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fallen  作者: 流転
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「それでは橘さん、私たちは貴方からの依頼を受けます。まずは貴方と貴方の息子である陸さんが住んでいた当時の家は残っていますか?」

「はい、私は今もそこでリクを待ち続けています・・・」

「分かりました。よし八代。行くぞ」


そして俺達は依頼人の家に向かう。家は外から見ると少し年季の入った普通の家であったが、中に入るとそこら中がボロボロであり、壁や柱にはひっかき傷や切り傷が至る所につけられている。だが、一つだけ綺麗な扉を見つける。扉にはリクと言う名札がかかっており、少し埃をかぶっている。


「橘さん、この部屋は?」

「あぁ、そこはリクの部屋です。警察がだいぶ調べましたけど、それ以外は当時の状況をそのまま残しています」

「中を調べても?」

「構いません」


依頼人の了承を得て長いこと開けられていなかったであろう扉を開く。部屋の中は埃っぽかったが、それ以上に目を引いたのは子供部屋であることだろう。ノートは色あせ、壁の塗装は少し剥がれており、机は異様なまでに小さい。まるでタイムスリップしたようで呆気にとられるが、すぐに本来の目的を思い出す。


「橘さん、事件が起きた日は随分古いようですが」

「はい、リクは当時小学生でした・・・」

「小学生・・・。八代、お前の友達が消えた時は大学生だと言っていたな?」

「はい」

「小学生に大学生・・・。犯行の方法はほとんど同じで、どちらも誘拐。そして学校から家に帰るまでの間に失踪しているという事は事件発生の時間は夕方か夜か。とにかく遅い時間であることには変わりはないな。ターゲットは若い人間で、犯行時刻は周りが暗いとき。今わかるのはそれくらいか?」

「そうですね」


そして俺と源さんは捜索を開始する。だがやはり警察がとけなかった事件と言う事もあり、暫く探してもめぼしいものはあまり出てこない。先程源さんが言ったように橘さんの息子の陸さんは若くて、日が暮れてから失踪したという事以上はどうしてもわからない。俺と源さんは煮詰まってきて、どうしても事件を詰める事が出来ずにいる。少し気分転換という事で立ち上がって背伸びをしていると、ふと壁にかけられたカレンダーを見つける。


「すいません橘さん。このカレンダーは当時のままですか?」

「はい、リクが毎日カレンダーをめくっていましたが、リクが失踪してからは一切手を付けていません。今カレンダーにある日は事件が起きた日ですね」

「なるほど・・・」


壁にかかっている日めくりカレンダーは4月14日を示している。待てよ、確かリューが失踪した日も4月だったはずだ。何か関係性があるのか?今のところ被害者がリューと橘さんの息子だけなので共通点を見つけるというよりはこじつけに近い段階ではあるが、少しずつ何かが見えてきているような気がする。


「源さん、被害者が二人だけなので共通点があまり見えないです。これ以上ここにいても得られる情報はもうないかと」

「俺も同感だ。もしもう一つ事件が起きればミッシングリンクも見つけられるんだろうが、被害者が増えることを望む探偵なんて、そんなの探偵失格だしな。残念ながら犯人に至る劇的な証拠があるわけでも無ければ、今のところ犯人像さえ浮かび上がらない。だが諦めるのはなしだ、八代。この事件絶対に解くぞ、依頼人のためにも、そしてお前の友人のためにもな」

「そうですね」


そして依頼人に別れを告げ、依頼人の家から出ていく。もうこれ以上あの部屋で得られる情報はないという判断だ。だが、あの家から出ても俺の頭の中からは未だに失踪事件の事が消えない。事件は暗礁に乗り上げている、だがそれは依頼人の依頼を受ける前から分かり切っていたことだ。警察が匙を投げた事件だ、我武者羅に食らいつく覚悟が無ければ事件解決など夢のまた夢だという事は心のどこかでは理解している。


「リューの事を忘れたわけじゃない。これはリューのためでもあるが、依頼人の無念を晴らすためでもある。固執するな、ただ目の前の依頼人の心の傷を取り除くことだけを考えろ。それが源さんから学んだ探偵の掟のはずだ」


俺は冷静に考える。リューの事を考えすぎると深みにはまるかもしれない。俺は探偵としてこの事件に挑むのだ。


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