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fallen  作者: 流転
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ワイバーンの目を見てどう足掻いても負けると悟る。あぁ、死んだなと生まれる諦観。でもそれでいいのか?視界にうつるのは血だらけのおじいちゃんと魔力切れのイスファ=リア。僕が死んだら彼らはワイバーンに殺されるのを待つのみだろう。嫌だ、そんなのは嫌だ。僕はまだ死ぬわけにはいかないんだ!


「っ!突風の魔法!」


草原の気まぐれな精霊よ、どうかこのひと時だけ僕に力を貸してくれ!死に物狂いで魔法を唱えると草原に風が吹き荒れる。その風はワイバーンの巨躯を少しだけ押し返す。その少しで十分だった。押し返された先には口を開けて牙をちらつかせたイスファ=リア。そのままイスファ=リアがワイバーンに牙を突き立てるがワイバーンも炎のブレスと再生の魔法で応戦をする。ごめんイスファ=リア。少しの間だけ時間を稼いでほしい。僕は急いで再生の魔法をおじいちゃんにかける。


「急いで回復させないと・・・。う、僕じゃ治すのに時間がかかる」


視界の隅では魔力持ちを食らい続けて膨大な魔力を蓄えているワイバーンがイスファ=リアに炎のブレスを吐いて焼いているシーンだった。早く、イスファ=リアがやられる前におじいちゃんの回復を間に合わせないと。僕だけじゃワイバーンには勝てないけど、おじいちゃんがいれば・・・。


「うぅ、私は生きているのか・・・」

「おじいちゃん!良かった!」


応急処置で体の主要器官だけ治すと、おじいちゃんが目を覚ます。間に合ったと思って顔をあげるとそこには見たくなかった光景。否、理解したくなかったのだろう。巨体にはいくつもの傷や焼けただれた痕があり、獰猛な口は開け放たれたままでピクリとも動いていない。


「あ、あぁ・・・」


嘘だ、そんな嘘だ。イスファ=リアが死ぬわけがない。僕の左手を食べたんだ。僕の魔力を受け継いで、僕と同じように魔法を習得していたんだ。それにさっき見たイスファ=リアは本当に伝説の命照らす大樹の様なオーラがあったんだ。そんなイスファ=リアが死ぬわけがない、死ぬわけがないんだ・・・。


「リュー!まだ終わっていないぞ。気を抜くな」


おじいちゃんの声で深く沈んだ思考が引き戻される。横を見るとイスファ=リアと同じぐらい傷を負っているおじいちゃんが必死の形相でワイバーンを睨んでいる。おじいちゃんが無事なことに内心ほっとする。


「おじいちゃん、生きててよかった。おじいちゃんならあのワイバーンも倒せるよね?イスファ=リアの仇を討てるよね。なんてったっておじいちゃんは僕の自慢のっ」

「リュー、私の魔力だけではあの再生力を越えられん。このままでは私もお前も食われるだけだ。だから力を貸してほしい」

「うん、うん。なんでもするよ。それであのくそトカゲを殺せるのなら何でも。それで僕は何をすればいいの?なんの魔法を使えばいいの?」

「・・・すまんなリュー。お前と過ごした日々は楽しかったぞ」

「え?」


そう言っておじいちゃんは懐からナイフを取り出し僕の足を切る。そこから溢れ出る血をおじいちゃんが操作して魔法を紡いでいるのが分かる。僕とおじいちゃんの残りの魔力を合わせて魔法を使うつもりなんだ。でもそんなことしたら。


「待って、待ってよおじいちゃん。僕の魔力は再生の魔法用に取っておかないと。おじいちゃんの傷はまだ完全には癒えていないんだ」

「分かっているさ。分かったうえでこれしか方法はないんだ。リュー、これを」


そう言っておじいちゃんは僕に赤いブレスレットを渡してくる。その顔はいつもの優しいおじいちゃんの顔で・・・


「リューよ、笑ってくれないか?」

「・・・」

「私は最後にリューの笑顔が見たいんだよ。おじいちゃんからのわがままだ。」


視界の端では再生の魔法で完全に回復したワイバーンが僕らにとどめを刺すべく炎のブレスを吐こうと魔力を練り上げている。もう残された時間はないのだと悟る。


「・・・おじいちゃん」

「なんだい?リュー」

「ありがとう。おじいちゃんとの日々は楽しかったよ」

「あぁ、私もさ愛しき愛孫よ」


目じりに涙を浮かべながら不格好な笑顔を向ける。僕はうまく笑えているだろうか。自分では分からないけどおじいちゃんは満足したようだ。


「見ていなさい。愛孫よ。私の魔法は世界を揺らす!」


そう言っておじいちゃんが魔法を放つ。水色と赤色の魔力が合わさり綺麗な紫色の魔力となる。おじいちゃんの叫びと共にワイバーンの上空に巨石が現れてワイバーンを押しつぶす。おじいちゃん渾身の魔法は世界を揺らした。一人の人間がここまでするなんて、きっと神も驚いているだろう。


「見て、おじいちゃん。ワイバーンがひしゃげてるよ。やっぱりおじいちゃんは凄いや。それにしてもおじいちゃん、もう年なんだからそんなにはっちゃけたらダメだよ。傷が開いちゃうよ。おじいちゃん、何か言ってよ。それとも言い返せないの?ははーんさてはボケたのかな?認知症?おじいちゃん・・・。う、うぅ・・・」


もう、いいよねおじいちゃん。心の底から泣いても許してくれるよね。怒ったりしないよね。

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