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あの後パグさんは僕を置いて先に王都に帰った。僕は少し墓参りもかねて周囲を歩く。こうしてここを歩いていると、様々なことが思い起こされる。ティビとピィー、そしてイスファ=リア。おじいちゃんが使った巨石の魔法の名残もある。
「懐かしいなぁ、思えばイスファ=リアに刻まれた魔法強化の紋様と隠密の紋様が王国への不信感に変貌して、同時にイスファ=リアへの同情に繋がったんだよね・・・。ん?何か見落としている気が」
その時僕の中に奇妙な違和感が芽生える。今の僕の言葉の中に何か大事な情報が詰まっているような気がしたのだ。そしてソレに気付いたときに、今まで何気なく過ごしてきた中で得てきた情報のピースに色が付き、急速に一つの理論を形作る。
「まさか、この国は・・・」
その時王都の方で煙が上がる。それを見て僕は急いで王都に向かう。もし僕が考えた通りなら、まだ大厄災は終わっていないはずなのだ。僕は最悪のシナリオを食い止めるために急いで王都に向かう。王都は悲惨な状況であった。人々は逃げ惑う者と王国には向かう者が入り乱れ、そこらじゅうで王国兵と市民の衝突が起きている。王国兵は肉体強化の紋様と魔法強化の紋様で武装した市民など赤子の手をひねるがごとく倒していくが、市民側も何故か戦いなれた人や指揮をとっている人がいるようで、互角に渡り合っている。先の戦争で王国にうまく使われた冒険者たちの加勢もあり、戦況は泥沼と化している。僕は急いでゴザ協会に向かうと、シスターとシスティアに加え、パテンさんや知り合った四人もいる。
「よかった、パテンさんは無事だったんですね」
「あぁ俺は無事だが、なんでまたこんなことに。戦争と大厄災が終わったと思ったら今度は革命か。それもやたら手馴れてやがる。どっかの国が裏で糸を引いてやがるのか?」
「・・・パテンさん、ひとまず無事でよかったです。でもこの国を取り巻く陰謀はまだ終わっていません。僕は今回の革命の糸を引いた人物も分かりました。今からその人物に会いに行きます」
「・・・は?ちょっと待てリュー!元凶に会いに行くとか正気か!?やめておけ、危険な目に自ら進んで会いに行くなんて・・・。次リューが死んだら俺は・・・」
「パテンさん、すいません。でも、これは僕がやらないといけないんです」
僕の圧に押されてパテンさんは押し黙る。僕の事をよく知っている四人組は何も言わずに見守ってくれている。システィアは難しい話はよく分からないようだが、シスターは全てを理解して、それでも僕の背中を押してくれるようだ。
「止めはしません、それが貴方の選んだ道ならば。ですがどうか無理はなさらぬように。あなたの進む道にイスファ=リアの加護があらんことを」
「ちっ、死ぬんじゃねぇぞ。それだけは絶対に守れ」
「ありがとうございます。約束は守ります」
そういい、僕はゴザ協会を後にする。数多の心配そうな目に見送られながら、それでも前に進む。隠密の魔法を使って目指すべき場所は一つ、この王都にそびえたつ王城だ。道中王国兵と市民が殺しあっているが、僕はそのすべてを無視する。心は痛むが、元凶に気付いているのはおそらく僕だけだ。ならば僕がこの負の連鎖を止めなければならない。隠密の魔法で隠れながら場内を歩き回り、目的のものを探す。どれほど歩いたか、ついに目的のものを見つける。
「やっと見つけた。今から決着をつけるんだ・・・」
右手に聖剣を握り、手首に緑のブレスレットをつける。これが僕の覚悟だ、この二つの遺品は大事なものだから。それらの命は元凶が作り上げたシナリオのための犠牲となったのだ。復讐心ではない、怒りの炎は抑えて、ただ王都の未来を憂うためだけにここに立っているのだ。それらの遺品は僕を後押ししてくれたのに変わりはないが、目的はもっと別の、それでいて大きなもののために。感情に飲み込まれることなく冷静にこの国の未来を救うのだ。それが二人の英雄に捧げる、僕の生きざまだ。
「どうかウルルカンクから僕の事を見ていてくれ・・・」
そして僕は隠密の魔法を解除し、覚悟を決めて手を前に出す。左手はないが、右手でしっかりと大きな扉を開くのだ。扉を開けたその先に大きな玉座の間が広がっており、革命が起きて家臣たちが逃げたその孤独な玉座の間の奥に一人の人物が玉座に座っている。そうだ、この国の国王こそが、この王都を取り巻く陰謀の元凶なのである。




