれない。どちらにしろ、僕は今おじいちゃんに報告をしている。
そのまま魔族の皆がいる洞窟へ向かう。騎士団と冒険者の遠征が終わった今ならラティムさんもいるだろう。道中の草原でティビとピィーを見かける。ワイバーンの襲撃で数を減らしたティビとピィーだが、今ではすっかり元通りだ。でも前と違うのは、僕に寄ってこないこと。世代が変わったのだ。動物は人間よりも早く寿命を迎える。それゆえに元通りになるのも早いけど、もうこの草原が僕の知っている草原じゃない気がして、少し寂しくなった。もうおじいちゃんもイスファ=リアも、僕の知るティビやピィーもいないのだ。時間というものは残酷に景色を変えていく。僕は急かされるように草原を後にした。
「やぁやぁ、リュー君じゃないか。元気にしてたかい?」
「それはこっちの台詞ですよラティムさん」
今回はすんなり洞窟に辿り着くことが出来た。洞窟の入り口には前回はいなかったラティムさんが見張り達と会話をしていたので、自然に話しかける。ラティムさんは前と変わらずで、目立った怪我などもなくそれが僕を安心させる。
「ラティムさん、騎士団と冒険者にはこの場所はバレていないですよね?」
「うん、大丈夫だよ」
「騎士団と冒険者が王都に帰ってきたので、危機は過ぎ去ったみたいですね。でも気を付けてください。今、王都全体の意識が魔族排斥に傾いているので・・・。出来ればラティムさんには大厄災が起きるその直前まで生きていて欲しいですし、魔族の皆も死んでほしくないですけど、厳しいですね・・・」
「・・・なかなか大変だねぇ」
「あらリューじゃない。前に会ったときは人間の中での魔族の印象を良くするためならなんだってするって言っていたのに、そんな様子じゃ最初から無理なんじゃないの?」
洞窟の奥からリフィーアがやってくる。リフィーアの言う事は一理あるけど、思い込みは可能性を減らすだけだ。
「リフィーアさん、やる前から無理と決めつけるのは良くないですよ。でも、本当に難しい問題ですよね。何かこう、人間の意識に干渉する魔法ってないのかな・・・」
「ちょっ、精神干渉の魔法は禁術なのよ。やめときなさい」
「でもリフィーア。勇者が召喚された時は精神干渉の魔法で勇者の行動をある程度操作するじゃないか。人間は禁術を結構使うよね、倫理観とかないのかな」
「ラティムさん、無駄ですよ。研究者にとって倫理観なんて探求心の前では大した価値はないんですから」
「へぇー怖いねぇー」
「・・・そもそもこれ何の話だっけ?」
そんな風に僕とラティムさんとリフィーアは駄弁り合う。王都の殺伐とした空気と違いこの洞窟は居心地がよく、ついつい無駄話をしてしまった。魔族の皆は家族同然だと言っていたが、もしかしたら僕もその中にいるのかもしれないと思えてしまうほどには、楽しいひと時だった。




