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「うわぁー、ここが王都かぁ」
「危ないから私から離れるなよ」
初めての王都は草原とは違って、人の熱気が広がっていた。ここが王都。人の欲望が渦巻く場所。道の両端では露店が並び、まっすぐ走る道を目で追うとその先には立派な城が建っている。
「さてと、まずは物の価値を覚えようか。私が買い物をするから見ていなさい」
「うん」
実際に物の価値を覚えるには目で見るのが一番だ。本を読むだけじゃあこういう知識はつかない。視界の隅に大型の生き物が車を引いているのを見かける。
「あ、おじいちゃん。あれってもしかしてバステル?」
「そうだよ。実物は初めてだろう?」
「うわぁー、おっきいねぇ。バステル焼き美味しいから感謝しないとね」
そういえばバステル以外にも普通の馬が車を引いてるのも見たし、気に留めてなかったけど井戸とかもあるんだよね。地球で見たり聞いたりしたことがこのガダードの世界にもあるってどういう事なんだろ。またおじいちゃんに聞かないと。
そんなことを思っていると一件の宿屋兼食堂に到着した。一階は食堂になっており、二階が宿屋のその建物には「パテンの住処」という看板が掲げられていた。
「おじいちゃん、ここは?」
「私の知り合いがやっている店だ。入るぞ」
そう言って中に入る。中は美味しそうな食べ物のにおいが充満していて、食欲をそそられる。
「パテン、久しぶりだな」
「なんだカカじゃないか。随分と久しぶりじゃねぇか!」
ガハハッ、と笑う大男の名前に聞き覚えがある。パテンと言えば、おじいちゃんの家で読んだ料理大全の本の作者だったはず。この人のレシピ通りにおじいちゃんが作ったバステル焼きには随分助けられた気がする。こんな人とも知り合いだなんておじいちゃんは凄いなぁ。
「お?そっちの坊主は誰だ?」
「初めまして。僕はリューと言います。よろしくお願いします。」
「リューか、俺はパテンって言うんだ。よろしくな!」
「あ、はい。さっき聞いたのでわかります」
「あれ?俺名乗ったっか?それはすまんなぁ、ガッハッハ」
「いえ、大丈夫です。パテンさんにはお世話になったので」
「坊主にそんなお礼を言われる覚えがないんだが」
「あの、パテンさんって料理大全を書かれた方ですよね?その、バステル焼きが美味しくって、何度も助けられたというか」
そこでパテンさんが言葉に詰まる。あれ、この流れは不味いと僕が察知する前におじいちゃんが割って入ってきた。
「すまんなパテン。リューに悪気はないんだ。許してやってくれ」
「・・・別に坊主を怒る気なんてねーよ。人間いつかは死ぬ。それだけだ。ただあいつが残したこの看板は背負ってやらないといけないから、まだまだ俺はくたばらねぇがな!」
「そうか。あとで花を買ってきて供えておく」
「おう、そうしたらあいつも喜ぶだろう」
・・・僕って場の空気を悪くすること多くない?しょんぼりするけど、幸いにもパテンさんもおじいちゃんも気にしてないようだった。ほっと一息つくと同時に、綺麗な花を買うことを忘れないように心にメモする。




