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fallen  作者: 流転
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この世界に来て何日が経っただろうか。最初は戸惑っていたが今ではなんとか順応してきたと思う。単に居候させてもらうのも悪いので家事ぐらいは、と思ったが左手がないせいで皿洗いも満足にいかなかった。それを見かねて老人は僕に用事を任せなかった。料理も畑仕事も洗濯もすべて老人がしてくれた。申し訳ないなと思ったが、家事をしているときの老人は嬉しそうで、僕と一緒にご飯を食べる時はもっと嬉しそうだった。話は通じなくても心を通わすことは出来るようだ。老人の笑顔に僕もつられて笑顔が増える。使い古した食器を片付けたところで、老人に絵本を渡された。


(なんだろう?)


表紙には剣やら杖やらが描かれている。変な紋様が書かれてたり、地球にいなかった化け物がいたりしたことから、この世界がファンタジーな世界であることは一応把握している。手に取り中を開く。文字を覚えろという事だろう。子供向けの絵本なら僕も読めるかもしれないと思い目を通す。物語はどうやらドラゴンのような生き物を倒す旅のようだ。パラパラと数ページめくったところで子供が書いたような字が白紙の部分いっぱいにかかれていた。


(・・・・)


誰が書いたものかと言われなくても、思い当たる節は一つしかない。顔を見上げると老人が懐かしいものを見たような目をしており、いたたまれなくなる。いつまでも感傷に浸っている場合ではない。元の世界に戻るにしても、この世界で生きていくにしても、とにもかくにもまずは文字を覚えなければならない。


(僕はこの世界のことを知らなさすぎるから)


少しずつでもいい、出来ることからやっていくんだ。ふと、本をめくる手に老人の手が添えられる。一緒に頑張ろうというのだろうか。この世界は危険なことも多いけど、最初に出会えたのが老人で良かった。左手はないけど、残ったこの右手はなくさないように頑張らないと、という決意が溢れる。老人の温もりを忘れないためにも・・・

英雄の軌跡1

「ルークは村人の子供として生まれた。剣を握ることよりも鍬を握る事の方が長けている、そんな何処にでもいる普通の少年だった。しかし彼を待ち構えていたのは過酷な運命だった。ある日、大陸を飲み込まんとする帝国が村に攻め入った。食料、女、金、武具、土地。そこには帝国が喉から手が出るほど欲しいものが沢山あった。ルークは鍬を手にして帝国兵士と戦ったが、鍬程度でフルプレートアーマーが貫けるわけがなかった。諦めかけたその時、ルークの目が武器屋に飾られている剣をとらえた。ルークはその剣をがむしゃらに振るった。形などないに等しいが、剣が良かったのだろうか。細目を開けると帝国兵士だったものが3人程転がっていた。フルプレートアーマーをバターみたいにきったその剣は、古の時代より自分を振るうに相応しい主を探し求めていた聖剣だった。」

                               ルークの伝記

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