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「それにしても八代が俺の研究室に入りたいというとはな。驚いたよ。1年の時は俺の授業を退屈そうに聞いていたにな」
「あはは、その節はどうも・・・」
「で、なんで犯罪心理学研究室に入ろうと思ったんだ?神木の失踪が原因か?」
「・・・」
そう言われて何も言えなくなる。俺が今心を許しているのは俺の両親だけだ。それ以外に何を信じればいいのか分からなくなってしまって、気付けば口を噤んでしまっていた。
「・・・図星の様だな。はぁ、友達思いなのもいいがな、お前の人生をすべて親友の捜索に使おうとしていないか?」
「当然ですよ、リューは俺の大親友なんですから」
「お前の親御さんから学校に電話が来てるんだよ。ちょっとは息子を思う親の気持ちってのも理解してやりな」
「でも、母さんは俺の意見を尊重してくれてっ・・・!」
「なぁ、八代、心理学ってのは習っとくと便利なもんだぞ?」
「え?」
「人間の行動には意味がある。お前の親御さんがお前の意見を尊重してくれたのも、なのに学校に電話まで寄越してお前を気遣っているのも、全てに意味があるんだよ」
先生が諭すように言う。それは本当に諭しているのかもしれない。暴走していた俺をやんわりと止めてくれた気がしたのだ。
「先生、すいません。ちょっと電話してきていいですか?」
「いいぞ」
先生に断りを入れて電話をかける。
「もしもし、母さん?元気にしてた?」
「勝。いきなり電話をかけてきて今度は何?」
今度は何、か。そうだな。思えばリューが失踪してから俺が母さんに電話をかけたのは、全てリュー絡みだった。母さんの方から俺を気遣って電話をかけてきたことはあったが、それも二年生になる前のことだったか。ずいぶん昔のことのように思える。
「いや、母さんが元気にしてるか気になってさ」
「え?」
「母さん最近調子どう?インフルエンザとかにかかってない?」
「大丈夫だけど・・・」
「そっか、なら良かった」
「そういうアンタこそ学校生活楽しい?食生活乱れたりしてない?」
「大丈夫、大丈夫だって。母さんは昔っから心配性だなぁ」
「本当に?なんか隠したりしてないでしょうね?」
「本当本当。そうだ、俺研究室決まったよ。先生も優しくてサイッコーだね!」
「へぇ、どんな研究室なの?」
「聞いて驚くなよ!なんと・・・」
「まぁ」
・・・
・・
・
母さんとの電話はとても長かった。俺の大学生活をすべて話したんだから長くなるのは当然だが、母さんは楽しそうな声で俺の話に相槌を挟んでくれた。暫くして母さんとの電話は終わり、先生に長電話になったことを謝ったが、気にしてないと言われた。曰く、お前の笑顔を久しぶりに見れたから許してやる、とのことだった。




