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「フム、キタか」
「お待たせしましたライザさん。さて、魔法を教えるという約束でしたが、まずは魔法の概念から説明します。まず魔法は魔力を・・・」
そこから僕はライザに魔法を教えていく。ガルの種族が使える魔法は咆哮の魔法というもので、魔力を空気に乗せて相手の恐怖をあおるという魔法だ。普通の咆哮より魔力を乗せているので効果が高い特徴がある。でも魔力の操作は、おじいちゃんに遠く及ばない僕よりも拙く感じられた。
(やっぱり僕の魔法を見ていただけで着火の魔法を覚えたイスファ=リアは凄かったんだな・・・)
魔物を見るとどうしてもイスファ=リアのことを思い出してしまう。するとライザが僕が黙ったことに気付いて声をかけてくる。
「ム?ドウシタ?ナニかカンガエテイタのか?」
「あ、えっと・・・。魔法を覚える魔物を見るのは実はライザさんが初めてじゃないんですよ。それで最初に魔法を覚えていた魔物のことを思い出してしまって・・・」
「ホウ、ワレとオナジクチセイがアルマモノはメズラシイぞ」
「いや、知性がどれほどあったかは分からないんですけどね。その魔物は植物の魔物でハラウルと言うんですが、言葉は喋れなかったので」
「ナニ?ショクブツのマモノだと?ショクブツのマモノがドウヤッテマホウをシュウトクしたとイウノダ?ソノバからウゴケナイとイウノニ」
「僕が目の前でそのハラウルに色々と魔法を披露して自慢していたんですよ。変、ですよね・・・。向こうがどう思っていたかは分からないのに、一方的に自分の気持ちを押し付けて、はたまた勝手に名前まで付けちゃって・・・」
「ヘンでもナカロウ。ワレはタニンのイケンをナニもカンガエズにヒテイはシナイ。ソレでソノマモノはイマドウシテイルのだ?ワレはソノマモノにキョウミがワイタぞ」
「そのハラウル、名前はイスファ=リアって僕が勝手に名付けたんですけど・・・。イスファ=リアは星になっちゃいました・・・」
「ホシ・・・に?」
「はい、僕の手の届かない所に行っちゃったんですよ。僕のことを置いていってね。でもイスファ=リアは遥か上から僕のことを照らして、進むべき道を照らし出してくれている、そんな気がするんです」
「ステキなハナシではナイか。コトバはツウジズトモ、ココロはツウジアッテイルとイウコトか?」
おかしいな、僕は何でこんなに饒舌になっているんだろう。本来の目的の剣術の習得は?ライザを利用すると決めたのに今は僕の過去をライザに話している。酷く合理性に欠ける、おそらく地球にいたころの僕は考えもつかなかった心境の変化だ。
「それでイスファ=リアと言うのは伝説に登場する命照らす大樹の名前で。ワイバーンと戦ったときにイスファ=リアが練った魔力が草原を照らして・・・。それが本当に暖かい光で!」
「フム、ワレもソノバにイタカッタな。リューにソコマデイワシメルとは・・・。ソレニシテモそのイスファ=リアのコトにナルとズイブンとジョウゼツにナルな」
「分かります?実はイスファ=リア以外にも僕の心の支えになっている存在がいまして。カカおじいちゃんなんですけど。魔力の操作が本当に凄い魔法使いで!」
あぁ、今わかった。地球での僕は隣に勝っちゃんと言う理解者がいたし、この星に来た当初でもおじいちゃんとイスファ=リア、それにティビやピィーがいたから僕は頑張れた。そうだ、僕は自分のことを隠すことなく本音で語り合える存在を欲していたんだ。
「ソレでリューよ、ハナシをキイテイタが、オソラクそのイスファ=リアにはカンジョウがアッタとオモウぞ」
「え、何でそう思うんですか?」
「ワイバーンとのタタカイでツカッタチャッカのマホウ、アレはワイバーンとのタタカイでハジメテミタのダロウ?マモノのホンノウでマリョクをホッシタナラ、リューがフダンイスファ=リアにハナシカケテイルアイダにリューにムケテマホウをツカッテイタハズだ」
「・・・あ!」
「リューよ、ワレはイスファ=リアがイキテイルアイダにデアエナカッタコトがクヤシクテシカタがナイ。オマエのコトをカンガエテイルマモノダッタンだな」
「・・・それだったらライザも僕のことを気遣っている優しい魔物じゃないですか。前までは僕のことを貴様と言っていたのに」
「ソウイウリューこそ、ライザサンとイウヨビカタはドコへイッタ?」
「・・・ふっ、ふふ」
「・・・ククッ」
二人して笑いをこらえる。でも結局こらえきれなくて、静かな森に二人の笑い声が木霊した。




