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おじいちゃんがポツポツと過去を語る。
「実は私と妻の間には子供が出来なかった。諦めた時に急に目の前に子供が現れたんだ。まだ子供だったその子はリューと同じ黒髪、黒目だった。言葉は通じないし、ガダードの常識も知らないようだったが、私たちは我が子の様に育てたんだ」
そこで一息つく。懐かしい思い出を思い出すかのようにゆっくりと、しかし鮮明に。
「その子はどうなったの?」
「この世界を自分の目で見たいと言って旅立ったよ」
帰ってきたのは予想外の答えだった。てっきりあの墓はその子のものだと思っていただけに暫く固まっていると、おじいちゃんがその沈黙を破る。
「どうやらその反応だと死んでいたと思っていたようだな。あの墓は妻のものだ。リクはまだこの世界のどこかで旅をしているかもしれないな」
どうやら先駆者の名前はリクというようだ。顔も見たことすらないが、なぜか親近感がわく。
「でもおじいちゃん、そのリクさんはすぐに旅立ったってこと?服が小さかったけど」
「あぁ、そうだよ。子供というのは好奇心が大きいんだよ。当時の私には止めることが出来なかったよ」
そこで僕のことを見て、目を細めて笑う。
「リューはリューが生きたいように生きればいいよ。リクはこの世界のことを肌で感じたい、目で見たいと言って出ていった。でもリュー、ここで生活するだけでも新たな発見があるだろう?」
言われて周りを見渡す。地球にはいなかった生き物たちが視界に入る。ピィー、ティビ、そしてハラウル。最初は全然知らなかった。でもおじいちゃんの話を聞くうちに少しづつ分かってきたこと。ピィーは子供を産むためにこのラスティ王国に帰ってくる。ティビは天敵から逃れるためにこの草原で生活をしている。ハラウルは強くなるために魔力持ちを食らう。全ての生き物が、自分たちにできることを全力でやって生きている。
確かにこれらの生き物以外にも、外に出たら本で知っただけの生き物が目で見れるかもしれない。見たこともない魔法に出会えるかもしれない。でも、僕がまずやらなければならないこと。この世界への理解を深める前にしないといけないこと。
「おじいちゃん、言いたくなかっただろうけど言わせちゃってごめんね?でももう、僕の意思は決まってるよ」
おじいちゃんは僕がこの話を聞いて心が揺らがないかどうか心配していたのだろう。でも大丈夫だよ、おじいちゃん。まずは"僕の周りの"世界への理解を深めないといけないよね。
肉体強化の魔法
「この肉体強化の魔法を唱えると、一時的に肉体が強化される。しかしいくら肉体が強化されると言っても、元が貧弱では強化率も低くなる。普段から鍛えていることで強化系の魔法は最大限の効果を発揮できるので、怠けている読者諸君はきっぱりと諦めるよーに」
カカの魔法辞典改訂版




