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「最近、騎士団と冒険者を森で見たわ。魔物を倒しているそうで、どうやら遠征は順調みたいね」
「いい事よ。これで安心して眠れるわね」
井戸端会議を繰り広げているおばちゃんたちの声量が心なしか大きく感じる。大厄災という不安が少しでも目に見える形で緩和されたのだ。それに対して僕の心の中は不安に染まる。そんな不安を拭うために僕は今日もライザに会う。
「リューよ、ワレのマホウはドウだ?」
「ライザ、出会ってすぐに訓練の結果を見せるんじゃなくて、まずは挨拶から始めましょう」
「ム・・・。リューがイウナラ・・・」
「それでライザ。騎士団と冒険者に見つかってないですか?生活は安全ですか?」
「ナンダリュー。イキナリシツモンをブツケテキテ」
「大事なことなんです。死というのはある日突然やってくるんですから」
「マァダイジョウブだ。ソレにワレはツヨイシナ」
「部族の皆は大丈夫ですか?毎日僕と練習していますけど、部族の皆の状況は把握していますか?部族から見たライザはどう映るのか、実際に聞いてみましたか?」
「イッタイドウシタとイウノダ。キョウのリューはナニかオカシイゾ」
「ライザ、部族の皆のことは大事にしてください。ライザの部族が危険に晒されないようにライザが守り切る、その覚悟をしてください。ライザの同胞を殺した僕が・・・、いや僕だからこそ言います。仲間の死に本気で怒りを覚えてください。ライザは人間になりたいのなら、言葉だけの部族の英雄ではなく、皆から慕われる本当の英雄になってください」
僕は今まで教えなかったことを今ライザに教える。僕の考えを変えてしまうほどには、僕はライザに依存しているのかもしれない。そんな僕の剣幕にライザは何も言えずにただ頷くのみだった。キョトンとしているライザの顔が珍しくて、僕は笑った。つられてライザも笑ったが、僕は英雄の笑い声にしては下品とライザをからかった。怒ったライザに対して素直に謝り、冷静になったあとで二人して簡易的な墓を見下ろした。ライザが亡くなったガル達の話を哀しげに語り始めた。僕はそれを黙って聞いていた。
ライザと別れて街に帰ってくると、まだおばちゃんたちが井戸端会議をしていた。いや、一人増えている。僕はその顔に見覚えがある。
「ふふーん!ミーシャはパワーアップしたのですよ!」
「あらあら頼もしいわぁ」
「若いっていいわねぇ。無限大の可能性があるのだから」
「ミーシャちゃんは元が弱いからパワーアップしてもあんまり意味がないんじゃないかな」
「あ!冒険者!というか元が弱いと決めつけるなと言ったはずです!」
「あーごめんごめん。うん、でも・・・成長しているようで何よりだよ」
僕はさりげなくその会話に入っていった。まるで死ぬ前に多くの思い出を残すように。緩やかに流れる日々の中に鮮明な記憶を刻み付けるように。




