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fallen  作者: 流転
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「ダメだな、事件が起きたのが古すぎる。今となっては決定的な証拠なんて出てこない。八方塞がりだ」

「源さん、諦めるんですか?まだ何か証拠が出てくるかもしれないじゃないですか」

「・・・八代、そう簡単に証拠が出てくればそもそも迷宮入りなんてしないだろ。だがまぁここで逃げ出すのはちと時期尚早ではあるな。仕方ねぇ、警察に当時の資料を見せてくれるように頼むか」

「え?源さん、警察への伝手があるんですか?」

「お前もよく知っている人物だよ」


そう言って源さんは電話をかける。どうやらその人物を呼び出したようだ。しばらくして待ち合わせ場所に行くと、そこには五十嵐刑事が僕らを待っていた。


「お久しぶりです幸田さん、そして八代君。あの事件以来ですね。今日は橘陸失踪事件の情報が欲しいとのことですが」

「警察ならいい情報持ってるでしょう。こちらも商売でやってるわけじゃなくて、依頼人の無念を晴らすために捜査をしてるんです。貴方ならわかるはずだ。十数年前に警察が解決できなかった未解決事件の真相を解き明かして、依頼人を納得させてやりたいんです」

「無論初めから情報を渡すつもりでしたよ。私もやりきれないのでね。あれは私がまだ新人の間に出会った事件でした。当時全く事件の全貌が見えないことが、今でも心残りです。過去の未解決の失踪事件も調べてみましたが、一応共通点を見つけることは出来ました。犯人像は皆目見当もつきませんが」

「共通点?」

「はい、被害者はどれも成人していない子供と言って差し支えのない人間で、事件が起きたのは夕方から夜にかけて。また、事件は全て4月に起きていました」

「成程・・・。情報ありがとうございます」

「もういいですか?せっかくの休みなので今日は息子と一緒に家で遊ぼうかなと思っているんです。息子の高校受験の勉強の息抜きで。私の家は無神論者で願掛けをする時間があれば少しでも勉強をするべきという家風ですから。と言っても最近息子は反抗期ですが」

「ほう、息子さんですか。それは羨ましい。態々忙しいのに情報をいただきありがとうございました」

「いえいえ、事件の解決を望んでいます」


そういって五十嵐刑事は立ち去る。残された俺と源さんは得た情報を整理する。


「段々共通点が見えてきたな。だが犯人の動機と犯人像がからっきしだ。やっぱりこの世界には神隠しでもあるのか?」

「源さんまでそんな非科学的なことを言うんですか」

「いや、だがなぁ。共通点が多い事件が、全て未解決というのはあまりにもだろう。普通こんなに警察が苦労することなんてない。特に似た手口が使われたのなら、警察だって過去の資料をもとに犯人を特定していくはずだ。この事件は何かおかしいぞ」

「確かにそうですね・・・そういえば最近暖かくなりましたね」

「そりゃもう4月だからな」


そんなとりとめのない話をして時間は過ぎていく。時を同じくして、新たな失踪事件の被害者が出るとも知らずに。

_____

「ただいま」

「あなた、お帰りなさい。休日なのにいきなり出て行ってどうしたの?また大樹が拗ねるわよ。たたでさえ最近大樹は反抗期だというのに」

「すまない、私の方から大樹に謝っておくよ。帰ってくる前に大樹の好きなお菓子も買ってきたから、これで機嫌を取り戻してくれるといいのだが」


そう妻に言い、私は二階に行く。息子の部屋の前まで行き、軽くノックするが反応はない。だが部屋の中に息子がいるのは確かなので、扉越しに息子に話しかける。


「大樹、悪いな折角の休みなのに大樹の好きなボードゲームを一緒に出来なくて。夕ご飯を食べたら一緒にボードゲームをやろう。大樹の好きなお菓子も買ってきたぞ」

「・・・」

「いつも勉強漬けだと大変だろう。またご飯が出来たら呼びに行くから」

「・・・わかった」


私はほっと息を吐く。息子にはいつも勉強ばかりさせて申し訳ないと思っていた。家族だというのに私は父親らしいことを実の息子にしてやれなかったのだ。私が過去に解決できなかった失踪事件は、その後残された人たちの精神の崩壊が著しい。家族というのは大切なのに、その大切さを失ってから気付くのだ。だが、事件を解決できずに、被害者の両親が泣き叫ぶのを見るのが私には一番堪える。せめて一緒に遊べる時には遊んでやらないといけないと思うのは、そういうのを見てきたせいだろう。


(そういえば神木龍之介君の両親は不思議だったな。二人とも生きているというのに、実の息子の失踪を伝えても無感情だった。あれが研究者という生き物なのだろうか)


そんなことを考えながら、夕ご飯が出来たので息子を呼ぶことにする。


「大樹、夕ご飯できたぞ」


だがノックしても返事がない。普段なら夕ご飯が出来たらすぐに部屋から出てくるというのに。それに今日に限っては食後にお菓子とボードゲームが待っているのだから、すぐにでも出てくるはずなのだ。勉強のキリが悪いのかと思い、一応扉を開けて確認してみると、思わず素っ頓狂な声を上げる。


「・・・え?」


息子の部屋はもぬけの殻だったのだ。つい先ほどまで確かにいた息子は、いきなり私の前から姿を消したのだ。

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