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あの後ライザと一緒に石を積んで簡易的な墓を作った。そして二人でガル達を弔った。僕は懺悔と感謝の気持ちを込めて、ライザはどんな気持ちで祈っていたのかは分からない。それからは何事もなくライザの魔法を見て、それを僕が褒めて一日が終わった。日々は緩やかに過ぎ去る。大厄災が来ると言われたところで、僕がやることは変わらない。剣の練習をして、ライザの魔法を見て、腹を空かすミーシャや会うことが出来ない魔族のみんなの無事を祈るだけだ。
最近は騎士団と冒険者を町の外でよく見かける。幸いまだライザや魔族は見つかっていないみたいだが、この様子ではライザも出歩くのが難しいらしく、昨日急に暫く会えないと言われた。僕の日課が一つ減ったが、日々は変わらず緩やかに過ぎ去る。空いた午後に何をしようかと迷ったが、一つ大事なことを忘れていた。いつかやろうと思っていた、お世話になっている人への恩返しだ。
「パテンさん、日頃お世話になっているので僕に何か恩返しをさせてください」
「リューがそんなことを言ってくれるなんて嬉しいねぇ。だが俺はリューに何の見返りも求めていない。だから恩返しとかはいらないぞ」
「でもパテンさんにはお世話になっていますから・・・。そうだ、パテンさんの誕生日はいつですか?」
「誕生日か?丁度10日後だな」
「10日後ですね?わかりました。その日の夜、空けておいてください」
「おいおい、そういうのは俺に直接言うもんじゃねぇだろ。それだとサプライズじゃなくなるぞ、ガッハッハ!」
「もう話してしまったので。・・・それに僕にとってもこういうのは初めてなので」
前にお世話になった人は恩返しをする暇もなく旅立ってしまった。今度はしっかり僕の気持ちを伝えないと。手遅れにならない前にも。その後パテンさんの宿屋から出て、僕はクエストをこなしていく。もっとパテンさんを祝う方法があるのかもしれないが、僕がパテンさんを祝うにはあまりにもパテンさんの事について知らなさすぎる。だから今の僕にはこれしか方法がない。稼いだお金を握りしめて、僕は前におじいちゃんに供える酒を買った場所に向かった。
「へい!らっしゃい!あれ?お兄さん、もしかして前にウチでヌーラの火酒を買った冒険者かい?」
「そうです。今日もヌーラの火酒を買いたくて来ました」
「おぉ!もしかしてヌーラの火酒を気に入ったのかい?リピーターってやつか!嬉しいね!おーい!ヌーラの火酒一丁!」
「まぁ、そんなところです」
「ウチは辛い酒を造るんだけど、合わないって人が多くてね。冒険者の方々も一度買ったらそれっきりって人が多いんだ」
「辛い酒、いいと思いますけどね。ひたすら酔って鈍い思考を振りほどきたい時とかに」
「お兄さんその通りだ!皆勘違いしてるんだよ。酒は美味しさを求めて買うんじゃない。酒を飲むときに変な思考なんてもんは一切要らない。酒を飲んでいるひと時の時間のためだけに酒を買うし、そんな客に酒を売ってやりたいんだよウチは」
店主は熱く語った後、僕にヌーラの火酒を渡してきた。そして一言。
「お兄さん、ウチのリピーターならまた来てくれよ。最近は物騒だし、特にお兄さんは冒険者だけど・・・。ヌーラの火酒を造って待っとくからよ」
店主のその言葉に僕は勿論、と返して酒を手にパテンさんの宿屋に帰る。そしてパテンさんの誕生日をヌーラの火酒で祝う。
「パテンさん誕生日おめでとうございます」
「ありがとうな、リュー。ってこれヌーラの火酒じゃねーか。前飲んだ時は向いていないって言ってたじゃねぇか!」
「細かいことはいいんですよパテンさん」
「細かいってなぁ・・・」
「まぁまぁ。今はパテンさんの誕生日を祝う酒の席。酒の席で変な思考を挟むのは無粋ってものですよ。この瞬間を大事にするために、今日は飲みましょう」
そう言って強引にパテンさんと僕の杯にヌーラの火酒を注ぐ。そして感謝の言葉を言い、パテンさんと楽しく酒を飲む。どんな言葉を言ったのかは覚えていない。これからもパテンさんにお世話になることに比べたらきっと些細なことだ。




