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fallen  作者: 流転
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人々の泣き叫ぶ声が聞こえる。僕以外にも大事な人を失った人が沢山いるのだろう。だが、僕と彼らとでは圧倒的に違う部分がある。彼らの大切な人は大厄災により死んだのだ、こうなる未来も分かっていれば覚悟もしていただろう。王都を襲ったガル達は全滅したが、彼らの怒りは消えないだろう。だがそれでも、彼らは幸運とも言える。大切な人の死因も分かっていれば、その怒りの矛先も分かっているのだから。対して僕はなぜ彼らが死んだのか、そして怒りを何処にぶつければいいのか、それすら分かっていない。分かってはいないが大厄災が終わった事だけは確かである。気付けば王国兵達がガルを一カ所に集めている。その作業のために僕は追い出されてしまう。行く当てもなくミーシャのところに向かうが、そこにはミーシャの姿は見当たらない。

代わりにおばちゃん達が泣いている。


「あぁ、お兄さん。さっき王国兵がやってきてミーシャを・・・」

「何てことだい、まだあの子は子供だったというのに。私たちより先に集団墓地に埋められるなんてね。やりきれないよ」

「すいません、僕が間に合わなかったせいです・・・」

「何言ってんだい!お兄さんは何も悪くないよ」

「そうさ、お兄さんも相当疲れているだろ?目元も真っ赤だし、今日はもう休んだ方がいいよ」


おばちゃん達にミーシャを殺したのがゴロツキどもという事を伝えようとするが、泣きじゃくるおばちゃん達を見て、とてもではないが伝えられる雰囲気ではないと悟る。パテンさんの宿に帰る途中で国王の演説を聞く。王都の住民たちは国王の演説を必死に聞いている。


「諸君、大厄災は終わった、我々の勝利という形で。勿論全くの無傷とも言えない。諸君らの中では大切な人を魔物に殺された人もいるだろう。だが、これは新しい道を踏み出すためだと分かって欲しい。魔族を全滅させれば大厄災は途絶えるが、それで傷つくのは王国兵だ。もし魔族との全面戦争になればラスティ王国のはもっと悲惨な状況になっていたであろうことは想像に難くない。今回は預言者の死により大厄災の詳細な日程が不明であったが、新しく遠い地から預言者を呼び寄せた。次の大厄災では万全の態勢を敷いて大厄災に抵抗することを約束する!」

「もうたくさんだわ!主人は魔物に殺されたのよ!大厄災に抵抗できるなんて嘘っぱちじゃない!もう素直に次の魔王を殺すべきだわ」

「・・・諸君の悲しみは理解しているし、辛さは痛いほどわかる。だが、王たるものは大変なのだ、それが魔族の王だとしてもな。我々が剣を向けるべき相手は魔物であり魔族ではないはずだ。人間とほとんど変わらない魔族をそうまでして迫害してきた歴史は、どんなものだ!それで大厄災が来なくて一安心か?この世界から魔物は消えることはないのに?我々は魔物と戦い続けなければならないのだ!」


国王の圧に住民たちは押し黙る。だが吠えていた住民は運がいい方だろう。目の前で大切な人が消えていく瞬間を見ていないのだから。もう少し早ければ間に合ったという後悔もなければ、なぜ自分の手で友を殺さなければならないのだという疑問もなく、ただ馬鹿みたいに魔物と魔族を恨みさえすれば事足りる人生を送るのだから。そんなことを考えてしまうほどには、僕の心は傷ついてる。そして僕はパテンさんの宿に帰ってくる。


「リュー、良く帰ってきた!・・・!何か、あったのか?」

「パテンさん、僕は誰も救えませんでした。大切な人を2人も失って、それでも今はのうのうと生きている!何で皆先にウルルカンクに旅立ってしまうんですか」

「・・・部屋でゆっくり休め。俺に言えるのはそれだけだ」


パテンさんは諭すように僕に部屋で休むことを勧める。その言葉だけが今の僕の疲れ果てた心臓を癒し、僕は言われるがままに部屋に戻る。部屋の扉を閉めた後、今まで我慢してきた感情が溢れかえる。泣いても泣き足りず、後悔しても後悔しきれない。ただただ僕は泣き続ける。

_____

部屋の中でリューが泣いている。リューに対して今の俺は何もできない。傷心している者の心を癒せる術を俺は持ち合わせておらず、必然的に時間のみがリューの心の傷を癒す。それが酷くやりきれなく、歯ぎしりをする。


「・・・一体リューが何をしたって言うんだ。もしこの世に世界七不思議の通りに最高神ガダーディスが実在するというのなら、俺は最高神ガダーディスを死んでも許さねぇぞ」


これ以上リューの周りから大切な人が失うのを見たくはない。だがそうはいっても俺の体ももう年だ。また咳をするが、血が少し混じっている。ゴザ協会が作ったヒエラ草から作られたポーションを飲むが、これはその場しのぎだ。


「うぐっ、リューを残してまだ死ぬわけには・・・。もうポーションがなくなったのか。ミーシャが次にポーションを売りに来るときにはり、リューの心の傷が癒えていると良いんだが」


俺はそんなことを願う。その願いが最早叶わぬものになっているとは露知らずに。

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