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fallen  作者: 流転
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潮風が肌をなでる。寂れた墓石に祈る。おじいちゃんは片手でここまで運んできたけどイスファ=リアは運べなかったので魔力が回復してから着火の魔法でその身を焼いて土に還した。


「おじいちゃん、イスファ=リア・・・。皆のおかげで僕は生き残ることが出来たよ。皆が繋いでくれたこの命、無駄にしない様に頑張るから見ていてね。世間がおじいちゃんとイスファ=リアの存在を忘れても僕だけは最後まで覚えているからね」


泣いてばかりじゃいられない。おじいちゃんにはもっともっとこの世界のことを教えて欲しかったし、イスファ=リアともより親密な関係を築きたかった。でももう彼らは帰ってこない。いつまでも過去を引きずるわけにはいかないんだ。来る大厄災に備えて僕も今一度鍛えなおさなければいけない。ワイバーンとの戦闘で僕は結局おじいちゃんに魔力を供給することしか出来なかった。目指すはおじいちゃんの様な高み。少しの切り傷からでも、血に含まれる魔力を操り魔法を紡げるような技。


「それにしてもおじいちゃんを運んで穴を掘るだけでも疲れたな。体力もつけないと。やるべきことは多いなぁ」


僕には立ち止まってる暇なんてないんだ。努力もせず大厄災で死んじゃったらおじいちゃんとイスファ=リアに顔向け出来ないしね。そんなことを考えながらランニングをして体力をつける。


「あ、ティビ。ごめんね。僕は餌のレシピを知らないんだ。どうか餌がなくても強く生きておくれ。ピィーもだいぶ減ったなぁ。残った君たちは僕と一緒に逞しく生きよう」


ランニングの途中でピィーやティビに挨拶する。だいぶ変わってしまったけどこれからはこれが日常だ。その時見覚えのある人が近づいてきた。


「やぁやぁ、君は確かリュー君だったね。久しぶり」

「ラティムさん、お久しぶりです」

「ちょっとカカさんに報告したいことがあってきたんだけど、カカさんは家にいるかい?」

「・・・」


覚悟はしていたけど、やっぱり他人からおじいちゃんの名前を出されると心が締め付けられるように痛くなる。僕はおじいちゃんが死んだことを伝える。ラティムさんは驚いた後に悲しげな顔をした。


「そんな・・・。カカさんが亡くなったなんて。私の方が先に死ぬと思ってたんだけどな。何が起きるのか分からないものだね」

「そうですね・・・。それでおじいちゃんに報告したいことって何ですか?」

「そうだそうだ。実はね、王国の預言者が死んだらしいんだ。その影響で大厄災の起こる日時が正確にわからなくなってしまってね。王国では大厄災が起こる日時が分からないなら先に魔王を殺してしまおうという論調が高まっているんだ。勿論私もギリギリまで死にたくないから抵抗するよ」

「随分自分勝手な人たちですね。それで預言者が死んだ理由とかは捜査されているんですか?」

「いやぁ、あの国はそこまでしていないんじゃないかな。国内も色々と問題を抱えているみたいだし。とにかく報告したかったのは私もいつ死ぬか分からないってことだよ」


そう言ってラティムさんは困り顔をする。


「そうだ、はいこれ。魔族が住んでいる場所のメモを渡しとくよ。私が死んだら娘をよろしくね」

「分かりました・・・。親しい人がいなくなる悲しみはわかっているつもりです。娘さんと、家族同然の魔族の皆さんと過ごす日が一日でも長くなることを願います」


最後にラティムさんと一緒にもう一回墓の方に行く。ラティムさんも墓参りをしたいと言ってくれたからだ。


「そういえばラティムさんは神に祈るんですか?魔族にとって神は許せない存在だと思うんですけど」

「私が神に祈るわけがない。過去の魔王達に向けて祈るのさ」

「へぇー。僕も神には祈らないですね。僕はイスファ=リアに向けて祈るんです」

「イスファ=リアというと伝説上の存在である命照らす大樹のことかい?」

「いえ、この世界で僕だけが知っている、大切な大切な友のことです」


ラティムさんは不思議がっていたけど僕はワイバーンとの戦いで見たイスファ=リアのあの輝きが忘れられないでいる。僕が一方的に友達だと思っていたけど、イスファ=リアのその生き様に、一人孤独に草原で生きて、最後まで立派に戦い抜いたその雄姿に敬意を払うのは当然だと思う。

そのままラティムさんと別れる。イスファ=リア見ていてくれ。そして願わくば僕を支えて欲しい。


「イスファ=リアよ、進むべき道を照らし出せ・・・なんてね」


僕のこの声は友に届いているだろうか。もし聞こえてたら恥ずかしいや。

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