37
「おじいちゃん、僕王都に行ってくるね。まぁ近いから何度か帰ってきて経験したことを伝えるから楽しみに待っててね。おじいちゃんの遺してくれたブレスレットと、イスファ=リアには悪いけど牙をとらせてもらったんだ。この二つのお守りがあれば怖い物なんてない。それじゃ、行ってくるね・・・」
王都で預言者が死んだという報せ。そして白いローブの集団。気になる要素はいくつもあるが僕が王都に向かう一番の理由はおじいちゃんが死んだという事をパテンさんに伝えるためだ。
(パテンさん悲しむだろうなぁ・・・。ラティムさんも悲しんでたし、あぁ嫌だなぁ・・・。これ以上他人の苦しい顔を見たくないや。勝っちゃん、元気にしてるかな)
それは忘れ去ったはずの親友の名前。もう僕はこの世界で生きていくと決めたはずだ。でもおじいちゃんもイスファ=リアも居なくなると心の支えがなくなったようで、今更地球への未練が再燃している。ダメだ、ここで魔族を置いていったらおじいちゃんとの約束を破っちゃう。分かっているけど心の隅にうまれるわだかまり。それに気づくまいと急くように王都へ向かう足をはやめる。
「パテンさん、お久しぶりです」
「お、カカが連れてきた坊主じゃねぇか。名前はなんだったっけなぁ。上手く思い出せねぇやすまんなぁガッハッハ」
「リューです。これを機に覚えてくれると嬉しいです」
「リューか思い出したぞ。それで今日はカカは居ないのか?坊主一人とはおつかいかぁ?偉いなぁ」
ガハハッと豪快に笑い飛ばすパテンさん。僕はこの先、パテンさんがどんな表情をするか分かっている。それゆえに躊躇してしまう。僕が黙っているとパテンさんが口を開く。
「そうか、あいつはくたばったか・・・」
「え、なんでそれをっ」
「坊主の纏う空気でだいたいわかるんだよ、まぁ年の功ってやつだ。そのおかげで俺もいつ死ぬかわからんがな、ガッハッハ」
「・・・」
「それで坊主。カカは最後笑っていたか?」
「・・・はい、笑っていました。おじいちゃんは笑いながら逝きました」
「それじゃあ坊主がそんな辛気臭い顔してるのは、あいつは望んでいないと思うぜ。あいつとは腐れ縁だからな。あいつの考えていることなんてお見通しなんだよ」
「っ、はい。そうですね。いや別に辛気臭い顔をしていたんじゃないんです。ちょっとおじいちゃんとの思い出に浸かってただけです。それだけなんです」
「なんだ言うじゃねぇか坊主!」
「それにもう僕は一人じゃありませんから。パテンさんありがとうございました。今日のところはどこか適当に宿をとろうと思います」
「おいおいつれねぇな。俺の宿に泊まっていけよ。今日と言わず何日でも構わないぞ」
「いえ、そんな悪いですよ」
「なーに、タダとは言わない。ウチは安さを売りにしているが、ちゃんと代金は払ってもらうさ。坊主はこの街で金を稼いで、その稼いだ金で宿に泊まって飯を食う。それが生きるってことだ」
「・・・はい、改めてお世話になりますパテンさん」
「おう、こっちこそよろしく頼むぜリュー!ガッハッハ」
夕ご飯はバステル焼きだった。パテンさんが作ってくれたバステル焼きはおじいちゃんが作ってくれたものと似た優しい味がして、ついつい食べ過ぎてしまった。




