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fallen  作者: 流転
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30

「君たちが・・・、いやお前らが物事の道理を語るな。イスファ=リアを実験体としか見ていなかったお前らが・・・」


気付いたら小声で怨嗟の声を絞り出していた。あぁ、僕は今どんな顔をしているんだろう。脳が沸騰しそうで正常な判断が出来なくなってしまっている。それに聞きたくない言葉がまだあった。最高神ガダーディス、だと?なぜこんな利己的な神が敬われるのだ。これでは、自身を神のオモチャだと嘆いていたラティムさんも、見慣れぬ世界に呼び出されたリクさんも報われない。こんなの、こんなの・・・


暗い感情が心を埋め尽くそうとしてくる。でも隣で僕の手を静かに握ってくれるおじいちゃんの暖かい手の温もりが、僕を深海からすくい上げる。


「リュー、凄い顔をしていたぞ。最初にあった時の、余裕のない顔だ」

「・・・」


僕は押し黙るしかない。世界を自分の目で見て絶望してしまったのだ。こんな世界で自分一人が理不尽の理解者になったところでどうしようもないのではないか、とさえ思ってしまう。いや、それは建前だ。本当はあの独善的な白いローブの手段をこの手で・・・


「リュー、せめて私の前では笑ってくれないか?」

「でもっ・・・!」

「私は死ぬ時までリューの怒り顔を見ないといけないのか?」

「っ、おじいちゃんは死なないし。死なないけど・・・。ごめんおじいちゃん、僕また暴走してた・・・」

「そうか、リュー。じゃあおじいちゃんと一緒に家に帰ろうか。疲れただろう?」

「うん」


おじいちゃんが僕の右手を手に取り歩き出す。日が沈みかけている帰路に赤色と水色のブレスレットが二つ、夕日を反射して輝いていた。イスファ=リアやティビ、ピィーを見てほっと一息つく。




「ねぇおじいちゃん、僕魔力を練るの上手くなったよね」

「あぁ、本当にうまくなったよ。もう着火の魔法も真実の魔法も、経過の魔法さえも使えている。よく頑張ったな」

「うん、おじいちゃんのおかげだよありがとうね」

「リューよ、剣は習わなくていいのか?」

「うーん、僕片手だから剣を持つには力不足かなって」


王都から帰ってきた後も僕の日常は変わらなかった。その間に魔力操作が上手くなり、魔法への理解も深めたおかげで様々な魔法を習得した。時が経つという事。それは即ちラティムさんの死期が近づくという事。パテンさんとおじいちゃんの寿命が近づいているという事。その事実から目を逸らして、僕は日々を過ごす。ラティムさんの娘さんという次期魔王にも挨拶しないといけないけど、魔族も今忙しいだろうから向こうから来るのを待っている。そんなことを考えていると遠くからピィーの鳴き声。


「おじいちゃん、ピィーが帰ってきたよ!」


春がやってくる。帝国からピィーが帰ってくる。でも何か様子が変だ。まるで何かから逃げているような。そのピィーの背後にはドラゴンの様な生き物の姿。


「・・・え?」


春が絶望を連れてやってきた。僕の日常を壊さんがために。

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