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「さてではとどめを刺しに行くか」
そう言っておじいちゃんがワイバーンに近づいていく。慌てて僕も後を追う。見るとワイバーンとイスファ=リアが激戦を繰り広げたその場所は互いの火魔法により焼け野原と化していた。被害が拡大する前におじいちゃんが清水の魔法で鎮火する。そして地を這うトカゲにおじいちゃんが着火の魔法と経過の魔法をかける。火はみるみる大きくなりワイバーンの体を包み込む。ワイバーンは暴れるがもうどうすることも出来ないだろう。
「それにしても僕ワイバーンなんて魔物見たことないや。なんで突然現れたんだろう」
「それはおそらく大厄災の前兆だな。大厄災の前には決まって魔物の異常発生が起こる。当の大厄災は前兆の比ではない程の魔物が押し寄せてくるがな」
「へぇ・・・」
大厄災は人間にとって恐怖の対象。そしてその大厄災を引き起こす魔王は憎むべき敵。王都に行って知りたくもないことを知ってしまい、果たして僕に次の魔王を支えられるのかと不安になる。人間は着実に力をつけている。武装した集団に襲われたらひとたまりもない。そこまで考えたところで一つの疑問が浮かぶ。
「あれ?そういえばおじいちゃん。最近人間は紋様を体に刻むことで戦力が増加したって言ってたよね」
「あぁ、そうだな」
「じゃあさ、それまではどうしてたの?大厄災を単純な物量で乗り越えてたの?」
「いいところに気付いたな。人間が力をつける前までは、人々は神の奇跡にすがっていた」
「神の奇跡に?」
「あぁ、大厄災を経験したものはその脅威に震えていた。しかしある日一人の男が神の奇跡の理論を解明して、膨大な魔力と引き換えに神の奇跡を人間が使えるようにした。リューも読んだだろう。あの禁書を書いたのもその男だ。」
「へぇー、あの禁書を書いた人って凄い人なんだね」
「まぁ凄いというか欲深いというか。とにかく私が生まれる前までは神の奇跡を使って大厄災に対抗していたそうだ。呼び寄せの魔法で人を呼び出すと、その人に神が直々に奇跡を与えたらしい。その力で魔物の軍勢をはねのけていたという記述が残っている」
どうやら僕以外にも昔は呼び寄せの魔法でこの世界に呼び出された人がいたようだ。勝手に呼び出された上にこの世界のために戦えなんて自分勝手が過ぎると思う。でもそれで納得したことがある。
「それでこの世界にはワイバーンとかドラゴンとか、僕の聞いたことのある言葉があるんだね」
「そうだな。ティビやピィーも異世界からやってきた昔の勇者が名付けたそうだ。それ以外にも様々なものが他の星から流入していると聞いている。この星の神は0から作るよりも他の星からアイデアを持ってきた方が楽だと考えたんだろうな」
人が人なら神も神である。傲慢で自分勝手な性格は神ゆずりというわけだ。そんなことを話している間にワイバーンの悲鳴が弱弱しくなってきた。もう終わるかとワイバーンに意識を向けた時、信じられない光景を見た。ワイバーンを包み込む火の奥で、焼けただれた肌が所々再生しているのだ。真実の魔法は使っていたけどワイバーンから目を逸らしたせいで魔力の流れに気付くのが遅れた。
「おじいちゃん、避けて!」
「・・・えっ」
僕の声は間に合わず、ワイバーンの爪がおじいちゃんを袈裟切りにする。
「ぐあっ!」
体から大量の血を流しながらおじいちゃんがこちらに吹き飛ばされる。慌てて受け止めるけど一目見て致命傷だ。ワイバーンの様に再生の魔法を使いたいが、こちらをギロリと睨むワイバーンの怒りを込めた眼が僕を縛らせる。
「ギャアアア!」
ワイバーンの勝ち誇ったような雄たけびが草原に響き渡った。




