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fallen  作者: 流転
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「ちょっと待ってよ。そんな、魔王が死ぬ以外で大厄災を止める方法はないの?」

「ないな。それにリューよ、そんなに動揺しなくても本で読んで分かっていただろう?」

「で、でも。あの本は古かったじゃん。研究したら神の呪いを無効化できるとかなかったの?」

「そういう道があったら世界はもっと平和だったろうな。いや、神の呪いを魔族が引き受けてくれているだけ、人間は平和でもあるか・・・。少なくとも大厄災が起きる前にその代の魔王が死ぬことで、また次世代の魔王が任命される。その時に力も呪いもリセットするしか解決法はないんだ。まぁ、中には死にたくなくて人間に抗った魔王も存在したが」

「そんな・・・」


後半のおじいちゃんの言葉は聞きたくなかった。認めたくなかったのだ、おじいちゃんは僕の勇者なのだから。どんな理不尽な出来事でも最後には解決してくれると願っていたのだ。


「リュー」


最初はおじいちゃんが魔物という括りでイスファ=リアを見ていたことに、ある種の怒りがうまれていた。イスファ=リアの過去を知っているおじいちゃんがイスファ=リアだけ区別しているなんて信じたくなかった。勇者は皆平等に助けてくれると思っていたんだ。


「こら、リュー」


でも、僕の本音を聞いて、イスファ=リアを受け入れてくれた。あぁ、やっぱりおじいちゃんは凄いんだってなぜか僕が誇らしくなった。それでも神の理不尽の前にはなすすべもないという現実から目を背けていたかった。


「リューよ、大丈夫か?」

「あ、え、えっと・・・。ちょっと考え込んでたんだ」

「それは魔王の不遇さについてか?」

「・・・」

「それとも人間の不甲斐なさについてか?」

「そ、それは・・・」

「リューよ、聞きなさい。どれほど強い人間でも、出来ないこともある。あの英雄ルークも、彼の手の届かない範囲の人間を救うことは出来なかった。魔王は神の呪いを受けている。人間には手出しできないんだ」

「でも、やってみないと分からない」

「やったよ、そして今も研究は続いている。国は魔王を救うよりも大厄災に対抗する方に力を注いでいるが、皆現状を変えようと努力しているんだ。」

「・・・」

「リュー、諦めるな、とは言わないし、その何とかしないとという気持ちも大事なものだ。でも、時には別の気持ちも必要になるんだよ。それは相手を思いやる気持ちだ。リューはさっき魔王の不遇さを憂うよりも先に何を考えていた?」

「う、それは・・・」

「分かっているさ、リューのことは全てね。イスファ=リアの時も今回の魔王の時も、リューは相手に同情はするが、その次には既に私のことを考えているだろう。同情して、それで終わりではない。彼らは生きているのだから、誰かが寄り添って、支えてあげなければ脆く壊れてしまうんだよ」

「・・・」

「そういう意味ではリューが魔物にも名前を付けようと言ってくれたのはすごく嬉しかったんだ。リューよ、あの時芽生えた気持ちをどうか大事にしなさい。私は今代の魔王と知り合いではあるが、私もそう長くはない。次の代の魔王とはリューが知り合いになってやりなさい」

「僕が?」

「あぁ、リューにしか出来ないことだよ。たいていの人間はそもそも魔族や魔物に同情すらしないからね」


僕に、出来ること・・・。僕がこの世界で出来ること・・・。

英雄の軌跡9

「悲鳴を上げる帝国兵士、その後ろには大きなドラゴンがいた。そのドラゴンが逃げ惑う帝国兵士を食っている。戦争どころではなく、敵味方関係なくその脅威に立ち向かっていくが返り討ちに会い、やがてルーク以外の人間はすっかり怯え切っていた。泣き叫ぶもの、懺悔を始めるもの、ドラゴンから距離をとろうとするもの、そして・・・指輪やペンダントを握りしめるもの。それだけで十分だった。戦争という悪意の満ちた場所で王国を守ったところで、少しばかり気持ちが晴れるだけだ。負けた帝国や家族の帰りを待っている帝国民たちはどうなるかくらいルークも理解していた。しかし理解した所で戦場では相手を殺すしか道はない。戦争を甘く見ていたのだ。人類共通の敵などとう考えに縋りついてしまうほどには。しかし今、立ちはだかる強大な敵、畏怖する人々、そしてルークの手に握られた聖剣。都合がよすぎる気がするのは些細なことだ。そんなことは二の次だ。剣を握りしめる手に力がこもる。次の瞬間、怒号とともにルークはドラゴンに切りかかった」

                              ルークの伝記

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