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「ギャアアア!」
そのドラゴンの様な生き物は雄たけびを上げる。草原に響き渡る咆哮に近くの草むらが揺れてティビが震えているのが分かる。ピィーは逃げ惑うので必死の様だ。しかし次々にそのどらドラゴンの様な生き物の牙により命を絶たれていく。
「やめろ!」
気付けば大声で叫んでいた。僕の声に気付きおじいちゃんも家の中から出てくる。
「リュー、どうしたんだそんな大声を出して。あ、あれはワイバーン!」
「おじいちゃん、ピィーが食べられてるよ!何とかしないと」
「落ち着けリューよ。ワイバーンは魔物だ。そしてリューも私も魔力持ちだ。ピィーやティビの中にも魔力持ちはいるが、私たちの方が血が多い分魔力も多い。言いたいことはわかるな?」
おじいちゃんの言いたいことに気付いてワイバーンを慌てて見る。当のワイバーンは僕とおじいちゃんを見据えていた。獲物を見るような目つき。生存本能が逃げろと警鐘を鳴らしている。どうやって太刀打ち出来るというのだろうか。
「お、おじいちゃん。逃げないと」
「リュー、迎撃するぞ。どっちみち逃げ切れない」
「え、嫌だよ!あれに立ち向かうなんて・・・」
そう、真実の魔法であのワイバーンを見た時に気付いてしまった。あのワイバーンの魔力はどす黒い黒色をしていた。一体いくつの魔力持ちを食らいミックスしたらあれほどの黒色になるのだろうか。勝てるわけがない。
「リュー!私を信じなさい。私は大厄災を防いだ魔術師の一人だ。ほら、いつも見たいにおじいちゃんを頼ってくれ」
そうだ、おじいちゃんは高名な魔術師だ。おじいちゃんがついていれば怖いものなどない気がする。僕が心を決めている間にワイバーンが迫ってくる。その獰猛な顔が視認できそうな距離に来た時、突然ワイバーンが軌道を変える。その先には・・・
「イスファ=リア!」
ワイバーンはあろうことかイスファ=リアをターゲットにした。助けないといけないと飛び出しそうになるけど、それをおじいちゃんが制止する。
「離してよおじいちゃん。イスファ=リアを助けないと!」
「やめなさいリュー!あの中に突っ込んでもイスファ=リアとワイバーン両方から狙われるだけだ。リューと共に成長したイスファ=リアを見てやりなさい」
そんなこと言われても・・・。目の前ではワイバーンが火のブレスを吐いて、イスファ=リアの手の届かないところから攻撃を加えている。ワイバーンがうまれた時から使える魔法はドラゴン系に漏れずブレス系統の様だ。その火のブレスをイスファ=リアは必死に防御の魔法で耐えている。防戦一方だ。このままじゃ先に魔力が尽きてしまう。徐々にイスファ=リアの体に傷が出来ていく。
そう思ったときイスファ=リアが輝く。僕と同じ透き通るような水色の魔力が体から溢れ出る。魔法を使おうとしているのだ。僕はイスファ=リアに自慢して色々な魔法を披露していた。でもイスファ=リアは魔物だから、魔力が回復しないから魔法を使うのに時間がかかると思っていた。いや、本当に時間がかかっていたのだろう。でもイスファ=リアも僕の魔法を見て何時か魔法を使う日を夢見ていたのだろう。
「頑張れ・・・」
気付いたら僕は友達の生長を見守っていた。イスファ=リアは僕の声に応えるかのように魔力を練り魔法を紡ぐ。水色の魔力が僕の声に呼応する。その時僕は幻覚を見た気がした。見渡す限り草が広がるこの草原に水色の光が溢れる。その水色の光は草原を照らす、何処までも。その温もりに隠れていたティビが顔を出す。傷付いたピィーの顔に生気が宿る。おじいちゃんと僕の顔に笑顔が戻る。それはまさに名前の元になった伝説の命照らす大樹イスファ=リアそのものであった。
「ギャァァァ!」
ワイバーンが悲鳴を上げる。魔法強化の紋様で威力をあげられた着火の魔法がワイバーンの翼を焼いており、ワイバーンは地べたを這うトカゲに成り下がっていた。イスファ=リアは魔力を使い切っており、少し繋がりが消えた気がして悲しい気持ちになる。それと同時に嬉しい気持ちにもなる。
「・・・追いつかれちゃったね。よく頑張ったね」
やっぱり素直にうれしいや。繋がりは消えたけどそれでも僕と友達でいてくれるかな?




