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fallen  作者: 流転
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「おう八代、調子はどうだ?」


俺の気持ちが切り替わってから、源さんは俺のことを名前で呼んでくれるようになった。そのことがひどく嬉しくて、俺は努めて明るい口調で返事をする。


「ダメです、新しい情報は入ってきていません。でも必ず事件は解決してみせます」


リューが消えてから知らず知らずのうちに、俺はどこか人肌が恋しくなっていたのかもしれない。今まで冷静に考えることが出来ていなかったのかもしれない。自分の感情さえ客観的に見ることが出来ていなかったのかもしれない。思い出すのは俺を支えてくれた人々。だが今はやるべきことがある。彼らにもう一度会うのは、この事件を解決してからだ。


しかし情報が無ければ犯人像さえ浮かび上がらない。そんなことを考えていると事務所のテレビからアナウンサーの声が流れてきた。曰く、この近くで殺人事件が起きたということだ。単なる偶然かもしれないが、思わず俺と源さんは目を合わせる。


新しい情報、それは何も目撃者を見つけるだけではない。犯人とて人間、それならば何かしらのミスをする。例えば警察の手から逃れたと安心して再び犯罪を犯す、など。テレビに目を移し被害者を見る。中年女性で、犯行時刻には家で一人でいたようだ。強盗犯にとっては狙いやすい獲物と言えるだろう。あの事件とあまりにも状況が似ていた。


「八代、行くぞ。あの事件と関わりがあるかも知れねぇ」

「わかりました」


再び被害者を見やる。亡くなられた人はさぞかし無念だっただろう。しかし、五十嵐刑事の言葉が蘇る。無から正義は生まれない。被害者は必要な犠牲だったとは思えないし、ましてや被害者は運がなかったと宣うやつがいれば、何様のつもりだと怒鳴りつける気概さえある。被害者に殊更冷たくなれるわけでも無ければ、かといって感情を押し殺せるわけでもない。ただ、犯人を捕まえる。事件が起きてから動くことしか出来ない自分に歯ぎしりするが、五十嵐刑事の言葉は正しいのだろう。


事件現場には五十嵐刑事もいて、容疑者の指紋や犯行に使われた凶器が残されていないことを伝えられた。それを聞いて源さんの纏う空気が変わる。それは緊張。ここで焦ればまた犯人に逃げられるかもしれない。そんなことをすれば平田さんに会わせる顔がない。見れば五十嵐刑事も険しい面持ちをしていた。


「刑事さん、このヤマ絶対に片付けよう」

「当然です。これ以上被害者を出させないためにも」


俺はベテラン二人に挟まれて、その雰囲気に気圧される。しかしもう以前の俺とは違う。今度は足を引っ張らないようにしてみせる。

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