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俺とリグウェルは地底都市を目指しながら様々な村に寄って、その都度革命に協力することを求めた。ほとんどの村は帝国兵からの弾圧と領主からの異常なまでの搾取に参っており、また残りの村も王国との戦争に負けたことから帝国への不信感を抱き始めていた。それらの条件が重なりあい、砂漠に差し掛かるころには懐柔した村の数は二桁にのぼっていた。俺はとりあえず村に革命の準備を進めるように指示し、今は革命成功の切り札となる最大戦力を求めて砂漠を歩いているところだ。
「それにしても暑いですね」
「そりゃあここは砂漠だからな。俺様が魔法で水を出せるからまだマシだが。やはり魔法を使えないというのは不便だし、そのせいで帝国は帝王の一強となったんだよ。もっと国に仕える以外の魔法使いの生き方を提示しないと、帝国とは名ばかりの張りぼてになるし、事実王国に負けたんだ」
「帝都でふんぞり返っているやつらに聞かせたいですね」
「まあそれは全て終わってからだ。言っておくが俺は方法を提示するだけだ。最終的な革命の行方は帝国民が握っているんだからな。オメェらが心の底から今の帝国をぶっ潰したいと願えば、どうしたって帝国は崩壊する。分かってんだろうな?」
「当然です。もう皆心のどこかで答えは出ているんですから。リクさんには感謝はしていますが、頼りきるつもりは微塵もありませんから」
「それでいい」
そんな会話を続けていると、何処からか地響きが響き渡る。それと共に獣の唸り声。真実の魔法を使い周りを見渡すと、お目当てのものが向こうからやってくるのを理解する。
「来たぞリグウェル」
「う、緊張しますね・・・」
リグウェルのその言葉を最後に、俺たちを照り付ける太陽が遮られる。顔をあげるとそこにはかつてクラーク砦で見た巨躯。所々傷が見えるのはあの日俺達がつけた傷だろう。真実の魔法を使い、目の前にいるダハウィの魔法器官に溜められている魔力の色が、戦場で出会ったダハウィのそれと同じであることを確信する。さて、正念場はここからだ。魔物と会話するというのは突拍子のない事だし、ましてや俺とリグウェルは目の前のダハウィを傷つけた側だ。もとより一筋縄でいかない事は百も承知、その上でこれしかないと判断したのだ。俺は帝都を指さしながら話し始める。
「ダハウィ、覚えているか。あの日クラーク砦でお前と戦った内の一人だ。もしかしたら精神干渉の魔法をかけられて記憶があいまいになっているかもしれないし、そもそもお前は人間の言葉なんてわからないだろう。だが魔物なら匂いで俺たちの事は覚えているはずだ。その一縷の望みにかけて、お前に最大限の敬意を払うから、どうか帝国の洗濯を手伝って欲しい」
「私からもお願いします」
そう言い、俺とリグウェルはダハウィに膝をつく。これは予め決めていたことだが、ダハウィは誇り高き砂漠の王と呼ばれている。あの日、俺たちはまともに戦えばダハウィに勝ち目はなかった。何故ダハウィと互角に戦えたかと言うと、ダハウィが精神干渉の魔法をかけられて操られており、攻撃がワンパターンになっていたから。世界七不思議にダハウィの全力の一撃は世界を揺らすという言い伝えがある。もしその通りならリューがダハウィの洗脳を解いた時点で、もしダハウィが望めば俺達を用意に全滅させる事も可能であったはずだ。だがダハウィはそのまま砂漠に帰っていった。それはつまり、敬意には敬意で応えるという事ではないだろうか。
(頼む、砂漠の王よ)
俺の心の声に応えるようにダハウィは吠える。そしてしゃがみ込む。思わず俺とリグウェルは顔を合わせるが、腹を決めてダハウィの背中に乗ると、ダハウィは真っ直ぐに帝都に向かって歩き始める。俺は息を長く吐き出すと、横でリグウェルも小声で歓声の声をあげている。
「やりましたねリクさん」
「正直賭けではあったがな、成功してよかった。ダハウィは帝国の戦争のために利用されたんだからな、俺の言ってる言葉の意味は分からなくても、元から利用しようと接してきた奴と誠実に接してきた奴だと、後者を信用するに決まっている」
「ダハウィの全力の攻撃は世界を揺らす、ですか。これで帝国の住民の心まで入れ替わると、いやそれは叶わなくても帝国の中に蔓延する不穏な空気が少しでも晴れれば・・・」
「革命が成功してもやるべきことは多いぞ。まずは帝国民の誤解を解いて、魔力持ちは呪われるなんて考えを捨てさせる必要がある。王国への賠償金もあるから、それも払わなければならない。革命が終わった後も頑張らなければならねぇぞ、分かってるのか?」
「・・・理解してます。それでも誰かがやらないといけないんです」
そう告げるリグウェルは、俺には眩しすぎる。リグウェルは俺とは正反対の生き物であり、誰かのために全力になれる奴だ。対して俺は傲慢の道を突き進むのだ。リグウェルは凄いやつだ、癪に障るからそれを口にはしないが。口にしてしまうと、リグウェルがリューやパグと一緒の世界に行ってしまう様な気がするから。だから俺は心の中でのみリグウェルの覚悟をほめたたえる。




