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fallen  作者: 流転
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花を買ってパテンさんの妻の墓に供えた後、おじいちゃんと王都の中を散歩する。人の活気もいいけど、僕は少し大通りから離れた路地裏当たりの方が体に合う気がする。そこでブレスレットが売られていた。色とりどりのブレスレットの中に目当ての二色を見つけておじいちゃんにねだる。


「ねぇおじいちゃん、あれ買って」

「ん?ブレスレットか」

「この世界でもブレスレットって言うんだね」

「あぁ、リューの世界と同じ名前なのか。その仕組みは後で説明しよう。この星は少し歪でな」

「ふーん、まぁいいや。それよりさ。この赤色と水色のブレスレットを買ってほしいんだ」

「ははっ、いいぞ。二つ買うから安くして貰えるよう頼んでみよう。交渉のテクニックも学びなさい」


そう言っておじいちゃんは値切りに入る。そのブレスレットの色は僕とおじいちゃんの魔力の色。形は全く一緒で色だけが違うこのブレスレットを見事値切ることに成功したおじいちゃんは、僕に水色のブレスレットを渡してくれた。


「お揃いだねおじいちゃん」

「あぁ、そうだな」


その後大通りに戻ると人々の喧騒が大きくなっている気がする。何事かと人だかりに目を向けると、白いローブを羽織った集団が声高に何かを叫んでいる。気になり少し近づいてみると聞こえてくる彼らの信念。


「大厄災をこれ以上起こすなぁー!」

「人々が魔物に脅かされることのない世界を目指そう!」

「後手に回っていてはいけない!今こそ一丸となって魔族を滅ぼすべし!」


最後の一言を皮切りにそこかしこで声が大きくなる。滅ぼすべし、滅ぼすべしと。僕が驚愕しているとおじいちゃんがぼそりと呟く。


「リューよ、見ておきなさい。これが王都の住民の考えだ。生まれた時から何不自由なく暮らしてきて、脅威なんて大厄災だけ。そんな生活なら魔族を殺せば更なる平和が簡単に築かれると思っている。魔族は当然抵抗して戦争になるということが分かっていないのだ」


おじいちゃんの言うことは至極全うだと思う。しかし人々の集団心理というのは恐ろしいものだ。明確なる脅威を前にすれば一致団結する。そして・・・


彼らの背後にそびえたつ無数の墓石。さっき僕も花を供えた時に気付いたけど、冒険者が揃っていて自警団も備えている王都にしてはいささか集団墓地が手狭だった気がする。そして数年前のおじいちゃんが出張ったという大厄災。人々の不安。つまるところそういう事なのだろう。名前も知らない赤の他人の叫びに胸が苦しくなる。


すると群衆の中から一人の男がローブの集団に抗議をしていた。


「いい加減にしろ!魔物は大切な資源なんだよ!魔物を滅ぼしたら冒険者まで滅びるだろーが!」


見るとその男は甲冑に身を包み剣まで帯刀している。刺激すると自警団が出張ってくるかもしれない。しかしローブの集団は意に介すことなく何でもないように反論する。


「うるさい冒険者風情が。そもそも魔族に対抗することは陛下御自身が望まれていることだ。陛下のご息女が魔物に殺されたときから陛下は、これ以上犠牲者が出ないためにもと我々の研究費用を増やしてくれたのだ。陛下の意向に沿って研究をしてきたおかげで人類はさらなる力を手に入れた!その研究成果を今こそ見せる時なのだ!」


後半はまくしたてるような声だったが、群衆のボルテージも最高潮のようだ。そこかしこから陛下万歳という声があがる。でも僕の心は周りとは違って極端に冷めていた。両の眼でしっかりとローブの集団を見据える。


「先の大厄災で亡くなられた方にも敬意を払います。貴方たちの死を無駄にはしません。どうか我々の行く末を見守っていてください」


そう言って彼らが集団墓地に向かって振り返る。その時見えてしまった。否、見逃さないように刮目していたので見えたのは当たり前だろう。


「最高神ガダーディス様の加護がありますように」


そう祈った彼らのローブの背中には、あのイスファ=リアに刻まれていた魔法強化の紋様とそっくりのマークがあった。その意味を知った時体中から殺意が湧いて出た。険しい目を彼らに向ける。横でおじいちゃんが止める事無く見守ってくれていた。

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