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fallen  作者: 流転
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この世界は理不尽で溢れている。それは神がばら撒いたものもあれば、人間がばら撒いたものもある。僕はそのことを胸に刻みながらいつもの日を送る。いや、いつもと少し違うかもしれない。


「リュー、禁書なんて読んでどうするんだ?」

「僕に出来ることを探すんだ」


禁書。それは魔法と呼ぶには必要な魔力が多すぎて、かつ底なしの魅力を持つもの。神にのみ許されたような魔法、いや神の奇跡が載っている本だ。死者さえ蘇らせる魔法もあれば、僕をこの世界に呼んだ呼び寄せの魔法もある。またその逆、僕を地球にかえせるであろう魔法、転移の魔法まである。神の奇跡と言われているが、最後につくのは魔法という言葉。人間の欲は神の奇跡さえ欲した。しかしあまりの必要な魔力により、そう易々と使用はできない。


「大厄災を止めるには神を殺せばいいのかな?でも、これらの魔法を使ってもどうにもならなそうだなぁ。それならやっぱり人間の意識を変えるしかないかな」


思考を切り替える。そもそも生まれ持っての魔力量は決められており、自然回復はすれど上限が増えることはない。人間が神の奇跡を使ったところで大厄災を完全に止めることは出来ないし、神の奇跡を使おうものなら魔力持ちの血が相当必要になる。人間は生物実験にまで手を染め力を蓄えようとしているが、大厄災でうまれる魔物の群れを止めるなら、それがいくら軽度でも未だ無傷とはいかないのが現状だ。


それならせめて魔族が生きやすい世の中にしたいと思うけど、人間の大半は魔族のことを大厄災を引き起こす厄介者として考えている。中には魔王を途絶えさせるために魔族を皆殺しにするべきだという過激派もいるくらいだ。


「ダメだー、何も考えつかないや」


読んでた禁書をほっぽりだす。そもそも魔法は神の奇跡の下位互換。人間が神の奇跡を自分たちも享受するために生み出されたものだ。こんなもの読んでも現状は変わらない。むしろ魔法で世界が変わってるならとっくの昔にかわってる。


「ふむ、リューよ。転移の魔法に興味はないのか?」


開かれた禁書を見ておじいちゃんが僕に質問を投げかける。少し前の僕ならいざ知らず、もう僕はこの世界で目標が出来た。それに数多の魔力持ちを媒介としてまで帰りたいとは思わない。


「うん、興味ないや」

「そうか・・・」


おじいちゃんは何も言わない。いつもの優しい目つき。そんなおじいちゃんのことが僕は大好きだ。勝っちゃんも好きだけど、勝っちゃんとはまた違った優しさがおじいちゃんにはある。


「今日の夕ご飯は何がいい?最近大厄災の前兆で魔物が増えたから、魔物の肉も買ってきたんだが」

「バステル焼き!」

「・・・リューは本当にバステル焼きが好きなんだね」

「そりゃあもう、美味しいバステル焼きを作るおじいちゃんが悪いんだよ?」

「ははっ、言うようになったな」


今日も今日とて他愛ない会話。こちらの世界の言葉は流暢に喋れるようになったし、魔法も段々使えるようになってきた。それに何より、目標が出来て、他の生き物を思いやれるようになった。でも、一つ気がかりがあった。


「おじいちゃん、最近疲れてる?」

「どうしてそう思うんだい?」

「普段より畑仕事や水汲み、食器洗いがきつそうだよ。食器洗いは厳しいけど、水汲みなら僕が代わりにやるよ」

「いや私の可愛いリューにやらせるわけには・・・」 

「おじいちゃん!僕もいつまでもおじいちゃんに甘えているわけにはいかないんだ。それに僕、おじいちゃんのしんどそうな顔見たくないし」

「ふむ、それを言われると弱いなぁ」


おじいちゃんの顔が破顔する。僕は生まれてこの方、地球では勝っちゃんに、ガダードではおじいちゃんに依存してきた。それでも、ラティムさんと出会って、死が身近なものと知った時、何時までも他人に依存したままじゃいけないことが分かった。考えたくはないけどおじいちゃんも結構年だし・・・。だからこれは僕が一人で生きていくための第一歩。


「それじゃあ水汲みを頼もうかな。その代わり私からもいいかな?」

「なに?」

「近々王都に買い物に行くんだが、一緒に行こう。大事な経験さ」

「うん、行く!」


直ぐに返事を返す。まだまだ僕はおじいちゃん離れが出来ないかもしれない。

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